日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
当院における小児頭蓋外胚細胞腫瘍63例の臨床的検討
原田 和明齋藤 武照井 慶太中田 光政小松 秀吾秦 佳孝工藤 渉吉田 英生
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キーワード: 頭蓋外胚細胞腫瘍
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2020 年 57 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

胚細胞腫瘍は胎生期の原始胚細胞が胚細胞になるまでの間に発生してくる腫瘍と考えられており,その種類や悪性度は様々である.しかし,本邦における小児頭蓋外胚細胞腫瘍に関するまとまった報告は少ない.我々は,2003年から2017年までの間に当院で治療した頭蓋外胚細胞腫瘍63例について,後方視的に臨床学的特徴と治療経過を検討した.診断時年齢の中央値は6.6歳(日齢10–14歳),原発部位は卵巣40例,精巣9例,仙尾部7例,縦隔7例であった.組織学的分類では成熟奇形腫41例,未熟奇形腫6例,卵黄嚢腫瘍11例,複合組織型3例,絨毛癌1例,組織型不明1例(脳転移・頭蓋内出血により生検未施行)であった.成熟奇形腫摘出後の再発例を含めた13例の悪性胚細胞腫瘍に対して白金製剤をベースにした化学療法を施行し,11例(85%)で寛解が得られた.悪性胚細胞腫瘍は化学療法に対する感受性が高く,再発例に対しても化学療法が奏功する.また,術前化学療法により腫瘍縮小が得られることが多く,自験例においても術前化学療法により腫瘍の完全切除を達成できた症例を経験した.巨大な腫瘍や腹膜播種を伴い初回手術時に完全切除が困難と考えられる症例に対しては,「化学療法+遅延手術」を選択肢の一つとして考えるべきである.

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© 2020 日本小児血液・がん学会
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