体力科学
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単一運動単位の活動電位に観られる電気緊張性電位成分
森本 茂加茂 美冬
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1990 年 39 巻 2 号 p. 126-132

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抄録

ヒトの単一運動単位の活動電位を, 表面電極法と筋内埋入電極法を利用して導出し, その波形について検討を行った.通常は双極誘導法にて行われるが, 本報告では差動増幅器反転入力に接続する電極を膝蓋骨上など電気信号の少ない位置に装着し単極法として運動単位の活動電位を導出した.この方法による活動電位には伝導性と非伝導性成分が存在した.本報告では非伝導性成分に注目し, その発現部位と発現機構について検討を行った.
1) 筋走行方向にそった任意の数ケ所から単一運動単位の活動電位を導出したとき, 各々の電極からの波形に発現が一致したピークが存在した.このピークの振幅は電極位置が腱に近づくにしたがって指数関数的に増大した.すなわち, 非伝導性成分は電気緊張性電位の性質を示した (late positive deflection: LPD) .
2) 運動単位の活動電位が筋一腱移行部に到達したとき, 腱の電気抵抗が高いため活動電位後方の局所回路の電流は補償的に増大する.すなわち, LPDの発現は活動電位後方の局所回路を流れる電流量の変化に起因することが考えられる.
3) LPDの振幅は発揮筋力に依存して増大した.これは, 発揮筋力の増大に伴い活動参加する運動単位の数が増えるため, 筋一腱移行部において観察する運動単位の活動電位と同期する活動電位が増えるためと考えられる.
以上の結果から, LPDの発現は筋一腱移行部にあり, その機構は上記2) , 3) の2つの機構が関与するものと考えられる.また, 種々の筋力発揮条件におけるLPDの振幅を観察することで, 活動参加する運動単位の数の変化動態を定性的に得ることが可能であると考える.

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