日本小児血液・がん学会雑誌
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会長講演
小児がん治療における外科の役割
黒田 達夫
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2017 年 54 巻 2 号 p. 97-100

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抄録

われわれは小児固形がんの外科治療においても微小転移,腫瘍細胞動態の制御が重要であると考え,神経芽細胞腫でtyrosine hydroxylaseを分子マーカーとしたRT-PCR法による腫瘍細胞の検索方法を開発し,検索結果と予後との関係を検討してきた.単一施設における解析では,末梢血液中の循環腫瘍細胞の存在や骨髄に残る化学療法抵抗性の腫瘍細胞の存在は,MYCNとは独立した有意の予後不良因子であった.一方で肉眼的な腫瘍遺残は,放射線照射等の併用により局所の腫瘍増殖が制御できていても全身の播種性再発と相関性が高く,根治的外科切除は長期生存の必須条件と思われた.こうした播種性再発の機序には化学療法や放射線治療に抵抗性の腫瘍幹細胞の関与も考えられた.治療技術の進んだ今日でも,高リスク小児固形がんの治療成績は頭打ちであり,このような症例には強力な治療を選択せざるを得ない現状が続いている.治療の強化は二次がんも含めた重大な晩期合併症を併発する.外科治療の選択にあたっては,局所の強化治療が後に大きな問題を遺すことを良く理解し,また不可視の腫瘍細胞の動態を十分に考慮して術式を決定すべきであると考える.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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