日本小児血液・がん学会雑誌
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優秀演題セッション
網羅的ゲノム解析による肝芽腫の遺伝学的多様性の解明と新規治療標的の同定
関口 昌央滝田 順子
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2019 年 56 巻 5 号 p. 361-369

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抄録

肝芽腫は小児に発生する肝悪性腫瘍の大部分を占めているが,臨床的予後不良因子を有する高リスク肝芽腫はいまだに治療成績不良である.しかしながら,肝芽腫の高リスク群を規定する分子遺伝学的メカニズムは十分に解明されていない.今回我々は肝芽腫の分子基盤解明を目的として,59例の腫瘍検体を収集し,DNAメチローム解析,RNAシーケンスを含むマルチオミックス解析を行った.その結果,肝芽腫はDNAメチル化のパターンにより3群に分類され(F, E1, E2),それらは病理像,発症年齢,予後といった臨床的特徴とよく相関していた.F群は多くが胎児型の病理像を呈し予後良好だったのに対し,E1/E2群は多くが胎芽型/混合型の病理像を呈し,予後不良であった.E1/E2群は遺伝学的にHNF4A/CEBPA結合領域の高メチル化,それに伴う未分化な発現プロファイル,高頻度のコピー数増加,Cell-cycleパスウェイの亢進,そしてNQO1ODC1の高発現といった特徴を有していた.特にODC1はポリアミン合成や細胞増殖に重要な役割を果たす分子であり,実際にODC1高発現の肝芽腫細胞株を用いてODC1阻害実験を行ったところ,細胞増殖が有意に抑制されたことから,高リスク肝芽腫において高悪性度に寄与すること,また治療標的たりうることが示された.以上より,DNAメチル化プロファイルに基づく分類は肝芽腫の高リスク群の分子基盤解明と治療標的同定に有用であった.

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© 2019 日本小児血液・がん学会
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