2017 年 54 巻 3 号 p. 208-213
多臓器型小児ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)の治療成績はこの20–30年で劇的に向上したが,再発と不可逆的病変を減少させ,治療関連毒性を最小限にとどめる治療戦略が望まれる.
組織球症学会による臨床試験ではビンブラスチンとステロイド剤(PSL)併用が標準的治療とされてきた.LCH-III研究では,リスク臓器浸潤なし(RO–)群で治療期間の延長の有用性を検証するランダム化試験が行われ,治療期間延長の有効性が認められた.
本邦のJLSG-96/02試験では寛解導入療法にシタラビン/ビンクリスチン/PSLを用いている.寛解導入療法のPSL増量と治療期間を54週間に延長して治療を強化したことで,無再発生存率はJLSG-96の28.8%からJLSG-02の57.6%と改善を認めた.5年生存率はリスク臓器浸潤あり(RO+)群で91.7%,RO–群で100%と欧米に比して良好な成績であった.
一方,RO+群で初期治療に反応不良な例の生命予後は不良である.難治例に対してクラドリビンとシタラビン併用療法やクロファラビン投与,また造血幹細胞移植(HSCT)の有効性が報告されている.本邦の小児LCHに対するHSCTの後方視的研究の進捗状況も報告する.
小児LCHにおいては,治癒後の長期的な生活の質を妨げる晩期合併症を減らすことも重要な課題であり,BRAF阻害剤など分子標的薬の導入なども今後期待される.