抄録
目標値としての0.4Hzの正弦波を視覚情報として与え, それを脚の伸展・屈曲運動で追跡するという実験から若年者 (22~29才) と中高年者 (32~64才) の運動調節状態を検討した。特にその運動調節システムに補償的要素として, 1, 2, 4, 8kgの錘の負荷を加えその要素が運動の調節状態にいかに作用するかを解析した。その結果, 以下のことが明らかになった,
1.目標波形に対する応答波形の振幅比では, 伸展時の場合, 22~29才の2kgと4kgで最適調節状態がみられた。32~64才では各負荷とも目標波形より小さい振幅がみられた。屈曲時の場合, 各被検者で各負荷とも目標波形より大きな振幅がみられた。
2.目標波形に対する応答波形の位相ずれでは, 伸展時, 屈曲時ともに22~29才で各負荷で約-5~-10degreeの位相おくれがみられた。
3.目標波形に対する応答波形の総合的な評価として, 制御成績からみると, 22~29才と32~36才では, 各負荷とも約5~15cm2, 45才以上では, その約2倍の偏差量がみられた。
4.特に55~64才の4人の被検者では, 鍾の増加に伴なって, 偏差量が次第に増加する傾向がみられた。
5.脚の運動調節システムでは, 左右の差はいずれの指標とも有意な差はみられなかった。