臨床研究における同意取得の方法が多様化しつつあるなかで,小児がん長期フォローアップ研究における同意取得のあり方については,今日確立されているとは言えない.研究参加時の同意は代諾者によって行われることが多いが,長期フォローアップを実施する過程で,自己による意思決定が尊重される年齢に達した時点で患者本人からの同意の取得が必要となる.これに対応するためには,非対面で実施可能な同意取得方法について検討する必要があり,人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針において言及されている「電磁的方法によるインフォームド・コンセント」を研究の内容と利用するシステムのセキュリティの強度に応じて採用するのが望ましいと考える.
また,電子的データ集積システムを用いた同意取得は,システム上で個人情報の管理を行うということを意味するため,それを可能とする堅牢な情報セキュリティ基盤が必要である.これに対応するために,「Safeサーバー」を構築した.
上記の課題に取り組むために,現在がん対策推進総合研究事業の一環として,通称「長期フォローアップ松本班」による全国長期フォローアップ体制の構築計画が進行中である.本稿ではその活動の一環としての電磁的同意取得のあり方の提言を行い,その基盤となる情報セキュリティ体制について述べる.
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