日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム1: Germline and somatic gene abnormalities in childhood neoplasms
難治性小児固形腫瘍における統合的ゲノム解析
~胸膜肺芽腫と横紋筋肉腫を中心に~
関 正史
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2016 年 53 巻 5 号 p. 342-348

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抄録

近年急速に進歩を遂げた網羅的ゲノム解析技術により,腫瘍における遺伝子変異のスクリーニングが可能となっているが,これまで報告されている遺伝子変異は体細胞変異のみならず,生殖細胞変異の関与も含まれる.本稿においては,難治性小児固形腫瘍である胸膜肺芽腫(Pleuropulmonary blastoma, PPB)と横紋筋肉腫(Rhabdomyosarcoma, RMS)における網羅的なゲノム解析結果について概説する.

PPBは極めて稀な悪性度の高い小児肺腫瘍であり,PPBを発症した家系よりDICER1変異が同定された.しかし,家族歴のない散発性PPBも知られており,散発性PPBにおけるゲノム異常の報告はなされていなかった.我々の研究により,散発性PPBでは67%でDICER1の両アレル異常が認められ,さらにDICER1のミスセンス変異はRNase IIIbドメインに集中し,散発性PPBとしての新規hotspotが同定された.

また,RMSは近年の化学療法の進歩により,転移を認めない症例では75%以上の生存が得られるが,転移もしくは再発例では予後不良であり,新規治療法の検索や予後に応じた治療の最適化が求められている.我々の研究により組織型,遺伝子異常,予後と相関するDNAメチル化情報に基づいた新規病型分類が提唱され,これまで比較的予後は良いとされていた胎児型RMSから予後不良な群が抽出された.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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