体力科学
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日本人成人男女259名における大腿部筋群横断面積と筋力の年齢変化について
佐藤 広徳三浦 朗佐藤 美紀子佐藤 陽彦福場 良之
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1999 年 48 巻 3 号 p. 353-364

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抄録

本研究は, 日本人成人男女259名を対象に大腿部横断面の撮影と膝関節伸展・屈曲における等尺性最大筋力測定のフィールド調査を行い, 加齢に伴う大腿部筋群横断面積と筋力の変化について検討した.得られた結果は以下の通りである.
1) 膝関節伸筋群横断面積は, 男女とも60歳代で減少する傾向を示した.膝関節屈筋群横断面積は, 男性は60歳代までは加齢による変化はほとんどみられなかったが, 女性は20歳代が最も小さく, その他の年齢グループはほぼ同じだった.2) 膝関節最大伸展力において男性は, 60歳代で低下がみられたが, 女性は年齢による変化はみられなかった.また, 膝関節最大屈曲力において男性は40歳代から緩やかに減少する傾向がみられた.
3) 男性の大腿部伸筋群・屈筋群における単位横断面積当たりの筋力は40歳代頃から低下が始まることが示された.女性は伸筋群において20歳代, 30歳代がやや小さく40歳代から60歳代までは変化しなかったが, 屈筋群においては加齢とともに低下する傾向がみられた.
本研究の結果より, 本邦の男性においてはすでに50歳代頃から筋の構造・機能の低下が始まる可能性が示されたが, 女性は60歳代までは大きな変化は認められなかった.今後は, 高齢者のみならず, 高齢者予備軍である中年者にも筋機能低下防止のための運動処方を示すことが必要であり, そのことが将来にわたって高齢者の自立した日常生活獲得に貢献するものと考えている.

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© 日本体力医学会
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