抄録
2, 3の筋力指標について筋力発揮に及ぼす数種の影響因子を検討するべく, 成人男子を被験者として握力, 腕力の時間曲線等を記録して, 以下の結果を得た。
1) 最大筋力の20%から80%に至る所要時間は, 5秒間隔で30回反復計測してもあまり変わらない。最大筋力の移動平均からの差の標準偏差と最大筋力の20%から80%に至る所要時間の標準偏差との間にはr=+0.64の相関関係が認められる。
2) (Pmax-P) -logt関係におけるtanθ及びtanψ値は, 反復計測による減少を認める被験者があり, 度数分布曲線において尖度に個人差が見られる。tanθ, tanψ値の変動範囲はそれぞれ0.1~0.2 (kg/msec) , 0.3~0.5 (kg) である。
3) 先行筋活動 (1/4, 1/2, 3/4 Pmax.の強度) 後の発揮筋力のtanψ, tanθともに先行筋活動なしの場合が最大で, その強度が増すに従って減少する。先行筋活動後少時休憩を置いた後のtanθ値及び拮抗筋における先行筋活動後のtanψ, tanθ値は対照に比し増大する傾向が認められる。
4) 反対側肢の同時筋力発揮の場合の最大筋力は大部分の例で対照に比して変化が認められない。
5) 反対側肢における後続発揮筋力の増大が完了した時点における先発筋力の値は, 対照発揮筋力における筋力発揮開始時点より同時間後の値に比して減少する傾向が認められる。その減少は先発筋力が非利腕である方が利腕よりも大であり, 後続筋力が屈腕力の方が伸腕力よりも, また両筋力発揮の時間間隔が任意の場合の方が規定 (0.5, 1.0, 2.0秒) された場合よりも大である。
6) 最大吸息時の筋力は最大呼息時のそれより大である。
7) 2秒に1回の踏み台昇降運動1分間負荷直後の筋力は安静状態の値に比して大となる傾向が認められる。