体力科学
Online ISSN : 1881-4751
Print ISSN : 0039-906X
ISSN-L : 0039-906X
指示条件の違いによる動作前Silent Periodの出現について
脇田 裕久矢部 京之助
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 33 巻 4 号 p. 192-200

詳細
抄録
主動筋に軽度の随意的な緊張を与えた状態から急速に反応動作を起こすと, 動作に先行して主動筋にSilent Periodが出現する.本実験は, 肘関節伸展動作を用いて, 被検者が光刺激に対してできるだけ筋収縮速度を増大するように努力した試行 (強条件) と, できる限り動作開始時間を短縮するように努めた試行 (速条件) を比較し, これらの指示条件の違いが, P.S.P.出現に及ぼす影響を究明しようとした。本実験結果は, 次のようである.
1) 動作開始時間の平均値は, 強条件で180msec (S.D.20.8msec) , 速条件で160msec (S.D.21.5msec) であり, 両条件間に1%水準で有意な差が認められた.
2) 単位時間あたりの筋力上昇率の平均値は, 強条件で258kg/sec (S.D.42.1kg/sec) , 速条件で177kg/sec (S.D.62.0kg/sec) であり, 両条件間に1%水準で有意な差が認められた.
3) P.S.P.出現率の平均値は, 強条件で21% (S.D.23.3%) , 速条件で9% (S.D.10.6%) であり, 両条件間に1%水準で有意な差が認められた.
4) P.S.P.出現潜時の平均値は, 強条件で117msec (S.D.9.1msec) , 速条件で100msec (S.D.8.9msec) であり, 両条件間に1%水準で有意な差が認められた.
5) P.S.P.持続時間の平均値は, 強条件で28msec (S.D.16.2msec) , 速条件で21msec (S.D.10.7msec) であり, 両条件間に1%水準で有意な差が認められた.
いわば, 単位時間あたりの筋力上昇率を高くすることに努めた反応動作では, P.S.P.の出現頻度は高まるが, 動作開始時間の短縮に努めた反応動作ではその出現は抑えられる.
著者関連情報
© 日本体力医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top