体力科学
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運動時の細胞内pHとクレアチンリン酸濃度の変化に及ぼすNaHCO3摂取の影響―31P NMRによる検討―
稲木 光晴久野 譜也阿武 泉板井 悠二勝田 茂
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1991 年 40 巻 5 号 p. 493-500

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抄録

NaHCO3摂取が運動時の細胞内pHおよびPCr濃度にどのような影響を及ぼすかについて明らかにするために, 7名の被検者に対し, NaCl (Cont.Tr.) およびNaHCO3摂取 (Alka.Tr.) 後の運動時において31PNMRの測定を行なった.
結果の要約は次の通りである.
1) 運動時の細胞内pHの経時的低下は, Cont.Tr.と比較すると, Alka.Tr.において遅延傾向にあり, 運動終了時の細胞内pHは, Alka.Tr. (6.69±0.11) が1Cont.Tr. (6.51±0.15) より高値を示す傾向にあった.
2) 運動時におけるPCr/ (PCr+Pi) の比の経時的低下は, Cont.Tr., Alka.Tr.の両トライアルにおいて差は認められず, 運動終了時のPCr/ (PCr+Pi) の比はCont.Tr.で0.50±0.06, Alka.Tr.で0.54±0.06を示した.
3) 運動終了時の細胞内pHとPCr/ (PCr+Pi) の比との間には, 有意な指数関数的関係が認められ, PCr/ (PCr+Pi) の比は, 細胞内pHが6.6~6.7に低下するまで顕著な減少を示したが, より低いレベルにおいてはほとんど変化を示さなかった.
以上のことより, NaHCO3摂取は運動時の細胞内pHの低下を抑制する傾向にあることが示唆された.また, 細胞内pHとPCr濃度との間には指数関数的関係があり, PCr貯備の減少が軽減されるには, 細胞内pHの低下が6.6~6.7より高いレベルで抑制される必要性のあることが示唆された.

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