体力科学
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MRI-T2値を指標としたUphill runningとDownhill runningにおける下肢骨格筋動員の検討について
谷代 一哉石井 友保鈴川 一宏清田 寛中野 昭一
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2001 年 50 巻 2 号 p. 201-210

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抄録

本研究では, 傾斜角度の異なるトレッドミルランニングをオールアウトまで行わせ, 皮膚表面温度, また運動前後のMRIのT2値 (T2緩和時間) の変動, 酸素摂取量, 心拍数, 血中乳酸値などから下肢の各筋群の動員を検討した.すなわち, 1.+5%のUphill Running (UR) と-5%のDownhill Running (DR) では, すべての筋の動員がUR時で高い傾向にあり, 特にRF (p<0.05) , HM (p<0.01) およびGN (p<0.05) でのT2値がDRに比べて, 有意に高い値を示していた.
2.UR, DRにおいて, MRIのT2強調画像による下肢のすべての筋の平均T2値と, 運動後の血中乳酸値との間には, 有意に高い正の相関関係 (r=0.815, p<0.001) が認められた.
3.Uphill RunningとDownhill Runningでは, 明らかに動員されている筋群が異なり, Uphill Runningでは, 主にハムストリング (HM) が動員されており, 運動後の血中乳酸値には, 腓腹筋 (GN) が関与していた.また, Downhill Runningでは, 大腿四頭筋 (QF) が主に動員されており, しかも血中乳酸値にも影響を与えていることが示唆された.
以上のことから, 傾斜角度の異なるコースを走るマラソンや駅伝のトレーニングには, 心肺機能を向上させることだけでなく, Uphill Runningに対応させる選手には, ハムストリング (HM) および腓腹筋 (GN) を中心とした筋力トレーニングを行うこと, Downhill Runningに対応した選手には, 大腿四頭筋 (QF) のEccentricやisometricな筋力トレーニングが必要であることが明らかとなった.

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© 日本体力医学会
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