体力科学
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高齢ゲートボール愛好者の体力特性
宮口 和義出村 慎一宮口 尚義
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1990 年 39 巻 4 号 p. 262-269

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抄録

ゲートボール愛好者 (104名) と日頃ほとんど運動を行っていない高齢者 (73名) を対象に, 健康・体力に関する意識調査と共に, 体力テストを行い次のような結果を得た.
1.G愛好者は大多数の者が少なくとも週3日, 平均2時間以上ゲートボールを実施しており, アンケート上からは一般高齢者に比べ, 自己の体力に自信を持っている傾向がみられた.過去の運動経験については, 男性の場合, G愛好者が一般高齢者に比べて運動経験を有する者が多かったが, 女性の場合, むしろ一般高齢者の方が運動経験を有する者が多い傾向がみられた.
2.年齢段階別にG愛好者と一般高齢者の体力を比較したところ, 男性では垂直跳, 長座体前屈に, 女性においてはタッピングにおいて有意差が認められ, G愛好者の方が一般高齢者に比べよい成績であった.その他の測定項目に関しても, 高齢なG愛好者程, 体力的に一般高齢者を上回っており, 加齢に伴う体力低下の遅延傾向が示唆された.
3.女性において両群間に身長差が認められたことは, 立位姿勢の違いによるものと判断された.すなわち, 一般高齢者の方がG愛好者に比べ, 老人性円背が進行しやすいのではないかと推察された.
4.年齢と各体力測定項目及び体力総合得点との相関係数から, 男性の場合, 一般高齢者の垂直跳び, タッピング, 体力総合点がG愛好者のそれを有意に大きく上回っていた.回帰係数についても, タッピングに有意な差異が認められ一般高齢者の方がG愛好者に比べ, 体力の加齢低下が顕著であることが推察された.女性の場合, 一般高齢者において, 全身反応時間を除く他の項目全てに有意な相関が認められたが, G愛好者においてはタッピングにのみ有意な相関が認められた.従って, G愛好者の場合, この年齢範囲においてはタッピングを除けば, 加齢に伴う体力低下の遅延が生じているのではないかと推察された.
以上の結果より, 高齢者におけるゲートボール実施は, 身体を鍛えるというよりも, 加齢に伴う老化の進行を標準より遅らせ, また阻止する点において効果があるのではないかと推測された.

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