日本小児血液・がん学会雑誌
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第67回日本小児血液・がん学会学術集会記録
第5回女性・若手医師活動支援シンポジウム:女性医師や若手医師のキャリア支援
会長講演
  • 田尻 達郎
    2026 年63 巻3 号 p. 199-202
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    この度の学術集会のテーマは「全てのこどもの未来のために~For the future of all children~」といたしました.小児がんは,集学的治療(化学療法,外科療法,放射線療法)により予後が向上し,長期生存例が増加してきた一方で,治療関連障害もクローズアップされています.現在の小児がん医療に最も求められているのは,患者さんの20年後を見据えたQOLを重視した治療であると考えられており,全国の小児がん医療に携わる方々は,生命を救うだけでなく,将来像を考慮した患者さん一人ひとりに適した治療,および患者さんとそのご家族に真に寄り添ったケアを心がけていることと思います.

    また,これからの小児がん医療における外科治療を担う若手小児外科医の育成は重要な課題です.小児がん治療において外科療法は集学的治療の一部であり,決して独立した治療法ではあり得ません.手術を担当する小児外科医自身が,小児科や成人関連科も関わる治療全体を十分に理解し,疾患の分子的側面や長期合併症も考慮した上で,小児がん医療における外科治療戦略を構築すべきです.小児外科医自身が小児がんの基礎研究に携わることは,症例ごとの高度なテーラーメイド型治療につながると考えられます.

    「こころ,分子と未来におきてメスを構えるべし」との心構えの下,今後もリサーチマインドを持った小児外科医の育成を目指していきたいと思います.

会長企画3:小児がんの子どもに新しい薬を届けるために~みんなで考えるドラッグアクセス改善~
  • 早川 穣
    2026 年63 巻3 号 p. 203-206
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    小児がんは小児の主要な死亡原因であり,本邦では毎年2,000名以上が新規に発症する50種類以上の疾患から構成される希少疾患群である.わが国では急速な少子化に伴って患者数が年々減少している.成人がんとは腫瘍生物学的特徴が大きく異なることから,必ずしも成人がんの薬剤が小児がんの適応にならない.これらの特性は製薬企業の投資判断に不利に働き,小児がん薬の国内開発の停滞を招いている.本稿では,国内外における小児がん薬開発の現状,企業が直面する構造的課題,米国を中心としたインセンティブ制度,新興バイオ医薬品会社(EBP)の参入動向を整理し,日本で開発を促進するために必要な「予見性」の確保の重要性を論じる.さらに,製造販売後調査,レジストリー活用,医師主導治験体制,国主導の治験エコシステム構築等の政策課題を取り上げ,今後整備すべき方向性について提言する.

二学会合同シンポジウム:小児がん患者と家族の薬剤・環境曝露対策―正しく怖がるために―
  • ―子どもたちと家族の安心への架け橋―
    衛藤 智章
    2026 年63 巻3 号 p. 207-210
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    小児がん治療の中心である抗がん薬は,子どもたちの命を守るために不可欠である一方,強い毒性を有しており,患者本人だけでなく家族や医療従事者にも「曝露リスク」という新たな不安をもたらしている.近年は新規抗がん薬の開発や治療法の進展により,複数の抗がん薬を併用する多剤併用療法が主流となり,それに伴い曝露リスクも複雑かつ多様化している.

    今回の学会シンポジウムでは「正しく怖がる」をキーワードに,抗がん薬曝露リスクに対する正しい理解と日常生活で実践可能な対策を共有し,患者と家族が安心して治療を受けられる環境づくりを目指した.そのためには,子どもたちや家族にわかりやすく伝えるコミュニケーションの重要性を高める必要がある.本講演では,抗がん薬の種類や投与経路,剤型に応じた曝露対策の現状を整理し,家庭や入院生活において実践可能な対策の一例を紹介した.

    抗がん薬曝露対策には統一された基準がなく,どのような方法が最適であるかは明確ではない.しかし,過度な不安によって治療継続が困難になることを防ぐため,または無知であるが故の被害を防ぐため,医療現場で実践可能な取り組みを患者や家族と共に考えることは,がん診療に携わる薬剤師にとって重要な役割であると考える.医師や看護師など多職種との連携を通じて,子どもたちとその家族,そして医療従事者が抗がん薬曝露リスクを正しく理解し,適切な対策のもとで安心安全に治療に向き合うことができるようになることを期待する.

  • 野田 優子
    2026 年63 巻3 号 p. 211-216
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    小児がん治療に用いられる抗がん薬は,医療従事者のみならず,入院中の患児に付き添う家族にも曝露リスクを及ぼす可能性がある.本邦では抗がん薬の職業性曝露対策に関するガイドラインが整備されてきた.一方,小児領域では,家族が排泄,清潔,食事などの日常生活援助に加え,抱っこや遊び,スキンシップといった情緒的支援も担っており,曝露対策は一律には進めにくい.本稿では,抗がん薬曝露に関する基本的知見と既存の職業性曝露対策を概観したうえで,患児家族への曝露に関する知見,特に小児がん領域における特徴と課題を整理した.著者らの調査では,シクロホスファミド(cyclophosphamide;CPM)投与を受けた患児に付き添う家族の尿中からCPMが検出され,療養環境の複数箇所にもCPM付着が認められた.また,家族のケア内容とPPE装着状況を踏まえた解析では,抱っこ,遊び,タッチングなどの情緒的ケア場面において,PPEの未装着または不十分な装着状態で長時間接触することが曝露と関連する可能性が示唆された.今後は,患児の精神的安寧を損なうことなく,家族の安全を確保できる実践的な曝露対策の構築が求められる.

シンポジウム6:小児腫瘍に対して陽子線治療はどのように利用するべきか?
  • 斎藤 高
    2026 年63 巻3 号 p. 217-222
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    小児固形がんに対する陽子線治療は,標的以遠の線量を低減できる物理的特性により,晩期障害低減を期待して導入されてきた.一方,臨床で陽子線治療を用いる立場からは,正常組織線量を低減できるとしても,X線治療と同等の腫瘍制御が保たれるのかという問いが残る.本稿では,第67回日本小児血液・がん学会学術集会シンポジウムでの講演内容に基づき,Tsukuba Review Projectとして実施した小児固形がんの疾患別メタ解析を横断的に概説する.対象は横紋筋肉腫,神経芽腫,Ewing肉腫,髄芽腫,上衣腫,中枢神経系胚細胞腫である.既報データを統合した範囲では,多くの疾患で陽子線治療がX線治療に比べて生存・局所制御で明らかに劣ることは示されなかった.ただし,これらの解析は観察研究の集計データに基づき,症例選択,治療時代,照射範囲,併用療法などの交絡を完全には調整できない.陽子線治療の価値は,高い生存率を示すことよりも,腫瘍制御を維持しつつ正常組織線量を低減し,晩期障害を減らす可能性にある.今後は前向き登録研究と長期フォローアップにより,腫瘍制御,晩期有害事象,QOLを統合して評価する必要がある.

原著
  • 小森 紗希子, 山崎 夏維, 谷村 一輝, 仁谷 千賀, 岡田 恵子, 原 純一, 藤崎 弘之
    2026 年63 巻3 号 p. 223-230
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    先天性免疫異常症(inborn errors of immunity: IEI)に対する同種造血幹細胞移植の前処置として,従来は骨髄破壊的前処置(myeloablative conditioning: MAC)が主に用いられてきたが,治療関連毒性の高さが課題であった.強度減弱前処置(reduced-intensity conditioning: RIC)の導入により治療関連死亡は減少した一方,生着不全が新たな問題となった.近年,薬物動態学的モニタリング(therapeutic drug monitoring: TDM)によりブスルファン(busulfan: BU)の用量調整を行うTarget BUによる良好な成績が報告されているが,TDMの実施が困難な施設も少なくない.当院ではTDMを必要としない高用量メルファランを用いた前処置(FLU/MEL 180)を導入している.本研究では,2005年から2023年に当院で施行された骨髄不全症を除くIEIを主とした非悪性血液疾患に対する造血幹細胞移植25件(RIC 17件,MAC 4件,FLU/MEL 180 4件)を後方視的に解析した.生着不全は5件に認められ,いずれもRIC群で発生しており,MAC群およびFLU/MEL 180群では認められなかった.高用量メルファランを用いた前処置は,BUのTDMが困難な環境下において,IEIに対する移植前処置の選択肢の一つとなり得ると考えられた.

  • 吉良 晴子, 中川 慎一郎, 上田 耕一郎, 稲田 浩子, 大園 秀一
    2026 年63 巻3 号 p. 231-237
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    背景:近年,小児がん患者の両親における心的外傷後ストレス症状(Post-traumatic Stress symptoms: PTSS)が報告されているが,症状が持続する者における家族機能との関連については十分明らかにされていない.

    方法:対象は入院治療を経験した新規小児がん患者の両親.退院前(T1)と1年後(T2)の2回の時点で,Impact of Event Scale Revised(以下IES-R)によりPTSSを評価した.IES-R総得点25点を境に,症状高リスク群(高リスク群)と症状低リスク群(低リスク群)に区分し,T1とT2の両群の抑うつ,状態不安と特性不安,家族機能を比較し,前後の変化を検証した.

    結果:母親15名,父親13名.IES-R平均値は父親が25.5から16.9と有意に低下したが,母親は22.1から18.7と有意な低下を認めなかった.高リスク群の母親はT1時7名,T2時4名で,父親はそれぞれ6名と2名であった.T2に高リスク群の母親はIES-Rの覚醒亢進症状と家族機能の「役割」が有意に高値であった.高リスク群の父親では家族機能との関連は認められなかった.

    考察:高リスク群では,母親は家族の役割機能低下との関連が見出されたが,父親は家族機能との関連は見出されず,家族支援での母親の役割の重要性が認識された.

    結語:特にPTSS高リスクの母親については,入院中から家族内資源を把握し,退院後も継続的な家族支援を行う重要性が示唆された.

症例報告
  • 中島 理沙, 平林 真介, 寺下 友佳代, 長谷河 昌孝, 森川 俊太郎, 小笠原 卓, 本多 昌平, 河原 仁守, 天野 虎次, 外丸 詩 ...
    2026 年63 巻3 号 p. 238-243
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    小児の膀胱原発パラガングリオーマ(PGL)は極めて稀な疾患であり,診断に難渋することが多い.今回,排尿後の頭痛発作を契機に発見された10歳男児例を経験した.発作時に著明な高血圧を認め,血中および尿中のカテコラミン上昇,123I-MIBGシンチグラフィーで集積を示す膀胱腫瘍を確認した.α1遮断薬による血圧管理後,膀胱部分切除術を施行し,病理診断で中分化型の膀胱PGLと診断した.小児では遺伝性を有する割合が高いが,本症例では既知の遺伝学的異常は認めなかった.術後に症状は消失し,再発なく3年経過している.排尿後頭痛を呈する症例では膀胱原発PGLを鑑別に挙げる必要があり,発作時の血圧測定は診断の契機となりうる.

  • 雑賀 彩乃, 栗山 愛梨, 市川 貴之, 辻本 弘, 神波 信次, 徳原 大介
    2026 年63 巻3 号 p. 244-248
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    小児で稀な自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia: AIHA)の2例を経験したので報告する.症例1.1歳6か月男児,上気道炎の2週後に顔色不良,活気不良を主訴に受診,ヘモグロビン3.0 g/dLと著明な貧血を認めた.単特異直接クームス試験でIgG抗体陽性で温式AIHAと診断した.2回の赤血球輸血を要したがステロイドパルス療法で軽快した.症例2.2歳7か月男児,発熱,褐色尿のため受診.ヘモグロビン9.0 g/dL,尿潜血4+で,単特異直接クームス試験で補体陽性でDonath-Landsteiner試験から発作性寒冷ヘモグロビン尿症と診断した.寒冷暴露を避け経過観察で軽快した.2症例ともに末梢血塗抹標本で球状赤血球を認めたが,赤血球抵抗試験は正常でクームス試験陽性からAIHAの診断に至った.小児の溶血性貧血は遺伝性球状赤血球症などの先天性溶血性貧血が多いが,AIHAを鑑別する必要がある.AIHAは3病型に分類されるが,治療が異なるため各病型診断が必要である.

  • 大内田 史織, 白山 理恵, 柏原 やすみ, 伊藤 琢磨, 宮地 秀途, 宮本 智成, 水城 和義, 浅井 完, 守田 弘美, 齋藤 祐介, ...
    2026 年63 巻3 号 p. 249-254
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    近年,血友病治療は進歩しているが保因者へのケアは十分ではない.保因者の28%は凝固因子活性が40%未満であるが易出血性に気づかない例も多い.今回,7か月男児の血友病A診断時に,出血症状を有する女性親族を4名把握し保因者外来につなげることができた.一般的な家族歴聴取では出血性疾患の家族歴なしの結果であったが,ISTH/SSC Bleeding Assessment Toolを用いて,鉄欠乏性貧血,紫斑,過多月経,産後出血などの具体例を示すことで出血症状を有する女性を把握できた.発端男児の母方伯母は過多月経に対するトラネキサム酸内服で症状が改善した.保因者の適切なケアはQuality of Life向上につながる.血友病診断時は出血症状の具体例を示すことで詳細な家族歴聴取を行い,出血症状を有する保因者を把握し適切な医療ケアにつなぐことが理想的であると考える.

  • 松岡 正樹, 羽賀 洋一, 山岡 達宏, 有働 みどり, 高橋 浩之
    2026 年63 巻3 号 p. 255-260
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    症例は生後5か月時にリスク臓器陽性の多臓器型ランゲルハンス細胞組織球症(MS-LCH)と診断された女児である.初回治療に一時的に反応を示したものの,再増悪を認めたため救済療法を施行した.救済療法終了後,SARS-CoV-2,ノロウイルス,アデノウイルスの多重感染を発症し,進行性の血球減少および肝障害を呈した.これらの臨床経過と検査所見から二次性血球貪食症候群(HLH)と診断し,HLH-2004プロトコールに準じた治療に加え,トシリズマブ(tocilizumab)を含む免疫抑制療法を併用した.しかし,病勢は制御できず多臓器不全により死亡した.リスク臓器陽性のMS-LCH患児において再発・難治例に対する強力な免疫抑制治療により,ウイルス感染に対する易感染性を呈する.本症例は,複数のウイルス感染が引き金となりHLHを発症した可能性がある.LCH患児におけるHLH発症リスクや,早期診断および積極的な治療介入の重要性について過去の文献的考察を交え,本症例を報告する.

  • 木川 崇, 多賀 崇, 池田 勇八, 森宗 孝夫, 丸尾 良浩
    2026 年63 巻3 号 p. 261-266
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    8か月の男児.発熱で近医を受診し,汎血球減少を指摘され当院紹介入院となった.WBC 3300/μL,Hb 4.5 g/dL,PLT 2.6万/μLと汎血球減少を認め,骨髄検査で各系統に異形成,特に赤芽球系に巨赤芽球様変化を認めた.血清ビタミンB12が検出限界以下であり,ビタミンB12欠乏性巨赤芽球性貧血と診断した.現病歴や家族歴,生活歴を再聴取したところ,母は5年前に胃がんのため胃全摘術を受けていたが術後ビタミンB12補充はなく,児は完全母乳栄養で離乳食が進んでいないことが判明した.メコバラミンの内服により血球および骨髄の形態異常は改善したが,発達の退行と脳萎縮,てんかんを認めた.胃全摘後の母体由来のビタミンB12欠乏は,児に不可逆的な神経障害をもたらす可能性がある.本症例は,妊娠可能年齢女性への術後のビタミン補充の重要性と,産科・外科・小児科間の連携の必要性を示すものである.

  • 竹村 理璃子, 銭谷 昌弘, 堺 大地, 吉田 眞之, 野口 侑記, 松浦 玲, 梅田 聡, 松岡 圭子, 竹内 真, 長谷川 結子, 奈良 ...
    2026 年63 巻3 号 p. 267-271
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル 認証あり

    症例は陰茎肥大・恥毛の発育を認めた1歳10ヶ月の男児.血液検査と腹部造影CTから,左副腎原発のアンドロゲン産生腫瘍と診断し,腹腔鏡下左副腎腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的所見では小児例であり,Wienekeの基準に基づいて良性の副腎皮質腫瘍と診断されたが,免疫組織化学染色にてp53陽性標識率が90%以上と高値で非定型的であった.術後補助療法は行わず,慎重な経過観察を行っている.術後にテストステロン値は測定感度未満まで低下し,術後20ヶ月の画像検査でも再発所見は認めていない.遺伝学的検査を行ったところ,生殖細胞系列のTP53に病的バリアント(c.733G>A,p.Gly245Ser)をヘテロ接合性に同定し,Li-Fraumeni症候群と診断した.小児副腎皮質腫瘍では,他臓器より良悪性の診断に難渋する.非定型例では,悪性を考慮した経過フォロー及び遺伝学的検査を検討する必要がある.

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