2012 年 18 巻 4 号 p. 194-199
症例は57歳の女性.2008年6月に近医で汎血球減少を指摘され,当科外来紹介となった.上部消化管内視鏡検査で食道静脈瘤(LmF3CbRC2)を認め,EVLを施行.精査の結果,特発性門脈圧亢進症の診断となり,待機的にHassab手術を行った.食道静脈瘤は一時,消退したが,半年後の上部消化管内視鏡検査で再増悪所見を認め,EVLを施行した.CTで門脈本幹の狭窄と器質化門脈血栓を認めたことより,直達手術の遠隔期に生じた門脈血栓に起因する門脈圧亢進症の再燃が,遠肝性側副血行路としての静脈瘤の悪化の原因であると判断した.すでに血栓溶解療法の時期を逸しており経過観察していたが,その後の吐血と肝性脳症などが臨床上問題となった.本症例に対して門脈圧の確実な減圧を目的に2011年4月に上腸間膜静脈—右卵巣静脈短絡術を施行した.術後の検査で食道静脈瘤の退縮が確認された.自験例のような門脈—下大静脈短絡術はサルベージ手術の一環としても有用と考えられたので報告する.