体力科学
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上肢運動時における脊髄損傷者の鼓膜温及び皮膚温
石井 好二郎山崎 昌廣村木 里志小村 堯菊地 邦雄宮側 敏明藤本 繁夫前田 如矢
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1995 年 44 巻 4 号 p. 447-455

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抄録

脊髄損傷者 (SCI) の持久的運動時における体温変動を知ることを目的とし, SCI 5名 (T6-T12) , 及びcontrol 7名 (健常者) に気温約25℃, 相対湿度約50%に調整された人工気候室内において, arm cranking運動 (20 watts) を30分間実施させ, 運動開始10分前から運動終了10分後までの鼓膜温 (Tty) 及び皮膚温 (額部, 上腕側部, 胸部, 大腿前部, 下腿前部, 及び下腿後部) を測定し, 以下の結果を得た.SCI群のTtyはcontrol群に比べ, 運動開始10分前から運動終了10分後まで低値を示す傾向にあったが, 統計的に有意差が認められたのは運動開始時のみであった.また, 運動の持続と共に両群間のTtyの差が縮まる傾向にあった.なお, SCI群の安静時のTtyは36.05~37.15℃であり, 運動開始後にはSCI群の内4名に0.04~0.12℃の初期下降が認められ, 運動終了時には運動開始時より0.66℃±0.19 (mean±SD) 上昇した.
上腕側部を除いて各部位の皮膚温はSCI群が低値を示す傾向が認められた.統計的に有意差が認められたのは, 額部では運動初期時, 及び運動終了後であり, 胸部では運動開始10分後から運動終了5分後までであった.大腿前部は運動開始10分前から運動終了10分後までの全てにおいて有意にSCI群がcontro1群に比べ低値を示した.下腿前部では運動開始10分前, 及び5分前に, 下腿後部では運動開始前より運動開始15分後までに統計的な有意差が認められた.SCIの胸部, 大腿前部, 下腿前部, および下腿後部の皮膚温は個人差が顕著であり, SCIの麻痺域や麻痺域に近い部位における皮膚温反応の特異性が示唆された.

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© 日本体力医学会
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