日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
Print ISSN : 2187-011X
ISSN-L : 2187-011X
最新号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
第66回日本小児血液・がん学会学術集会記録
会長シンポジウム:AYA世代の臨床試験を考える
  • 石川 裕一
    2026 年63 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    急性骨髄性白血病(AML)のうち,t(8;21)(q22;q22)/RUNX1::RUNX1T1やinv(16)(p13.1q22)/t(16;16)(p13.1;q22)/CBFB::MYH11を有するAMLは,その特徴的な病態よりCore-Binding Factor(CBF)-AMLと総称され,若年者に高頻度で認められ,AML予後分類では予後良好群に分類されている.しかし,依然として約40%が再発し,予後改善の課題が残されている.近年の包括的遺伝子解析により,CBF-AMLはRUNX1::RUNX1T1陽性例とCBFB::MYH11陽性例で併存する遺伝子異常が異なることが明らかとなった.治療においては,シタラビン大量療法(HD-AraC)による地固め療法が標準であり,Gemtuzumab ozogamicin(GO)の併用による再発抑制効果や,KIT阻害活性を持つチロシンキナーゼ阻害薬の臨床試験も進められている.また,キメラ転写産物を用いた微小残存病変(MRD)モニタリングの有用性が報告され,予後予測や治療層別化に寄与している.今後,遺伝子変異情報とMRD評価を統合したリスク層別化に基づく治療戦略の確立,分子標的療法薬の併用などによる,CBF-AMLの再発率低減と長期生存率のさらなる改善が期待される.

シンポジウム7:小児血栓止血学の基礎と臨床UP-TO-DATE
  • 冨樫 朋貴, 大森 司
    2026 年63 巻1 号 p. 9-14
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    先天性血栓止血性疾患では,凝固・抗凝固バランスの破綻によって出血または血栓症を呈する.血友病をはじめとする出血性疾患では,従来のタンパク質補充療法に代わる根治的治療として,アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療が実用化されつつある.血友病に対するAAVベクター遺伝子治療薬はすでに欧米で承認され,単回投与で長期的な止血効果を得られることが示されている.一方,小児では肝臓の成長に伴う遺伝子発現の減弱が課題となり,安定した治療効果の維持は依然として難しい.このような背景のもと,血友病に対して,CRISPR/Casを用いたゲノム編集技術を応用した次世代治療が注目されている.遺伝子ノックアウト・ノックインだけでなく,切らないゲノム編集技術である塩基編集・プライム編集技術の適用が報告されている.さらに,これらの肝臓を標的としたゲノム編集技術は,先天性プロテインC欠損症や尿素回路異常症など,他の疾患にも応用可能であり,種々の疾患に対してゲノム編集による疾患の根治を目指した治療の可能性が示されつつある.

シンポジウム8:小児がん外科治療に応用可能なminimal invasive approach
  • 菅原 俊祐
    2026 年63 巻1 号 p. 15-19
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    IVR(interventional radiology:画像下治療)は,画像を参照しながら針やカテーテルなどを用いておこなう低侵襲治療の総称である.小児がん診療においては,診断,治療,症状緩和のいずれの段階でも活用できる.画像ガイドにはCTやX線透視,超音波などが用いられるが,小児では特に放射線被ばくを最小化する取り組みが重要である.IVRには多様な手技があり,各症例の病態生理と解剖学的特徴を的確に把握することで,様々な状況に応じて有効な抗がん治療や症状緩和につなげることできる.

総説
  • 佐藤 聡美, 瀧本 哲也, 加藤 実穂, 大六 一志
    2026 年63 巻1 号 p. 20-26
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    小児がん経験者(childhood cancer survivors; CCS)にみられる晩期合併症の一つである認知機能障害は,学業や就労など生活の質に長期的な影響を及ぼす可能性がある.しかし本邦においては,支援計画を策定するための体系的な評価が十分に行われていない.そこで本稿では,小児がん治療後に生じやすい認知機能障害として,①知的機能の全般的な低下,②注意とワーキングメモリーの障害,③処理の自動化の障害,④実行機能障害,の4点を概説した.さらに,ウェクスラー知能検査における得点パターンについて述べるとともに,認知機能障害の原因およびリスク因子について5つの観点から整理した.これら4つの障害のうち,①②③はウェクスラー知能検査によって検出可能であり,④はそれに加えてDas–Naglieri Cognitive Assessment System(DN-CAS認知評価システム)による評価が有効である.知能検査の結果は,必ず被検者の日常生活における適応状況と照らし合わせて解釈する必要がある.検査にあたっては,検査者が事前に,医師とともに疾患の特性や治療内容,個人要因,社会環境,その他の晩期合併症などのリスク因子を共有し,それらを踏まえた上で評価を行うことが求められる.

原著
  • 廣田 恵璃, 栁町 昌克, 樋口 紘平, 三谷 友一, 岡田 恵子, 齋藤 敦郎, 日野 もえ子, 橋井 佳子, 梅田 雄嗣
    2026 年63 巻1 号 p. 27-32
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    【緒言】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行に伴い,2020年4月より特別対応として日本骨髄バンクから提供される骨髄・末梢血幹細胞液の凍結保存が認められ,凍結保存細胞を用いた同種造血細胞移植(HCT)が実施されたが,小児同種HCT例における影響についてまとまった報告がない.

    【方法】日本小児がん研究グループ・血液腫瘍分科会の加盟施設で移植症例登録があった施設に対してアンケート調査を行った.

    【結果】アンケート回答率は77%(53/69施設)であった.細胞保存液などの細胞凍結保存手技について施設間の違いを認めた.実臨床における細胞凍結保存に関しては,COVID-19流行後,非血縁者間骨髄移植は36/185(19%),非血縁者間末梢血幹細胞移植は5/11(45%),血縁者間骨髄移植は12/141(9%)といずれも凍結件数が増えた.非血縁者間骨髄移植において凍結保存の有無でday 28の生着率に差はなかった(凍結保存有:89% vs. 無:93%,p=0.50).

    【考察】COVID-19流行により移植細胞の凍結件数が増加したが,凍結保存の有無で生着率に差がなかったことは,今後の凍結保存の選択に参考になると考えられる.細胞凍結保存法の質の向上と均てん化も今後の課題と考えられた.

  • 歌野 智之, 髙橋 勇人, 後藤 清香, 柴田 映子, 関口 昌央, 坂口 大俊, 牛腸 義宏, 井口 晶裕, 富澤 大輔, 松本 公一, ...
    2026 年63 巻1 号 p. 33-38
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    ブリナツモマブの投与開始初期は入院治療が必要であるが,その後は外来通院による在宅投与が可能である.我々は在宅投与を可能にするため,携帯型輸液ポンプであるContinuous Ambulatory Delivery Device(CADD)を用いてブリナツモマブの投与を行っている.本研究では,CADDを用いたブリナツモマブ投与に関連するトラブルを明らかにし,より適切な投与方法を見出すことを目的とした.2019年12月から2025年4月までに国立成育医療研究センターでCADDを用いてブリナツモマブが投与された小児患者21例(46サイクル)を対象に,ブリナツモマブ投与時のトラブルと対策について診療録を用いて後方視的に調査を行った.年齢中央値は8.4歳(範囲0.9~15.8),1人当たりのブリナツモマブ投与の中央値は2サイクル(範囲1~6)であった.合計46サイクルで認められたトラブルは,輸液ラインの接続外れ(n=11),血液の逆流(n=11),電池またはバッテリーの不具合(n=6),フィルターからの液漏れ(n=2),輸液ライン内の空気混入(n=2)であった.輸液ラインの接続外れは,接続箇所を定期的に確認する手順書を作成したところ,発生頻度は29サイクル中9サイクル(31%)から17サイクル中2サイクル(12%)へ改善した.血液の逆流は,輸液ラインの固定位置を調整することで改善した.CADDを用いたブリナツモマブ投与は,投与時に起こりうるトラブルを事前に把握し予防策を講じることで,より安全に投与することが可能である.

  • 力石 健, 萩野 麻緒, 鈴木 資, 南條 由佳, 小沼 正栄, 佐藤 篤, 今泉 益栄
    2026 年63 巻1 号 p. 39-44
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    小児免疫性血小板減少症(ITP)治療は近年大きく変化している.本研究では当院で診療した初発時20歳未満のprimary ITP患者183名を対象に,治療選択と入院期間の変遷およびその要因を後方視的に検討した.

    対象と方法:2004年4月~2025年3月に当院にてprimary ITPとして診療された183名を,開院後10年間を期間A,続く11年間を期間Bに分類し,診療録から患者背景,初回治療内容,骨髄検査の有無,リツキシマブ・TPO RAなどの二次治療薬使用状況,延べ入院日数を抽出して比較解析を行った.

    結果:患者背景に有意差はなかったが,prednisolone使用率は期間Aの55.4%から期間Bで25.3%へ減少し,intravenous immunoglobulin(IVIG)使用率は29.3%から56.0%へ増加した.骨髄検査を行った患者の割合は79.1%から53.8%へ低下し,期間Bでは二次治療以降でリツキシマブ・TPO RAが使用されていた.入院期間中央値は10.0日から6.0日へ短縮し,多変量解析ではIVIG初回群でより短縮傾向が認められた.

    考察:IVIGの迅速な効果発現,侵襲的検査の省略,二次治療薬の普及に加え,「HRQoL最適化」を重視する診療方針への転換が,入院負担の軽減と患者・家族のHRQoL向上に寄与したと考えられる.今後は小児ITP特化のHRQoL評価ツールの臨床導入が急務である.

症例報告
  • 根本 悠里, 矢本 真也, 野村 明芳, 三宅 啓, 福本 弘二
    2026 年63 巻1 号 p. 45-50
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    腹腔内デスモイド腫瘍の多くは,家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)と関連していることが知られている.今回,FAPの所見を伴わない腹腔内デスモイド腫瘍の一例を経験した.症例は12歳の女児,主訴は腹痛,近医での腹部超音波検査で径14 cmの腹腔内腫瘤を指摘され当科紹介となった.画像所見より大網血腫もしくは平滑筋腫を疑い,腹痛が軽快しないため手術を施行した.腫瘍は周囲臓器(胃,上行結腸-下行結腸,膵前面)に浸潤しており,腫瘍全摘のために幽門側胃切除および上行結腸から下行結腸の大腸切除,膵部分切除,胃空腸吻合,結腸-結腸吻合を施行した.術後病理診断でデスモイド腫瘍の診断となった.下部消化管内視鏡検査ではポリープを含めた異常所見は認めず,FAPを疑う家族歴も認めなかった.術後2年間Celecoxibを内服し,5年間無再発で経過している.FAPの所見を伴わない腹腔内デスモイド腫瘍の治療方針は確立されていない.再発のリスクの高い腫瘍であり,患者ごとの治療検討と長期フォローアップが必要である.

  • 田中 邦昭, 神鳥 達哉, 岩井 篤, 小林 健一郎, 岡本 晋弥, 才田 聡, 滝田 順子, 宇佐美 郁哉
    2026 年63 巻1 号 p. 51-55
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    Gliomatosis Peritonei(GP)は,卵巣未熟奇形腫(ovarian immature teratoma; OIT)に合併する成熟glia組織からなる結節病変であるが,その由来は未解明である.今回我々は,OITとGPの両組織の全エクソーム解析を行い,それらの関連性について解析した.症例は14歳女子.腹部膨満を主訴に受診し左OITと診断された.左卵巣腫瘍摘出術後13か月で腹腔内に多発するGPの発症を認めた.コピー数解析で,両組織とも全染色体に及ぶcopy neutral loss of heterozygosityを検出しそのパターンは共通していた.遺伝子変異解析では,各々の組織に腫瘍の発生進展に関わるdriver変異とは異なる体細胞変異が独立して獲得されていた.我々の解析からOITとGPは共通のancestral cloneに由来することが示唆され,OITとGPの表現型の違いを決定する因子についてさらなる解析が必要と考えられる.

  • 矢野 未央, 田村 真一, 友安 千紘, 中村 さやか, 森 健, 副島 俊典, 飯島 友加, 堀部 敬三, 三浦 昌朋, 石田 宏之
    2026 年63 巻1 号 p. 56-60
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    症例は10歳男児.ALK陽性未分化大細胞性リンパ腫(ALCL)の中枢神経(CNS)再発に対し,再寛解導入療法と全脳・全脊髄陽子線照射後に同種骨髄移植を行ったが,移植後12週で分子生物学的再々発を認めた.CNS再発は中枢への薬剤移行性の制約などが課題であり,確立した治療法はない.本例ではアレクチニブの内服を導入し,ヒドロコルチゾン・シタラビンの髄注の併用および免疫抑制剤中止により,再度NPM::ALK fusion PCRは陰性化し移植後4年間の寛解を維持している.アレクチニブは髄液移行性に優れ,CNS病変に対する分子標的薬として有効性が期待される.本症例はCNS再発ALK陽性ALCLにおいてもアレクチニブを組み込んだ治療が長期予後改善に寄与し得ることを示唆する.再発・難治例を中心に,薬物動態評価も含めたより適切な使用方法の構築のための検討が望まれる.

  • 田村 真一, 谷掛 雅人, 内藤 優樹, 友安 千紘, 矢野 未央, 武田 昌克, 大津 修二, 角山 正博, 香月 奈穂美, 岸本 光夫, ...
    2026 年63 巻1 号 p. 61-66
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/15
    ジャーナル 認証あり

    急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)による悪性上大静脈(superior vena cava, SVC)症候群(SVC syndrome, SVCS)に対し,症状緩和のためステント治療を行った.症例はAMLの13歳の男児.HLA半合致の母より末梢血幹細胞移植を施行後,維持療法を行っていたが,9か月後に縦隔腫瘤を形成して再発した.腫瘤の増大によりSVCSを呈し,両上肢の強い浮腫と呼吸困難が出現した.放射線治療により数日で腫瘤は縮小したが,症状の改善は見られなかった.左右の腕頭静脈からSVCの狭窄部にステントを留置し血管形成術を行ったところ,速やかに症状は改善した.血管形成術から3か月後に白血病が進行し永眠されたが,ステント留置部位の血流は維持され,最期まで両手を自由に使うことができた.ステント治療は,SVCSに対する有用な緩和的治療法の一つであり,担がん患者のQOLを向上させうると考えられる.

報告
feedback
Top