体力科学
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20日間のベッドレストはヒトヒラメ筋脊髄運動神経細胞の興奮性を高める
北畠 義典種田 行男江川 賢一真家 英俊福永 哲夫鈴木 洋児山本 高司
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2004 年 53 巻 1 号 p. 115-121

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抄録
本研究の目的は20日間のBRによる身体の不活動が抗重力筋のひとつであるヒラメ筋脊髄運動神経プールの興奮性におよぼす影響を検討することである.被検者は20日間ベッドの上で生活するBR群8名 (年齢24.3±6.5歳, 身長171.5±5.2cm, 体重65.8±15.5kg) と普段どおりの日常生活をおくる対照群10名 (年齢23.9±2.8歳, 身長172.5±3.5cm, 体重66.4±6.1kg) であった.測定中の姿勢は仰臥位とし, 脊髄運動神経の興奮性の指標はH反射法を用いて, 抗重力筋であるヒラメ筋からH反射およびM反応を記録した.そしてその記録を用いて動員曲線を作成し, その中からHslp/Mslpを算出した.信頼性及び妥当性の高いデータを得るために特に以下の点に配慮した. (1) BR期間中を通して十分な管理の基で質の高いBR環境を保持した. (2) ヒラメ筋脊髄運動神経の興奮性に影響をおよぼす被検筋および拮抗筋の活動を除去し, 安定した測定条件を整えた. (3) 閉塞現象の影響を受けにくい指標であるHslp/Mslpを用いた. (4) 対照群を設けてBRの影響を両群間で比較検討した.そして, 以下に述べる結果が得られた.
1) BR群ではBRの前値に比べて後値でHslp/Mslpが有意 (P<0.05) に高値を示したが, 対照群では観察期間前後でHslp/Mslpに有意な差は認められなかった.
2) BRおよび観察期間の前値においてHslp/Mslpは群間に有意な差は認められなかったが, 後値においてはBR群が対照群に比べて有意 (P<0.05) に高値を示した.
以上の結果から20日間のBRによる身体不活動はヒラメ筋脊髄運動神経の興奮性を増大させることが明らかとなった.
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© 日本体力医学会
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