体力科学
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漸増負荷走テストにおける生理的応答からみた中距離走者と長距離走者の相違
佐伯 徹郎鍋倉 賢治高松 薫
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1999 年 48 巻 3 号 p. 385-392

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抄録
本研究では, 漸増負荷法でのVO2maxテストにおける運動中のVO2の経時的変化および運動後の血中乳酸濃度からみた中距離走者と長距離走者の相違を明らかにし, 持久力のタイプを評価する新たな視点を提示することを目的とした.この課題を明らかにするために, 中距離走者9名, 長距離走者9名を対象として, 約11分間でexhaus-tionとなるような漸増負荷によるトレッドミル走を用いて, 走行中の酸素摂取量, exhaustion後の血中乳酸濃度などを測定した.また, VO2maxの出現時間を, exhaustionに至った時間を基準として求め, 中距離走者の平均値で最も高いVO2が認められたexhaustion前1.5分目からex-haustionまでの酸素摂取量の変化量 (ΔVO2) も求めた.
本研究のおもな結果は次のとおりである.
(1) 中距離走者は長距離走者と比較して, exhaustion前のより早い段階でVO2maxが出現し, その後の走行時間の長いことが認められた.
(2) 中距離走者は長距離走者と比較して, VO2maxは有意に低く, 最大心拍数およびexhaustion後の血中乳酸濃度が有意に高いことが認められた.
(3) VO2maxの出現時間の早い中距離走者は高い血中乳酸濃度を, 出現時間の遅い長距離走者は低い血中乳酸濃度を示す傾向が認められた.
(4) exhaustion後の血中乳酸濃度とΔVO2との間に, 有意な負の相関関係が認められた.上述の結果は, 漸増負荷法でのVO2maxテストにおけるVO2maxの出現時間, 最大心拍数および運動後の血中乳酸濃度などをもとにして, 中距離型の持久力と長距離型の持久力のような持久力のタイプを評価できる可能性のあることを示唆するものである.また, その背景の一つとして, exhaustion後の血中乳酸濃度の高いことがVO2maxの出現条件に影響している可能性のあることを示唆するものである.
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© 日本体力医学会
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