体力科学
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脊髄損傷者のレース用車椅子走行における生理学的応答
高木 聡子
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1998 年 47 巻 1 号 p. 73-85

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抄録
本研究では, レース用車椅子走行中の生理学的応答を知ることを目的として, 脊髄損傷者 (T4~L1) 男性5名を対象にふたつの実験を行った.第一の実験では, ローラー上でのレース用車椅子走行を行った.最大下運動と最大運動における生理学的応答をみるため, 換気量 (VE) , 酸素摂取量 (VO2) , 心拍数 (HR) , 血中乳酸濃度 (LA) , 主観的運動強度 (RPE) を測定した.換気性作業閾値 (VT) での%VO2maxは60.7±5.3%であった.速度に対してVO2は二次関数的に増加し, HRはS字状に上昇した.HRはVO2に対してVT付近までは直線的に上昇したが, その後急激な上昇がみられ, VO2よりも先に頭打ちとなり, その後はVO2のみが増加した.第二の実験では, トラックやロードで, レース用車椅子での1500m走, 5000m走, ハーフマラソン中のVE, VO2, HRを測定し, その競技としての特徴を探る試みを行った.1500m, 5000m走行中の%VO2maxはそれぞれ73.1±7.3%と66.0±13.3% (4名) であり, ハーフマラソンにおいては72.1% (1名) であった.これらの結果は, 車椅子の持久性競技選手が各々のVTを超えるような高い強度でのレースを行っていることを示している.
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© 日本体力医学会
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