日本小児血液・がん学会雑誌
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総説
遺伝性Epstein-Barrウイルス関連リンパ増殖性疾患
金兼 弘和
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2015 年 52 巻 2 号 p. 119-126

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抄録
リンパ増殖性疾患(lymphoproliferative disorder: LPD)とはリンパ球が異常増殖をきたす疾患であり,多クローン性で良性なものから単クローン性で悪性なものまで幅広い.宿主の免疫異常によって生じることが多く,小児では原発性免疫不全症に伴うLPDが多く観察される.Epstein-Barrウイルス(EBV)はB細胞に感染し,不死化させるため,EBV関連LPDがしばしば認められる.遺伝性EBV関連LPDの代表疾患はX連鎖リンパ増殖症候群(X-linked lymphoproliferative syndrome: XLP)であるが,最近XLP以外の遺伝性EBV関連LPDがいくつか報告されている.ITK欠損症,CD27欠損症,MAGT1欠損症,STK4欠損症,Coronin-1A欠損症,activated PI3Kδ syndrome,CTP1欠損症,ALPS-FASのほかに,原因不明であるが慢性活動性EBV感染症も含まれる.これらの疾患では血球貪食性リンパ組織球症,慢性EBV血症,リンパ腫,異常ガンマグロブリン血症といった臨床的特徴に加えて,一部の疾患ではinvariant NKT細胞の欠損を伴い,EBVに対する易感受性の一因と考えらえる.EBV-LPDはヒト固有の疾患であり,遺伝性EBV-LPDの研究により,ヒト免疫学の理解が深まるものと考えられる.
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© 2015 日本小児血液・がん学会
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