日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
腹腔内出血で発症し,塞栓術に続いて一期的腫瘍摘出術を行った神経芽腫の1例
東間 未来山本 裕輝小森 広嗣広部 誠一湯坐 有希金子 隆藤田 和俊河野 達夫
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2016 年 53 巻 3 号 p. 277-280

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抄録

今回,我々は腹腔内出血から出血性ショックに至った右副腎原発の進行神経芽腫症例を経験した.症例は18カ月男子で,出血性ショックに対して腫瘍血管塞栓術を施行した.右中副腎動脈のextravasationを確認し,これを塞栓した.その後も断続的に出血が続いたため塞栓術を繰り返したが,3回目の血管造影では出血点を確認できず,一期的腫瘍摘出術を選択した.腫瘍は肉眼的に全摘し,術後化学療法と末梢血幹細胞移植を行って寛解退院した.以後4年間の無病生存を得ている.

神経芽腫からの出血はoncologic emergencyの一つとして常に念頭に置いておかなくてはいけないものである.特にN-myc増幅例では出血のリスクが高いとされており,化学療法中に腫瘍出血を来す例も散見される.このような状況下での止血法として塞栓術は小児においても有効であった.小児悪性腫瘍の分野での今後の適応拡大が期待される.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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