体力科学
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アーチャーの体力とエネルギー代謝 (第2報)
―使用弓の強度差による運動強度の変動―
辻 幸治積山 敬経片山 吉穂
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1984 年 33 巻 2 号 p. 85-97

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抄録

大学の男・女アーチェリー部員各5名につき体格, 体力の測定を行い, 併せて弓の負荷強度を変えて発射時及び回復期のエネルギー代謝を測定しつぎの結果を得た。
1.体格のうち身長, 体重及び胸囲を同年令の日本人と比較した結果, 女子の体重がやや多かった外は, 男女共に差は認められなかった。
2.心拍数では, 男女共に発射開始直後から急上昇し, 回復期では労作終了直後から急激に低下し, 2分以後でほぼ安静値に戻っていた。
3.エネルギー代謝の成績では, 男女共に第I, 第IIa実験の何れの場合も負荷強度が大きくなる程需要量が多くなっていたが, 第I実験の方がやや多い成績であった。これは矢取りのためのかけあし動作の代謝量が含まれるためと考えられる。
4.RMRでは第I, 第IIa実験において, 男女共に負荷強度が大きくなるに従って, 次第に増大していた。EaについてみてもRMRと同じ傾向が認められた。
5.第IIaから矢1本を発射するに要するエネルギー需要量の平均を算出すると, 男子では負荷強度の順に0.47, 0.59及び0.73kcal, 女子では0.27, 0.33及び0.40kcalとなっていて, これを弓の負荷強度との相関でみると男子でr=+0.70, 女子でr=+0.86となり, 男女共負荷強度が大きくなるに従ってほぼ直線的に増大していた。また, これを体重10kg当りに換算しても負荷強度と需要量との問の相関係数は男子でr=+0.68, 女子でr=+0.77となっていて高い正の相関が認められた。
6.矢1本当りの需要量と発射本数の積とから求めた総エネルギー消費量と実測値を比較したが, 男子ではほぼ一致し, 女子ではその差がやや大きくなった。
今回, 負荷強度を変えた場合の矢1本発射に要するエネルギー需要量を算出したので, これと発射本数とから, より実際に即したエネルギー消費量を簡易に求めることが可能になったのではないかと考える。

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