2000 年 49 巻 5 号 p. 581-588
本研究は, 慢性腰痛者を対象とし, 主観的運動強度11における一過性の水中運動および陸上運動の実施が, 疼痛, 状態不安, 唾液中コルチゾール濃度に及ぼす影響を比較検討し, 慢性腰痛者に対する水中運動の有用性を調べることを目的とした.その結果, 水中運動の実施に伴い, 唾液中コルチゾール濃度は増加を示したが, 有意な疼痛の改善, 状態不安の低下が認められた.陸上運動の実施においては, いずれの指標においても有意な変化は認められなかった.以上より, 主観的運動強度11程度の運動強度における一過性の水中運動の実施は, 慢性腰痛者の疼痛や状態不安を低下させる効果があることが認められた.また, 唾液中コルチゾール濃度は疼痛や状態不安などのストレスの影響よりも運動強度の方に大きな影響を受ける可能性が示唆された.