体力科学
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中高年者の長距離走前後の血圧及び心電図の変動について
小原 達朗小川 新吉浅野 勝己古田 善伯藤牧 利昭矢野 徳郎富原 正二
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1981 年 30 巻 3 号 p. 137-147

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抄録

40~87才の男子中高年者235人について10km, 25kmおよび42km走における走行前後の血圧, 心電図および体重の変動について測定し, さらに走行中あるいはゴール後卒倒した者の血圧について測定し, 長距離走が中高年者の循環機能に及ぼす影響について検討した。その結果を要約すると以下のとおりである。
1) 走行前後の血圧は, 収縮期血圧および拡張期血圧とも走行前値の高い者ほど, また, 走行距離が10km, 25kmおよび42kmと延長するほど高度の陰性相を示した。
2) 走行前後の脈圧も, 走行前値の高い者ほど陰性化する傾向がみられたが, 42km群を除いて距離による差は認められなかった。
3) 走行前後の心電図の比較では, 走行後PQ間隔は短縮傾向に, QTcは延長傾向にあり, 特に42km群において9例中4例に高度の延長が認められた。また, T波高は減高傾向にあり, 25km群で7例中3例に平低化が認められた。
4) 走行による卒倒者の血圧および脈圧の変動では陰性化が著明であり, 特に血圧の高い者においてきわめて著しい低下を示した。
5) 走行後の体重は, 走行前に対して10km群が1.24kg, 25km群が2.21kgおよび42km群が2.69kgの有意な低下を示し, 血圧陰性化の主因が発汗によるものと考えられた。
以上の結果, 中高年者の長距離走は距離が延長するほど, また, 血圧の高い者ほどその循環機能に大きな変動を来す点が明らかになった。

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