抄録
高温環境下における剣道の稽古時の心血管系機能の変動に水分摂取が及ぼす影響を検討するため, 大学男子剣道選手5名にWBGT指数約27℃の環境下で30分間の剣道の稽古を行わせた.体重減少量は摂取水分量 (700ml) で補正すると, 水分摂取の有無によらず稽古直後には平均して約1.5kg, 稽古終了60分後には約2kgであった.ヘマトクリットと血清総タンパク濃度は稽古後に有意に増加したが, 水分摂取の有無による有意な差は認められなかった.一方, 水分不摂取時の稽古後には左房径, 左室拡張終期径, 一回拍出量, 左室駆出率, 左室内径短縮率は有意に減少したが, 水分摂取時の稽古後にはこれらの減少は水分不摂取時より有意に低かった.左室収縮終期容量指数と左室収縮終期壁応力の比は水分不摂取時には稽古後に有意に増加したが, 水分摂取時には稽古前後で有意な変動は示さなかった.高温環境下の30分間の剣道の稽古において, 700mlの水分摂取によって稽古後の脱水による血漿量減少は有意に改善されなかったとしても, 稽古後の一回拍出量の減少と心血管系機能の低下は抑えられた.