日本小児血液・がん学会雑誌
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第67回日本小児血液・がん学会学術集会記録
二学会合同シンポジウム:小児がん患者と家族の薬剤・環境曝露対策 ―正しく怖がるために―
  • 大濵 江美子
    2026 年63 巻2 号 p. 97-101
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    筆者は2006年に当院初となるMSWとして入職したが,それまではPSWとして精神病院にて精神疾患患者の支援を行っていた.

    差別偏見の歴史の中で長期入院となっていた患者への退院支援・生活支援・就労支援の実践において,当時尊敬する先輩方から教わり大切にしていた価値が『長期に渡って病気と付き合っていく患者に伴走し,揺らぐ力を持って継続的に支援すること』・・・まさに昨今のがん患者支援・長期フォローアップの実践でも尊重されるべき視点であった.

    しかし入職当時,そんな関わりは「抱え込み」と捉えられ急性期病院には馴染まないものだった.なのでまずは退院後の患者の様子を病棟に報告したり,地域の訪問看護ステーションに病棟カンファレンスや院内会議に定期的に参加してもらい,病院と地域の垣根を下げて気軽に切れ目なく連携し,患者を“生活者”と捉えた支援に注力してきた.

    そして2015年には医療用SNSメディカルケアステーションを全国の急性期病院に先駆けて導入し,院内外の多職種がよりシームレスに質の高い情報連携ができるプラットフォームを整備し,患者家族にも気軽に使ってもらうことで寄り添いの支援を行ってきた.

    また,患者向けのリーフレットも社会資源・在宅医療・就労支援・学習支援・妊孕性温存などテーマごとに作成し,患者家族の今と将来をともに考えるための対話のツールとして活用してきた.

    例え同じようながんを患い同じような合併症があっても,その患者が“生活者”として生きていく過程は多様であり,そこに寄り添い,共に悩み,患者自身で人生を切り開いていけるよう多職種で取り組んできた実践についてご報告したい.

シンポジウム1:非腫瘍性血液疾患のup to date
  • 鈴木 優子
    2026 年63 巻2 号 p. 102-107
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    近年,外傷や産科出血などの急性出血性病態において抗線溶薬が有効であることが大規模臨床試験により示され,線溶活性の過剰と出血増悪との関連が示唆されている.さらに非常に稀ではあるが,先天性に線溶活性が過剰となる病態として,線溶抑制因子(plasminogen activator inhibitor-1,α2-plasmin inhibitor,thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor)の機能不全により重篤な出血を来しうることが報告されている.臨床的に,出血時には血小板機能や凝固能がまず評価されるが,線溶能については日常診療で広く用いられる機能的評価法が限られており,十分に検討されているとは言い難い.我々は,原因不明として扱われてきた出血症の一部において過剰な線溶活性が出血の原因となる可能性に着目し,包括的な線溶能の評価を行うとともに各線溶抑制因子の機能を検出することで責任分子の特定に繋がると考えた.これは,線溶系の活性化は凝固反応に伴って惹起され,フィブリンなどの固相面において反応が大きく増幅される系であるとの理解に基づくものである.本講演記録では,リアルタイムイメージング解析により我々が実証してきた線溶反応の時空間的特性について紹介する.さらに,このような線溶系の特性を踏まえた機能検出法として,従来より用いられているフィブリンクロット溶解アッセイを応用し,我々が提唱した新たな疾患概念「出血性線溶異常症」の診断の流れについて概説する.本講演記録を通して疾患概念の普及を図りたいと考えている.

  • 金兼 弘和
    2026 年63 巻2 号 p. 108-114
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    先天性免疫異常症(IEI)のなかでも診断後すみやかに造血細胞移植(HCT)を要する重症複合免疫不全症(SCID)ならびに免疫グロブリン補充療法(IgRT)を必要とするX連鎖無ガンマグロブリン血症に代表されるB細胞欠損症(BCD)は比較的頻度も高く,血液専門医が診療に関わることが多い.従来SCIDやBCDは重症あるいは反復感染症を契機に生後数か月から数年で診断され,まれには致死的経過をとることがあった.しかしSCIDならびにBCDはT細胞,B細胞の異常に基づくため,それぞれの新生能を反映するT細胞受容体遺伝子再構成断片(TREC),Igκ鎖遺伝子再構成断片(KREC)が低値となる.TREC,KRECは新生児ろ紙血から抽出した微量なDNAからも定量可能であり,新生児スクリーニング(NBS)に応用できる.SCIDおよびBCDの治療はそれぞれHCTおよびIgRTであるが,とくにHCTにおいてはドナーソースや前処置の選択が診療の鍵となる.IEIに対するHCTは腫瘍性疾患に対するHCTとは異なるアプローチが必要である.わが国においてはIEIの専門施設が限られているため,IEIの専門家と協力しながら,それぞれの地域での治療が必要となってくる.ここでは拡大NBSで見つかるIEIの診断ならびに治療のポイントについて述べたい.

  • 坂本 淳, 内山 徹, 國島 伸治, 要 匡, 小原 収, 石黒 精
    2026 年63 巻2 号 p. 115-124
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    先天性血小板減少症・異常症は,巨核球分化,血小板産生,細胞骨格形成,膜受容体,あるいは顆粒形成に関わる病的バリアント(変異)によって生じる,血小板減少および/または血小板機能異常を特徴とする多様な遺伝性疾患群である.多くの原因遺伝子が同定されているが,先天性血小板減少症は依然として診断されにくく,しばしば免疫性血小板減少症と誤診され,不適切な治療につながっている.診断精度の向上を目的として,私たちは末梢血塗抹標本の評価,免疫蛍光染色,フローサイトメトリー,および先天性血小板減少症・異常症関連56遺伝子を対象とした次世代シーケンサーを用いたパネル解析を統合した,全国レジストリおよび中央集約型診断プラットフォームを構築した.この体制により,登録患者のおよそ半数で病的バリアントが同定され,多様な遺伝性血小板異常症が診断された.本レジストリにより,MYH9異常症の診断遅延や重症例の自然史が明らかにできた.ANKRD26関連血小板減少症ではANKRD26転写レベルと臨床症状の相関を調べた.また,22q11.2欠失症候群のGPIb発現と出血症状との関連を検討した.その他,複数の先天性血小板減少症の遺伝子異常を有する症例も報告した.これらの知見は,形態学的,機能的,遺伝学的解析を組み合わせた全国的診断体制を通じて得られたものであり,今後も早期かつ正確な診断,不適切な治療回避,リスクに応じた適切な診療管理を目指していく方針である.

第5回女性・若手医師活動支援シンポジウム:女性医師や若手医師のキャリア支援
  • 嶋 晴子
    2026 年63 巻2 号 p. 125-129
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,小児血液・腫瘍医としてのキャリア形成の過程と,臨床経験を積んだ後に実現した米国研究留学の経験について概説する.筆者は小児血液・腫瘍診療に携わる中で基礎研究および臨床研究の双方に取り組み,造血幹細胞・白血病幹細胞研究や小児慢性骨髄性白血病(CML)におけるチロシンキナーゼ阻害剤治療の臨床研究に従事してきた.近年,再発・難治性急性リンパ性白血病に対するCAR-T細胞療法の治療経験を契機に腫瘍免疫療法研究への関心が高まり,米国コロラド大学Verneris研究室において骨肉腫に対するCAR-T細胞療法の研究に従事する機会を得た.留学先では,B7-H3を標的としたCAR-T細胞の腫瘍ホーミング能向上や,CAR-T細胞による腫瘍攻撃過程で生じる腫瘍細胞側の応答機構の解明を目指し,骨肉腫研究に取り組んだ.本稿ではこれらの研究経験に加え,臨床医として一定の経験を積んだ後に研究留学を行うことの意義や,研究環境・文化の違いから得られた学びについても述べる.キャリアの途中で留学を実現した経験が,これから研究や臨床の道を歩む若手医師にとって一つの参考となれば幸いである.

シンポジウム2:小児がん治療における腫瘍微小環境と免疫応答の新展開
  • 文野 誠久
    2026 年63 巻2 号 p. 130-133
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    【はじめに】神経芽腫における腫瘍微小環境(TME)は,転移促進や治療抵抗性の要因として重要である.小児外科医としての臨床視点から行ってきたTMEを標的とした3系統の神経芽腫基礎研究について報告する.

    【間葉系幹細胞(MSC)GD2免疫治療の開発】MSCに着目し,MYCNトランスジェニックマウス(TgM)におけるhoming効果を検証,さらにIFNβ発現MSCによる抗腫瘍効果を確認した.これらの結果から抗GD2抗体発現MSCの開発に至り,神経芽腫細胞株に対するADCC活性をin vitroで,腫瘍増大抑制をin vivoでそれぞれ実証した.現在,骨髄転移モデルを作成して抗腫瘍効果の検証を進行中である.

    【微小残存病変(MRD)モデルに対するMEK阻害剤の効果】MEK阻害剤Trametinibを用いて,神経芽腫xenograftモデルによる短期的な増大抑制効果を確認,さらに腫瘍摘出後MRDモデルを構築し,trametinibの腫瘍抑制効果および生存期間延長効果を確認,再発予防の可能性を示唆した.

    【転移巣に対する手術侵襲の影響】MYCN TgM由来腫瘍細胞の同系皮下移植モデルを作成し,腫瘍増大に伴い遠隔転移が発生することを確認し,かつ原発巣切除による転移巣増大を確認した.さらに腫瘍操作,手術侵襲,全身炎症について検討し,IL-6など炎症性反応がその促進に寄与している可能性を示した.

    【まとめ】免疫治療開発,外科手技を用いたモデルマウス作成,外科治療の影響など,外科的視点を活かしたTME研究を推進しており,臨床への橋渡しを目指す.

  • 富田 晃正
    2026 年63 巻2 号 p. 134-138
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    難治性がんに対するキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)を用いた遺伝子改変T(CAR-T)細胞療法が注目されている.我々は,CAR-T細胞に分子標的薬を併用することで,固形腫瘍を取り巻く免疫抑制的な腫瘍微小環境の改善やCAR-T細胞の免疫疲弊の抑制を目指す複合型細胞免疫療法の開発に取り組んできた.本稿では,固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法開発の現況および課題について概説するとともに,我々が取り組むCAR-T細胞と分子標的薬の併用療法の開発について紹介する.

シンポジウム3:小児グリオーマに対する治療開発の過去・現在・未来
  • 山口 秀, 伊師 雪友, 藤村 幹
    2026 年63 巻2 号 p. 139-144
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    小児低悪性度神経膠腫(pLGG)は大部分がグレード1の「良性」に分類される腫瘍であり,完全摘出により治癒が望める.一方視路視床下部や脳幹など,全摘出不可能な部位に生じた場合は治療に難渋し,腫瘍増大により深刻な後遺症が生じることも少なくない.一方で生命予後は決して不良ではない.分子生物学的な解明が進むにつれて,「良性の星細胞腫」という病理概念から,pLGGとして成人神経膠腫とは異なる腫瘍群と認識されるに至った.DNAメチル化解析の発展により病理診断は益々細分化されているが,これも発展途上の段階である.BRAF遺伝子異常を中心としたMAPK活性経路異常が多く,分子標的薬が期待されている腫瘍である.

    治療開発の目的も他の小児がんと大きく異なる.臨床試験においては多くの試験は「無再発生存」で評価されているが,他の小児がんの「無再発生存→再発」とは概念が異なっており,「無再発生存→腫瘍再増大」であることを認識する必要がある.pLGGの治療目標は「どのくらい腫瘍をおとなしくさせるか」であり,治癒を目指しているわけではない.ここには「やがて腫瘍増大が自然停止する」という認識がある.治療開発は化学療法を比較的長く続ける治療から,今後は分子標的薬が中心になる.治療効果のみでなく成長に影響を与えるような有害事象の検証も必要なことが,このような背景からも理解可能である.

  • 鈴木 智成, 福岡 真惟, 内田 栄太
    2026 年63 巻2 号 p. 145-151
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    びまん性内在性橋グリオーマ(DIPG)は小児脳腫瘍の中でも最も予後不良な疾患の一つであり,局所放射線治療以外に確立した標準治療はない.近年,ヒストンH3K27変化を中心とした分子病態の解明により,DIPGは分子診断に基づいて再定義され,診断と治療開発の考え方が大きく変化した.これに伴い,生検の意義が変化し,再照射の位置づけ,分子標的治療やエピジェネティック治療,CAR-T細胞療法,convection-enhanced delivery(CED)など,新たな治療戦略が急速に発展している.また,希少疾患である本疾患においては,臨床試験の基盤として国際レジストリおよび国内レジストリの整備が重要であり,本邦でもDIPG-2023が開始された.本稿では,DIPGの疾患概念の変化,診断戦略,治療開発の現状,ならびに日本における今後の課題について,当院の経験も踏まえて概説する.

シンポジウム4:ダウン症候群における造血異常に迫る
  • 西中 瑶子, 齋藤 潤
    2026 年63 巻2 号 p. 152-160
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    ダウン症新生児に特有の一過性骨髄異常増殖症(transient abnormal myelopoiesis: TAM)は,末梢血芽球増加を特徴とする前白血病状態であり,多くは自然寛解する一方,肝障害などで致死的となる例や,ダウン症関連急性巨核芽球性白血病(DS-AMKL)へ進展する例がある.TAMでは造血転写因子GATA1の体細胞変異により短縮型GATA1(GATA1s)のみが発現するが,異常増殖が最も強く誘導される未熟造血前駆細胞分画は十分に定義されていなかった.本稿では,iPS細胞を用いた段階的造血分化系により,TAM患者由来iPS細胞とゲノム編集対照株を時系列に解析し,CD34+CD43+CD235aCD11bCD71+CD41+の赤芽球・巨核系前駆細胞分画が主要な起源細胞であること,ならびに当該分画における転写プロファイルの異常がTAM様表現型に結び付くことを示した.

教育セッション2:腎腫瘍
原著
  • 岡田 恵子, 馬込 大貴, 山崎 夏維, 仁谷 千賀, 藤崎 弘之, 國廣 誉世, 坂本 博昭, 内藤 寿輝, 宮入 加寿也, 原 純一
    2026 年63 巻2 号 p. 164-171
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    びまん性橋膠腫(DIPG)は小児に発生する予後不良な脳幹部腫瘍である.近年,寡分割放射線治療(HFRT)やレディオミクス解析などの新たな治療法,評価法が報告されている.本研究は,DIPG患者27例を対象にHFRTの有効性とレディオミクス解析などによる予後因子の検討を目的に実施した後方視的単施設研究である.有効性評価項目は全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)であり,予後因子検討では患者背景因子およびレディオミクス特徴量のOSへの影響を評価した.11例が男性で診断時年齢(中央値)は6.2歳であり,23例がHFRTを受けた.HFRT群および通常の放射線治療(CFRT)群のOS(中央値)はそれぞれ9.0ヵ月と9.6ヵ月であった.OSに有意に影響する患者背景因子は腫瘍サイズ(連続変数)のみであり,腫瘍サイズ別の3つのサブグループでは,腫瘍サイズが大きい群でOSが長い傾向がみられた.一方,OSに有意に影響するレディオミクス特徴量は見出せなかった.HFRTを受けた患者のOSはCFRTを受けた患者と同程度であり,治療期間を1ヵ月短縮することができるHFRTを初期治療に選択することは患者の負担低減につながる.診断時の腫瘍サイズがOSに影響することが示唆されたが,MR画像に基づいたレディオミクス特徴量には影響するものがなかった.DIPGの予後因子のニーズは高く,さらなる研究が望まれる.

  • 大園 秀一, 林 三枝, 力石 健, 清谷 知賀子, 岩井 艶子, 大植 孝治, 佐藤 伊織, 石田 也寸志
    2026 年63 巻2 号 p. 172-179
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    【目的】日本小児がん研究グループ(JCCG)長期フォローアップ委員会で開発した「改訂フォローアップ手帳」(手帳)の使用経験の感想についてアンケート調査を実施した.

    【方法】手帳を受け取った小児がん患者・経験者(本人)・家族,及び小児がん診療施設の医師を対象にアンケートを実施した.「手帳が治療後の経過観察に役立つか?」「患者の健康管理意識が高まるか?」「使いやすいか?」「いつ渡すのが望ましいか?」の他,手帳の各項目について改善の必要性を質問した.

    【結果】本人21名,家族83名(計104名),医師36名から回答を得た.本人は男性52%,89%が治療終了しており,調査時平均年齢は本人回答において19.6±2.2歳,治療終了から7.0±3.1年経過していた.本人,家族,医師ともに8割以上が使用経験の感想を「経過観察に役立つ」「健康管理意識が高まる」「使いやすい」と回答した.適切な渡す時期について,いずれの立場でも「退院時」との回答が最も多かった.一方で本人や家族の約30%が「診断時」を選択したが,医師では0%であった.

    【考察】適切な渡す時期に関して,患者・経験者・家族が早期の受取り希望の傾向が認められた点は今後克服すべき課題であると受け止められた.今後記入省力化を目的としたデジタルコンテンツの開発により,速やかな手帳配布の実現に向けて活動を継続してゆく.

症例報告
  • 橋本 悠, 關中 佳奈子, 關中 悠仁, 川口 裕之, 工藤 耕, 今井 耕輔
    2026 年63 巻2 号 p. 180-184
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    congenital self-healing reticulohistiocytosis(CSHR)は,新生児期に発症する予後良好な皮膚限局ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)であるが,一部の症例で多臓器型LCHへの進展が報告されている.症例は,在胎37週で出生した一卵性双生児.出生時より両児に類似する皮疹が出現していた.第1児は皮膚生検でLCHと診断し,皮膚病変でBRAFV600E変異を検出したが末梢血では変異を検出しなかった.両児とも一時的なステロイド外用で皮疹は2か月程度で自然消退し,CSHRと診断した.4歳時点まで皮疹の再燃や新規病変を認めていない.病変部と末梢血でBRAF遺伝子変異解析を行うことが,病態評価および経過観察方針の検討に有用となりうることが示唆された.

  • 大河内 慎, 田中 文子, 栗田 大輔, 鈴木 徹臣
    2026 年63 巻2 号 p. 185-189
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    先天性血栓性血小板減少性紫斑病(congenital thrombotic thrombocytopenic purpura: cTTP)はa disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13(ADAMTS13)の責任遺伝子の病的バリアントによりその活性が低下し,微小血管内血栓をきたす遺伝性希少疾患である.幼少期に血小板減少を繰り返すことが知られているが,その減少と回復の詳細については報告が少ない.今回,感染症罹患時に軽微な出血症状を伴う血小板減少と貧血を認め感染回復時にはいずれも正常化するというエピソードを繰り返し,cTTPと診断された1歳6か月の幼児を経験した.診断に至るまでに4回の感染症エピソードがあったが,いずれも新鮮凍結血漿を投与せずに血小板数は速やかに増加し貧血も数日の経過で回復した.自然回復する血小板減少や溶血所見が乏しい場合にも本症を鑑別に挙げ,ADAMTS13活性とインヒビター測定を行うことが重要である.

  • 木﨑 顕, 阿部 春季, 今井 剛
    2026 年63 巻2 号 p. 190-193
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/16
    ジャーナル 認証あり

    過多月経を契機に精査した思春期女性3例において,low von Willebrand factor(Low VWF)を診断した.全例O型であり,Pictorial Blood-loss Assessment Chart(PBAC)スコアはいずれも日本人女性のカットオフとされる171点を大きく上回った.PBACは短時間で実施可能な客観的出血量評価法であり,画像検査で器質的異常を除外したうえでVWFレベルを複数回測定することは,思春期女性の過多月経に対する適切なスクリーニングとなり得た.また,tranexamic acidやdesmopressinを症例に応じて選択し,出血量の改善を認めた.過多月経を呈する思春期女性では,PBACとVWFレベルを組み合わせた評価がLow VWFの早期診断に寄与し,適切な治療選択に結びつく可能性が示唆された.

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