体力科学
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長時間運動中に起こる心周期分画の変動 (第2報)
鍋倉 賢治権 五晟永井 純池上 晴夫
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1990 年 39 巻 4 号 p. 270-279

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抄録

男子大学生長距離選手12名を被検者とし, 10, 000m走の成績によって上位群 (HP群) と下位群 (LP群) とに分けた.自転車エルゴメーターを用い, HRが150bpmで一定になるように負荷強度を制御し, 160分間運動させた.運動中の心電図, 心音図及び耳朶脈微分波からHR, 心周期分画及びQS2/DTを測定し, 先報17) で認められたQS2/DTのピークや谷の出現が時間依存性なのか, あるいはHR依存性なのかを明らかにし, かつ長距離走のパフォーマンスとの関係も合わせて検討した.得られた結果は, 以下の通りであった.
1) HRに対するQS2/DTは2分目に小さいピークを形成し, 一旦減少した後にHRの上昇に伴って再び増加し, 15分目に第2のピークを示した.20分目以降にHRは150bpmを維持したが, QS2/DTは漸増し谷を形成した.
2) 20分目までは, QS2i及びLVETiはQS2/DTと同様な変化パターンを示した.20分目以後もQS2iはQS2/DTと同様なパターンで変化したのに対して, LVETiはほぼ一定値を保った.
3) PEPi及びPEP/LVETは運動開始直後に減少した後は15分目までほとんど変化しなかったが, 以後時間経過に伴って漸増した.
4) HP群とLP群を比較すると, 各パラメーターの変化パターンはそれぞれ極めて類似していた.しかし絶対値を比べると, QS2/DT, QS2i及びLVETiはいずれもLP群が大きく, DTはHP群で大きかった.
以上の結果から, HRが一定値を保つような長時間運動中にもQS2/DTは先報17) と同様に運動の初期にピークを, そして中期に谷を形成することが確認され, これらはHR依存性ではなく, 運動経過時間に依存して起こる現象であると考えられた.また, 長時間運動中の心周期分画変動は長距離走能力の優劣によって相違した.

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