体力科学
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小児の視覚による姿勢制御系の発達について
―閉眼および視野狭窄時における重心動揺の周波数分析から―
種田 行男江橋 博一木 昭男渡邊 悟
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1992 年 41 巻 2 号 p. 220-232

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抄録

小児の視覚による姿勢制御系の発達過程を検討するために, 7~12歳の小児の男女84名を対象に重心動揺計を用いて開眼, 視野15度および閉眼時の直立姿勢保持の際の重心動揺の軌跡長, RMSおよびパワースペクトルを観察し, 次のような結果を得た.
1.視覚からの情報量が少なくなるに従って, 重心動揺の軌跡長およびRMSは増加した.
2.開眼時における重心動揺の軌跡長およびRMSは, 男子では高年齢になるにつれて減少したが, 女子では変わらなかった.また低年齢の女子における軌跡長およびRMSは男子より少なかった.
3.重心動揺のパワースペクトル解析によって閉眼および視野15度時には開眼時に比べ, 特に0.4~0.7Hzあたりの周波数帯のパワーが増大した.
4.この周波数帯におけるパワーの増大は, 女子ではいずれの年齢群においても認められたものの, 低年齢の男子ではその増大のピークはあまり明確ではなく11歳群においてのみ観察された.
5.視覚入力の減少によって, 重心動揺の0.4~0.7Hzのパワーが増大する年齢群では重心動揺軌跡長あるいはRMSは減少することが認められ, 両者の関連性が示唆された.
以上の結果から, 重心動揺のパワースペクトルにおいて, 視覚系が反映していると考えられている特定の周波数帯のパワーの変動は, 小児の視覚による姿勢制御系の発達を表す有効な指標となりうる可能性が示唆された.

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© 日本体力医学会
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