体力科学
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表面筋電位の振幅スペクトラムに観られる周波数帯域を分割する境界周波数
加茂 美冬森本 茂
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2000 年 49 巻 1 号 p. 171-181

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抄録

随意的に膝関節伸展筋力を等尺性に発揮した時, 内側広筋から表面単極法を用いて表面筋電位を導出した.導出した筋電位からFFT法にて求めた振幅スペクトラムに, 大きく振幅の落ち込む周波数 (境界周波数, Turning Frequency: TF) の存在を観察した.TFを遮断周波数として表面筋電位を低周波数帯域 (筋電位) 成分 (Low Frequency Component: LFC) と高周波数帯域 (筋電位) 成分 (High Frequency Component: LFC) に区分した.LFCとHFCの特徴差を見出すことでTFの表面筋電位解析方法の位置付けを検討した.
1) 60%MVCまでの筋力発揮において, 導出電極の装着位置に関わらずTFは出現した.運動終板から15mm末梢までのTFは等値であったが, 20mm以上では高い周波数値となった.
2) 発揮筋力の増大に伴って, TFは高周波数となった.
3) 筋線維の走行方向に沿った任意の位置での表面筋電位間の相互相関をLFC, HFCについて求めたところ, HFCは相関係数のピーク値がほぼ0msに現れ, 位相が一致する傾向となった.しかし, 導出電極間距離に従ってピーク値は小さくなった.これに対し, LFCは電極間距離に従って係数のピーク値出現に遅延が観られた.LFCは伝導性の特徴を有し, HFCは非伝導性であることが示唆された.
TFから表面筋電位をLFCとHFCに分割したとき, 相互相関法により評価した伝導性の観点から, 2種の電位成分は全く異なる特徴であった.TFは表面筋電位解析の方法として位置づけられると考えられるが, LFCとHFCを生理学的な特性と関連づけることが必要となる.

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