本研究を要約すると, 加齢に伴う歩行能力と歩行時に動員される大腰筋と大腿部の筋横断面積との関係を検討した結果, 1) 大腰筋の筋横断面積と歩行速度の間には, 女性において有意な相関関係がみられた.2) 大腿部伸筋群の筋横断面積と歩行速度の間には男女とも有意な相関関係がみられた.しかしながら, 屈筋群の筋横断面積と歩行速度との間には男女とも一定な関係は認められなかった.3) 大腰筋及び伸筋群の筋横断面積と歩幅との間には, 男女ともに有意な相関関係がみられた.また, 加齢による筋量の低下が歩行能力の低下を導いていることを共分散構造分析によって証明した.
以上の結果から, 加齢に伴う大腰筋と大腿部伸筋群の筋量の低下は, 歩行速度の低下に大きな影響を及ぼす可能性が示唆された.これらの筋群のトレーニング活動を行うことによって, 歩行能力は向上させることができると考えられる.そこで, 今後の課題として, 高齢者に対してトレーニングによる大腰筋および大腿部筋量の変化が歩行動作に及ぼす影響について検討する必要性が示唆された.
本研究は, 平成9年度発足の筑波大学TARAプロジェクト (代表; 岡田守彦) 及び平成11年度科学技術庁・科学技術振興調整費 (代表; 村上和雄) による研究 (SATプロジェクト) の一部である.
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