日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム7: Treatment strategy for childhood ALL
小児急性リンパ性白血病治療の現在の課題と今後の方向性
加藤 元博
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2016 年 53 巻 2 号 p. 80-83

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抄録
小児急性リンパ性白血病の治療成績はこの数十年で大きく向上した.治療骨格の最適化や層別化治療の導入などにより,長期生存率は90%を達成し,小児急性リンパ性白血病は不治の病ではなくなった.しかし,まだ再発や合併症死亡を完全に回避できておらず,治癒例においても晩期合併症をきたす例が一定の割合で存在する.長期生存率が改善してきたからこそ,残されたこれらの課題への取り組みが重要視される.これまでの成功の道筋を振り返ると,新たに同定された分子異常を予後因子として用いることや,微小残存病変の評価に基づいて層別化治療をさらに適正化することがまず目指す方向であるが,加えて,分子標的療法による標的治療を応用することや,免疫機構を利用した新薬の開発などを通じ,「再発を抑制する」と「合併症を最小化する」という相反する目的を同時に達成することが目指すべき方向であろう.また,90%以上の優れた生存率を達成した現在,単に生存率だけで治療の優劣を評価するのではなく,治療中・治療後などの生活の質もあわせて評価基準とすることも必要である.今後,思春期・若年成人までこの成功を外挿することや,達成した治療成績を支えてきた中央診断・中央検査の経済的基盤を維持することも大きな課題である.
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© 2016 日本小児血液・がん学会
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