2021 年 27 巻 4 号 p. 302-308
患者は2歳女児.生後56日に胆道閉鎖症の診断で当院小児外科にて腹腔鏡肝門部空腸吻合術を施行された.尿路感染症や胆管炎のため複数回の抗生剤投与歴がある.黒色便の疑いのため当科紹介となり,上部消化管内視鏡検査を施行.Lm F2 Cb RC3(RWM),Lg-c F2 Cw RC1の食道胃静脈瘤を認めたため5% ethanolamine oleateによる内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)および内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を行った.治療後にPseudomonas aeruginosaによる菌血症,肝膿瘍を生じたが抗生剤への反応は良好であり改善を認めた.感染経路としてEISの穿刺部やEVL潰瘍からの血管経由の感染または肝門部空腸吻合を介した胆道の逆行性感染の可能性が考えられ,内視鏡的静脈瘤治療後の発熱時に鑑別として挙げるべき病態である.