日本小児血液・がん学会雑誌
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多診療科シンポジウム(教育セッション): 造血幹細胞移植
造血幹細胞移植後の晩期合併症とQOL
石田 也寸志
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2016 年 53 巻 3 号 p. 231-238

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抄録

小児では成人と比較して移植成績が良好で長期生存率が高く,生存期間も長いことから,成人以上に移植後長期フォローアップ (FU) の重要性が高い.移植後の晩期合併症には,全身照射と大量化学療法のいわゆる前処置に伴うものと慢性Graft versus Host Disease(GVHD)によるものと大きく二つの機序がある.移植群では40%以上にやせが見られ,低身長の頻度は非移植群の2倍となり,晩期合併症は78%(非移植群45%)の高率に観察される.呼吸障害は生命予後に関わる重要な合併症で,内分泌障害が高率に生じ成長障害・甲状腺機能障害が主なものである.骨髄破壊的移植後の性腺機能障害は高率で不妊率も極めて高く,今後妊孕性に関する配慮が必要である.移植後は二次的免疫不全となるためワクチンの再接種は不可欠である.二次がんとしては,移植後の固形腫瘍累積発症率が高く,発症には慢性GVHDと放射線治療が関わっている.移植後のQOLを評価した研究も増加しており,本邦でも31施設が参加し患者調査用紙と医師用調査票が464組で回収される大規模な研究が行われ解析が進んでいる.本邦でも日本造血細胞移植学会が中心となり長期FUガイドラインが作成中であり,長期FU体制整備と移植後早期の積極的な晩期合併症スクリーニングと介入,健康教育の普及が進むことが期待される.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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