2017 年 54 巻 1 号 p. 50-53
症例は入院時11か月の男児.横紋筋肉腫に対する化学療法中にサイトメガロウイルス(CMV)抗原血症を合併した.ガンシクロビルを投与開始したが,抗原の陰性化は得られなかった.ホスカルネットに変更するも陰性化せず,ホスカルネットを併用しながら化学療法を継続した.この間2度眼底を検査したが異常は認めなかった.全ての化学療法を終えた時期に3回目の抗原血症の増悪をきたした.眼底検査で両眼に出血を伴う滲出性病変や硝子体の混濁を認め,CMV網膜炎と診断した.再度ガンシクロビルに変更し眼底所見は改善した.化学療法終了後,免疫学的回復に伴い抗原の陰性化が得られたが,最終的に左眼は視機能を失った.CMV網膜炎は移植以外でも合併することがあり,化学療法中の免疫状態に注意しながら頻回な眼底検査を要すると考えた.