日本門脈圧亢進症学会雑誌
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特別寄稿
総説
原著
  • 高木 忠之, 引地 拓人, 加藤 恒孝, 中村 純, 栁田 拓実, 大塚 充, 野口 祐紀, 亀岡 英介, 和田 淳, 大平 怜, 今村 秀 ...
    2026 年32 巻1 号 p. 10-17
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/19
    ジャーナル フリー

    胆管空腸吻合部に発生する静脈瘤はまれである.本研究は,胆管空腸吻合部静脈瘤出血例の臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.胆管空腸吻合部静脈瘤出血例10例を対象に,患者背景と治療成績,予後を検討した.膵胆道癌などに対する膵頭十二指腸切除後に門脈閉塞を来した肝外門脈閉塞症が8例,胆道閉鎖症に対する肝外胆管切除術施行例が2例であった.初回治療は内視鏡的組織接着剤注入術が4例,ポリドカノールを用いた傍静脈瘤注入の内視鏡的硬化療法が2例,止血鉗子による凝固療法が1例,部分的脾動脈塞栓術が1例,2例は治療介入なく経過観察された.内視鏡的組織接着剤注入術施行例では1例に消化管穿孔を来したが,すべて初回治療で止血が得られ再発はなかった.一方,内視鏡的硬化療法,止血鉗子による凝固施行例は全例で出血再発を認め,胆管炎や肝不全を2例で認めた.以上から胆管空腸吻合部静脈瘤出血例に対する治療は内視鏡的組織接着剤注入術が最適である可能性がある.

  • 浅野 陽一, 村田 雅樹
    2026 年32 巻1 号 p. 18-24
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/19
    ジャーナル フリー

    本邦において,食道胃静脈瘤に対する出血予防治療の第一選択は内視鏡的硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy:EIS)であるが,EISは技術的に難易度が高く,その要因の一つに視野確保の難しさがある.近年,内視鏡治療時の視野確保方法の一つとしてgel immersion endoscopyが注目されており,EISにも活用可能と我々は考えた.当院でEISを受けた59症例をgel使用群と非使用群に分類し,硬化剤の血管内注入成功率と注入し得た硬化剤の量を比較検討したところ,gel群の方が硬化剤の血管内注入成功率は高く,硬化剤注入量も増加した.さらに,初回治療時よりも静脈瘤が縮小傾向となり穿刺難易度が上がる複数回目のセッションにおいても,gel群では初回治療と同程度の高い成功率を達成可能であった.EIS時にgelを併用することで,良好な視野の確保,および消化管内圧を低圧に維持することを可能とし,治療成績が向上することが示された.

  • 鈴木 健太, 小谷野 香織, 厚川 正則
    2026 年32 巻1 号 p. 25-34
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/19
    ジャーナル フリー

    近年,肝硬変患者における潜在性肝性脳症(covert hepatic encephalopathy:CHE)を診断する必要性が高まっている.本研究の目的は,実臨床においてCHEと関連する新たな因子を同定することである.17施設の肝硬変患者402人を登録し,CHEの診断のためにStroopテストを実施した.多変量解析において,血清25(OH)D3の低値(p<0.05)および食道静脈瘤(EV)の存在(p<0.05)がCHEの独立因子であることが明らかとなった.検査項目を血液検査因子のみに限定した場合,血清アルブミン低値(p<0.01)および血清25(OH)D3低値(p<0.05)がCHEの独立因子であった.CHEを予測するための血清アルブミンおよび血清25(OH)D3の至適カットオフ値は,それぞれ3.7 g/dlおよび16.5 ng/mlであった.

    血清25(OH)D3値および血清アルブミン値の低値,ならびにEVの存在は,肝硬変患者におけるCHEの発症と有意な関連を認めた.特に,血清25(OH)D3値の低下に伴ってCHEの有病率が上昇しており,こうした危険因子を有する患者は,CHEの存在について積極的に検査をされるべきである.

  • 長尾 千香子, 厚川 正則
    2026 年32 巻1 号 p. 35-41
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/19
    ジャーナル フリー

    直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)の進歩により代償性肝硬変患者や合併症を併存する非代償性肝硬変でも高率にウイルス学的著効(SVR)が得られるようになった.一方で,非代償性肝硬変患者におけるSVR後の食道静脈瘤(EV)の変化に関する報告は少ない.本研究は,代償性・非代償性肝硬変患者243例に対してDAA治療前およびSVR獲得後に上部消化管内視鏡検査を施行し,EVの形態変化を明らかにすることを目的とした.その結果,SVR後にEVが改善した症例は11.9%,不変は73.3%,悪化は14.8%であった.SVR12のアルブミン・ビリルビンスコア(ALBIスコア)が不良であることは,EVの悪化および新規発症に対する独立因子であり,それぞれの予測におけるALBIスコアのカットオフ値は-2.33および-2.65であった.したがって,SVR達成後もALBIスコアが不良な患者はEVの悪化や新規発症のリスクが高く,定期的な内視鏡的評価が推奨される.

  • 佐野 有哉, 天野 恵介, 有永 照子, 井出 達也, 川口 巧
    2026 年32 巻1 号 p. 42-48
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/19
    ジャーナル フリー

    【目的】依然として致死的な病態である急性肝不全(ALF)について,当院のALF症例から臨床的特徴と予後因子を検討した.【方法】2014~2025年に診断されたALF 47例を対象に,成因,合併症,治療,そして予後不良(死亡OR肝移植)因子を多変量解析・決定木解析で検討した.【成績】平均年齢58歳,男性23例.主な成因はB型肝炎と循環障害.DIC 29例,感染症19例,ICU収容40例.死亡18例,肝移植2例.多変量解析では肝性昏睡(p=0.0098),血小板数(p=0.0152),MELDスコア(p=0.0218)が予後不良因子であった.決定木解析ではMELD score≧25,かつ劇症肝炎の肝移植適応スコアリング≧4が予後不良例の特徴的パターンとして抽出された.【結語】ALFの予後不良の予測にスコアリング併用の有用性が示唆された.

  • 浪崎 正, 松田 卓也, 増田 泰之, 小泉 有利, 佐藤 愼哉, 鍛治 孝祐, 吉治 仁志
    2026 年32 巻1 号 p. 49-53
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/19
    ジャーナル フリー

    潜在性肝性脳症(covert hepatic encephalopathy:CHE)は,肝硬変患者の生活の質(QOL)および予後を悪化させる可能性がある.本研究では,CHEのリスク因子を解析し,治療介入による恩恵が期待される高リスク患者群を特定した.過去に顕性肝性脳症(OHE)の既往歴または治療歴のない145例を対象とした.患者をCHE群(n=91)および非CHE群(n=54)に分類し,ストループテストおよびナンバーコネクションテスト(NCT)を用いて診断した.CHEの有病率は62.8%であり,CHE群では血清亜鉛およびアルブミン濃度が有意に低値を示した.多変量ロジスティック回帰分析により,血清亜鉛濃度74 μg/dl未満が独立したCHE予測因子であることが示された.血中アンモニア濃度および肝機能予備能はCHEの予測因子とはならなかった.亜鉛軽度欠乏は,OHE既往のない肝硬変患者におけるCHEの発症と関連しており,血清亜鉛測定は神経心理学的検査による早期診断を促進する可能性がある.

  • Atsushi Toyonaga, Kazuhiko Oho, Masayoshi Kage, Keigo Emori, Hiroto In ...
    2026 年32 巻1 号 p. 54-61
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/19
    ジャーナル フリー

    Background: Esophageal varices are classified into two types according to their venous anatomy at the gastroesophageal junction: the palisading type (major) and the pipeline stem type (minor). Many cases of the pipeline stem type (pipeline varices) have been reported to be resistant to or associated with a high risk during endoscopic therapy. This study aimed to clarify the prevalence and clinicopathological characteristics of pipeline varices.

    Materials and methods: Among 1,141 patients who underwent endoscopic treatment for esophageal varices, 210 patients for whom detailed variceal anatomy was available from endoscopic varicealography during injection sclerotherapy or from percutaneous transhepatic portography were retrospectively analyzed. Endoscopic and hemodynamic findings were assessed. Pipeline varices were further classified into typical and subtype variants, and clinical characteristics were compared between these groups

    Results: Of the 1,141 patients, 64 (5.6%) had pipeline varices; 49 (76.6%) were classified as the typical type and 15 (23.4%) as the subtype. No significant clinical differences were observed between the two types. Compared with patients with ordinary esophageal varices, those with pipeline varices showed a significantly higher prevalence of portopulmonary venous anastomosis (14.1% vs. 4.8%, p = 0.0197). In both groups, the primary site of esophageal varices was the right esophageal wall, and the left gastric vein was the main feeder in the majority of cases.

    Conclusions: Pipeline varices are frequently associated with portopulmonary venous anastomoses. In the absence of a preprocedural diagnosis of such anastomoses, endoscopic treatment of pipeline varices may carry a substantial risk, including severe post-procedural bleeding or fatal systemic complications caused by the inadvertent migration of injected sclerosant into the arterial circulation.

症例報告
  • 木下 幾晴, 木下 真樹子
    2026 年32 巻1 号 p. 62-67
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/19
    ジャーナル フリー

    症例は5年前にLmF2CbRC1の静脈瘤に対し内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)を行ったが,その後外来受診を自己中断していた60代女性のアルコール性肝硬変患者である.5年ぶりに吐血を主訴に来院し,内視鏡的静脈瘤結紮療法(EVL)とEISを施行後,アルゴンプラズマ凝固療法(APC)による地固め療法を行ったが食道狭窄を来した.内視鏡的バルーン拡張術(EBD)を2回とステロイド局注併用EBDを1回行ったが十分な拡張が得られなかった.アルコール関連認知障害の悪化によりEBDの継続が困難となったため,フルカバータイプの自己拡張型金属ステント(fully covered self-expandable metal stent:FCSEMS)を留置した.1週間後に胃内にステントが逸脱したが,狭窄部は十分拡張され,逸脱したステントは経口的に回収可能であった.その後も再狭窄なく経過している.

  • 中村 健二
    2026 年32 巻1 号 p. 68-74
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/19
    ジャーナル フリー

    症例:70代,男性,主訴:ストーマ造設部からの出血,現病歴:直腸癌術後,アルコール性非代償性肝硬変で通院中.受診前日よりストーマから持続出血し,Hb 7.4 g/dlと貧血進行し,出血性ストーマ静脈瘤(stomal varices:SV)の診断で緊急入院.入院時造影CTで下腸間膜静脈(inferior mesenteric vein:IMV)を供血路としたSVを認めた.SVから複数回の出血既往があり経皮的硬化療法を行った.エコー下にストーマ周囲の供血路であるIMVの分枝血管を穿刺し,カテーテルをIMVから門脈側へ挿入し造影した.SVと逆行性にIMVが描出された.IMV末梢枝をコイル塞栓し,血流は消失および停滞,50%グルコース5 mlと5%オルダミン・イオパミドール等量混和液を2 ml注入した.術後経過は良好で第16病日に退院,退院後4か月半で肝不全死するまでにSVの再出血は認めなかった.

  • 米田 裕亮, 瓦谷 英人, 大岡 和嵩, 松田 卓也, 増田 泰之, 芝本 彰彦, 小泉 有利, 佐藤 慎哉, 西村 典久, 吉治 仁志
    2026 年32 巻1 号 p. 75-79
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/05/19
    ジャーナル フリー

    症例は40歳代,男性.既往歴:特記なし.X-8年,X-5年に門脈・上腸間膜静脈血栓症に伴う腹痛で入院となった.血栓症の原因ははっきりしなかったが,カテーテル治療後にエドキサバンを投与し近医にてフォローしていた.X年,定期検査にて肝・胆道系酵素の上昇および黄疸を認めた.造影CTにて胆管周囲の側副血行路の著明な発達と,それに伴う胆管圧排を認め,閉塞性黄疸と診断した.入院後,内視鏡的逆行性胆管造影にて,総胆管の蛇行,部分的な狭窄を認め,胆管静脈瘤による閉塞性黄疸と考え,ENBDチューブを留置した.その後ERBDチューブに交換し退院となった.退院後ERBDチューブ交換の際に胆管静脈瘤破裂に伴う胆道出血を来した.出血に対してENBDを留置し,抗血栓薬の調整を行い止血が得られた.以後数か月ごとにERBDチューブを交換し胆管炎や胆道出血を認めず経過している.胆管静脈瘤に伴う閉塞性黄疸に対する治療法は確立されていない.今回,門脈血栓症から生じた胆管静脈瘤により閉塞性黄疸を来した症例を経験したため報告する.

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