体力科学
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水中ランニング運動が腎臓機能に及ぼす影響
林 石松折笠 敏伊藤 朗
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1991 年 40 巻 1 号 p. 48-59

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抄録
本研究の目的は, 水中の最大ランニング運動が腎機能に及ぼす影響を調ベることである.健康男子5名に, 最大努力水中ランニング運動と, 最大陸上自転車エルゴメーター運動とを実施し, また6名の被験者に, 水浸の安静実験を行った.
それぞれの実験結果から, 以下に示す知見を得た.
1) VO2maxとHRmaxは, 水中ランニング運動と陸上の自転車エルゴメーター運動ではほぼ同程度であった.また運動直後の血中乳酸値においては, 両運動ともそれぞれの安静値より有意な増加を示し, さらにこの増加は, 陸上運動より水中ランニング運動の方が有意な高値を示した.
2) HRと血漿Aldは, 水浸安静時の方が陸上安静時より有意な低値を示した.血漿のADHは陸上安静より低い傾向にあり, また分時尿量の増加変化も有意な差が認められなかった.
3) 両運動の運動直後に得られた血漿ADHとAldは安静値より増加し, 有意な差が認められた.またこの増加は, 水中ランニング運動より陸上の自転車エルゴメーター運動の方が有意な高値を示した.
4) 両運動の運動直後に得られた尿量変化は, 安静値より有意な低値を示し, またそれは, それぞれのCcrの減少との間に正の相関が認められ, Ald濃度の増加との間に, 負の相関関係が認められた.
以上の結果より, 水中ランニング運動では, 水圧の影響及び心拍出量の増大により, より大きなvenous returnをもたらした.そのため, 心房筋の伸展が心房内にあるANFの分泌をさらに促進させたと推測できる.また, この水浸及び水中運動時において血漿ADHとAldに対して拮抗作用を持つANF或いはほかの作用因子の優位な働きがあるため, 血漿ADHとAldとの分泌が抑制されながら体内の体液調節バランスが維持したと考えられている.
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© 日本体力医学会
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