体力科学
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除神経ラット骨格筋の収縮特性に及ぼすテストステロン投与の影響
竹倉 宏明春日 規克吉岡 利忠
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1991 年 40 巻 1 号 p. 41-47

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抄録
アナボリックステロイド剤が骨格筋の構造並びに機能性に対して与える影響の作用機序を検討する目的により, 生後4週齢の時点で除神経を行い神経系の影響を排除したWistar系雄性ラットのヒラメ筋 (SOL) 並びに長指伸筋 (EDL) における筋重量, 収縮特性, 超沈澱, ミオシンATPase, アクトミオシンATPase活性値を測定した.
1.骨格筋重量はSOL, EDL両筋においてコントロール群とテストステロン投与群との間に有意な差は認められなかった.SOLにおいて除神経+ストステロン投与群は除神経群に比較して有意に高値を示した.
2. Time to peak tensionはEDLにおいて除神経+テストステロン投与群が除神経群に比較して有意に延長を示した.Half relaxation timeはSOL, EDL共に除神経+テストステロン投与群が有意に延長を示した.コントロール群の値に対して除神経に伴い有意に低値を示した最大単収縮張力はSOL, EDL共に除神経+テストステロン投与群が除神経群に比較して有意に高値を示した.
3.超沈澱の濁り度の増加はEDLにおいて4分目から7分目にかけてテストステロン投与群, 除神経群, 除神経+テストステロン投与群がコントロール群に比較して有意に高値を示した.
4.ミオシン, アクトミオシンの両ATPase活性値はSOLにおいては各群間に有意な差は認められなかった.しかし, EDLにおいてはテストステロン投与群がコントロール群に比較して有意に高値を示した.
以上のような結果より, テストステロンの骨格筋に対する作用は, 筋肥大に対しては神経支配の有無とは無関係に影響を及ぼすものであるが, 収縮速度を決定する因子の一つであるATPase活性値に対しては除神経により影響が異なるものである可能性が示唆された.また, テストステロンに対する感受性は筋線維タイプ別に異なり, 構造特性の変化は主に遅筋線維に, また機能的特性の変化は主に速筋線維に出現する可能性が示唆された.
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© 日本体力医学会
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