Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
原著
終末期がん患者のせん妄ケアを実践している看護師のアセスメントの視点
青木 美和荒尾 晴惠
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2017 年 12 巻 2 号 p. 203-210

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Abstract

研究目的は,終末期がん患者のせん妄ケアを実践している看護師が,どのようなアセスメントを行っているのかを明らかにすることである.がん看護専門看護師と緩和ケア認定看護師6名を対象に各2回の半構造化面接を行い,質的内容分析の手法を参考に分析した.その結果,看護師は,[直観と知識を擦り合わせたせん妄発症リスクの捉え]によるせん妄予防のためのリスクアセスメント,[せん妄の発症リスクに基づく早期発見に必要な情報の吟味][出現している症状がせん妄であるかどうかの判別]によりせん妄だと決定づけるアセスメント,[すでに出現しているせん妄の要因の探索][せん妄と判断してから行うせん妄の全体像の把握][せん妄の症状体験の意味づけ]によりせん妄の様相を捉え,患者の体験を理解するためのアセスメントを行っていた.終末期がん患者のせん妄ケアの質の向上のため,このアセスメントの段階に沿った教育的介入のあり方が示唆された.

緒言

せん妄は,緩和ケア病棟入院時に3~4割の患者にみられ,死が迫ると更に出現頻度は高くなる13).終末期がん患者にせん妄が出現すると,身体症状の評価4)や意思決定5)を困難にし,患者の望む生活や治療を妨げる可能性がある.患者だけでなく家族にも苦痛や負担となる68)せん妄は,緩和ケアの実践上見逃すことのできない課題である.患者の1番身近で関わる看護師は,終末期のせん妄を発見し,適切なケアに導く重要な役割を担っている.

せん妄の発見を目的として,看護師が用いるせん妄のスクリーニング尺度があるが911),終末期がん患者を対象とした尺度はみられない.加えて,看護師の知識不足12)や,アセスメント能力の不足によって,尺度を用いても正確なせん妄の発見に結びついていない現状13)も指摘されている.また,非構造的なアセスメントは,終末期がん患者のせん妄症状を観察する際の看護師の不確かさや不安を招き,患者への適切なケアの妨げとなる14).看護師が,せん妄を発見し,適切なケアを行うために,構造的なアセスメントが重要となる.

そこで,本研究は,終末期がん患者のせん妄ケアを実践している看護師が,どのようなアセスメントを行っているのかを明らかにすることを目的とした.終末期がん患者のせん妄のケアに至るまでの看護師のアセスメントが明らかになれば,看護師への教育的介入の基礎資料が得られ,終末期がん患者へのせん妄ケアの質の向上に寄与できると考える.

方法

1 研究デザイン

本研究は,質的帰納的研究デザインである.目に見えない看護師の思考過程を明らかにするため,看護師が語るアセスメントおよびその過程の文脈に焦点を当て,看護師が意図的に行うアセスメントだけでなく,語ることで新たに生じたメッセージの本質的な意味を見出す必要があると考えた.Krippendorffの内容分析は,文脈から推論を導き出すことを重視し,メッセージのシンボリックな意味を探る手段であるという特徴がある15).そのため,本研究の目的を明らかにするために適した手法であると考えた.

2 用語の操作的定義

終末期がん患者のせん妄:緩和ケア病棟に入院した終末期がん患者に発症する,意識障害を主体とした複数の精神症状を伴う状態であり,その治癒過程における可逆性・不可逆性は問わない.

3 対象者の選定 

1)対象者の選定基準

次の(1)~(4)の全項目に該当する者を対象者とした.

(1)がん看護専門看護師,緩和ケア認定看護師,がん性疼痛看護認定看護師のいずれかの資格を有する看護師

(2)ホスピス病棟または緩和ケア病棟に5年以上所属している者

(3)終末期がん患者のせん妄ケアに携わった経験を有する者

(4)看護師長および副師長以外の臨床看護師

2)対象者数の根拠

Benner16)は,「達人看護師は,膨大な経験を積んでいるので,多くの的外れの診断や対策を検討するという無駄をせず,一つひとつの状況を直観的に把握して正確な問題領域に的を絞る」と述べている.本研究の対象者を,緩和ケア病棟で5年以上の臨床経験を有する専門看護師および認定看護師とすることで,正確かつ質の高いデータが得られると考えた.また,質的研究では,「データの質と豊かさが高ければ高いほど,その研究領域でのデータの飽和を達成するのに必要である参加者は,より少なくなる17)」ため,6名でデータの飽和が達成できると考えた.

3)対象者の選定手順

研究者のネットワークから選定基準を満たす候補者1名に対してe-mailで研究協力の依頼を行い,研究への理解が得られた場合に候補者の希望に応じて面接日時と場所を設定した.面接当日に改めて文書と口頭で研究の主旨を説明し,同意が得られた場合に最初の対象者とした.次に,最初の対象者から次の候補者を紹介してもらい,その手順を繰り返すことで対象者を選定し(スノーボール・サンプリング法),上記と同様の手順で同意を得て面接調査を実施した.対象者6名を選定し,計12回の面接を終了した時点でデータの飽和を確認したため,対象者の選定を終了した.

4 データ収集方法

文献検討1823)に基づき作成した,半構成的質問で構成されたインタビューガイドを用いて面接調査を行った.面接では,終末期がん患者のせん妄への対応で最も印象に残った場面を想起してもらい,「どのような症状がみられたか」「どのようにそれらの症状がせん妄であると判断したのか」「どのようなことが影響してせん妄を発症したと考えたか」を尋ね,語りに応じて補足的に質問を深めた.面接内容は,対象者の同意を得て録音し,その後逐語録にした.面接は,研究者M.Aが各対象者に2回ずつ実施し,それぞれ異なる事例を想起してもらうことで意見の偏りや不足をなくし,データの厳密性を高めるよう配慮した.この過程で,対象者への逐語録の開示と修正依頼は行っていない.

データ収集期間は,2013年1月31日~6月19日であった.

なお,研究者は,緩和ケア病棟において終末期がん患者のせん妄ケアに携わった経験を有しており,せん妄の介入研究を行っている病院で研修を受けたうえで本研究を計画・実施した.

5 分析方法

本研究は,Krippendorffの内容分析15)の考えを基にして,看護における質的内容分析の手順を明確に示したGraneheimらの手順24)を参考に,研究者1名で次のように分析を行った.

逐語録を何度も読み返すことで対象者の語った文脈の意味内容の理解に努めた.逐語録の中で,終末期がん患者のせん妄ケアを実践する際のアセスメントについて語った箇所を,意味内容ごとに1つの文脈単位として抽出し,文脈の意味内容を損なわないように要約してコードとした.次に,全てのコードの意味内容の相違性と類似性を比較し,共通性のあるコードを集めてサブカテゴリとした.その後も,抽象度を上げて同様の手順を踏み,最終的に6の大カテゴリに統合した.

なお,分析結果は対象者に開示せず,分析の全過程においてがん看護学領域における質的研究に精通した研究者のスーパーバイズを受けると共に,2名の質的研究に精通した研究者にゼミにおいて複数回の指導を受け,繰り返し分析内容の妥当性を確認し,厳密性の確保に努めた.

6 倫理的配慮 

本研究は,大阪大学保健学倫理委員会による承認を得て実施した.対象者には,研究の主旨を説明し,研究への参加は自由意思であり,調査の参加の可否にかかわらず不利益は生じないこと,個人情報の保護およびデータの管理方法,匿名性の厳守,結果の公表について文書と口頭で説明し,署名による同意を得た.

結果

1 対象者の概要(表1

本研究の対象者は,がん看護専門看護師および緩和ケア認定看護師6名であった.対象者の看護師としての経験年数中央値は13.5年(12~24年),緩和ケア病棟での経験年数中央値は7.5年(6~10年)であった.面接時間の平均±標準偏差は,51.8±7.3分であった.

表1 対象者の概要

2 終末期がん患者のせん妄ケアを実践している看護師のアセスメントの視点

終末期がん患者のせん妄ケアを実践している看護師のアセスメントの視点として,294のコードから類似した66のサブカテゴリ,18のカテゴリを抽出し,最終的に6の大カテゴリに統合できた(表2).以下に,各大カテゴリの詳細な内容を説明する.

表2 終末期がん患者のせん妄ケアを実践している看護師のアセスメントの視点

なお,大カテゴリは[ ],カテゴリは〈 〉,特徴的な語りは「 」,アセスメントを斜体で示す.

(1)[直観と知識を擦り合わせたせん妄発症リスクの捉え]

これは,〈看護師の経験的直観に基づき違和感を抱く〉だけでなく,せん妄の要因に関する既存の知識をもとに〈患者背景からリスクを認識する〉ことや,終末期がん患者の身体的な状態から〈せん妄を発症しやすい時期にあることを認識する〉,〈全身状態の低下からリスクの増加を認識する〉ことで,患者が持つせん妄のリスク因子を認識したアセスメントであった.

「基本は,高齢の人はどうとか,麻薬使ってたら…というのはあるかもしれないですけど,ぱっと見てみて,何か気をつけないといけないなというのを感じるんです」(対象者D)

(2)[せん妄の発症リスクに基づく早期発見に必要な情報の吟味]

これは,(1)の後,〈観察から得た情報と他者から得た情報を擦り合わせてせん妄の発見につなげる〉とともに,日々変化する患者の〈身体的変化の把握からせん妄発症の可能性を予測する〉ことで,せん妄の早期発見に向けてなされるアセスメントであった.

「患者さん自身も『頭がすっきりしない』と言って,初期の頃は患者さんも自分がおかしいなっていう自覚があるのかなと感じることがあります.そういう方の,バックグラウンドじゃないけど,病気の病態とかを考えると,(せん妄に)なってもおかしくないなっていうところで,注意が必要だなっていう風に自分の中で擦り合わせていきます」(対象者C)

(3)[出現している症状がせん妄であるかどうかの判別]

これは,出現した特有の症状から〈せん妄の前駆症状を疑う〉,〈せん妄への移行プロセスを捉える〉,〈特徴的な症状からせん妄を疑う〉ことで,せん妄かもしれないという推論を行い,さらに検証を繰り返すことで〈症状がせん妄であるとの確信に導き(く)〉,せん妄の発見につなげるアセスメントであった.

「入院中にその方をみながら,あれっていうところが見えたときに,せん妄かなっていうのは捉えて,それで睡眠がとれないとかいうことがあれば,抗精神薬を使って,それに反応があれば,せん妄として対応していくっていうような流れかと思います」(対象者F)

(4)[すでに出現しているせん妄の要因の探索]

これは,せん妄との確証を得た後に,〈せん妄につながる要因を探る〉だけでなく,患者との関わりを振り返り,〈せん妄症状と症状出現のきっかけとなった事象を関連づける〉,〈せん妄の増悪を招いた病態と事象に見当をつける〉ことで,せん妄症状の出現と増悪の要因を明らかにするアセスメントであった.

「がんっていうのが先にあるんですけど,急激に半身麻痺が起こって動けなくなって,受け入れられない気持ちのままホスピスに来られて,日中は話もされていて理解もされているんですけれど,寝て起きたときの自分の状況がどうなっているかわからないっていうところでせん妄を強めているかなと思うところはありました」(対象者B)

(5)[せん妄と判断してから行うせん妄の全体像の把握]

これは,終末期がん患者の〈全身状態を踏まえてせん妄の治癒の可能性を判断する〉ことや,出現している症状をもとに〈特徴的な症状からせん妄の亜型を見極め(る)〉,〈せん妄が増悪しているサインを把握する〉ことで,患者に出現しているせん妄の様相を捉えるアセスメントであった.

「(可逆性せん妄と不可逆性せん妄の違いは)補正が効くものなのかとか,何かがあれば改善される兆候があるのかという違いなのかとは思います.輸液で電解質が補正しても変わらなかったり,それに対しての反応がないとか.全身状態がどうだっていうところが,一緒に見ていくことで総合的な判断につながっていくと思います」(対象者E)

(6)[せん妄の症状体験の意味づけ]

これは,せん妄患者との関わりの中で〈患者の生活歴に目を向けながらせん妄体験を読み解く〉,〈患者が最期までどのように過ごしたいかの希望をもとにせん妄症状を理解する〉ことで,患者の症状やせん妄体験を意味づけるアセスメントであった.

「(手元を動かして)ごそごそしてると,家族に聞くと,そういえば裁縫がすごく好きだったとか…(中略)…って聞くと,そういう風なことが今気がかりなんよねって.いうことがお仕事のことだなと思うと,その話に合わしてみたりとかができるので」(対象者A)

考察

結果をもとに各大カテゴリの関連性を検討したところ,終末期がん患者のせん妄ケアを実践する看護師のアセスメントは,[直観と知識を擦り合わせたせん妄発症リスクの捉え]により直観と知識を活用したせん妄予防のためのリスクアセスメント,[せん妄の発症リスクに基づく早期発見に必要な情報の吟味][出現している症状がせん妄であるかどうかの判別]により予測をもとにせん妄を疑い,検証を繰り返すことでせん妄だと決定づけるアセスメント,[すでに出現しているせん妄の要因の探索][せん妄と判断してから行うせん妄の全体像の把握][せん妄の症状体験の意味づけ]により終末期せん妄の様相を捉え,患者のせん妄体験を理解するためのアセスメント,の3段階に分けられると考えた(図1).そこで,3段階のアセスメントについて1~3に考察し,4に実践への示唆を示す.

図1 終末期がん患者のせん妄ケアを実践している看護師のアセスメントの段階

1 直観と知識を活用したせん妄予防のためのリスクアセスメント

[直観と知識を擦り合わせたせん妄発症リスクの捉え]は,終末期がん患者のせん妄ケアを実践するアセスメントの出発点となっていた.Kingら25)は,「看護師の直観的気づきは,患者の状態変化を確認する情報を得るための意識的な分析プロセスを誘発するトリガーとなる」と述べており,〈看護師の経験的直観に基づき違和感を抱く〉ことは,終末期せん妄を発見し適切なケアを誘発するアセスメントとなっていると考えられた.

また,看護師は,直観だけでなく知識を活用し,〈患者背景からリスクを認識(する)〉していた.これにはLipowski26)が示す準備因子,直接因子に該当するせん妄のリスク因子が含まれ,看護師は既存の知識をもとにリスクをアセスメントしていると考えられた.加えて,本研究の対象者は,〈全身状態の低下からリスクの増加を認識する〉,〈せん妄を発症しやすい時期にあることを認識する〉に示すように,治療内容や疾患・病態から,終末期がん患者の身体的変化を捉え,せん妄のリスクアセスメントにつなげているという特徴があった.

せん妄は,非薬物的ケアを組み合わせることで発症が減少する27)ため,看護師が行う日々のケアが重要になる.看護師は,患者の病状や病態理解により実践できるケアに加え,直観と知識を活用し,せん妄リスクを正しく認識することでできる予防的ケアを組み合わせることで,終末期せん妄の予防へとつながると考える.

2 予測をもとにせん妄を疑い,検証を繰り返すことでせん妄だと決定づけるアセスメント

[出現している症状がせん妄であるかどうかの判別]には終末期せん妄を疑い,確証に導くという2つのプロセスがあった.まず,看護師は〈せん妄の前駆症状を疑う〉,〈特徴的な症状からせん妄を疑う〉において,終末期せん妄に特徴的な症状ではなく一般的な前駆症状28)やDSM-529)に示される症状を現象として1つでも観察した場合にせん妄を疑っていた.しかし,看護師は症状を単に観察するのではなく,患者の身体的変化と結びつけてせん妄発症の予測を立て,それらの症状をせん妄と関連づけて考えるに至っていた.そこで,終末期せん妄を疑うまでに[せん妄の発症リスクに基づく早期発見に必要な情報の吟味]を確実に行うことが,せん妄発見の足がかりとなると考えられた.

そして,看護師は,せん妄を疑う症状を発見した後,看護師独自の視点から〈症状がせん妄であるとの確信に導(く)〉いていた.看護師は,特徴的な症状や出現形態,薬物治療などのせん妄の知識を,患者に当てはめて検証を繰り返すことでせん妄だとの確証に至っていた.加えて,せん妄だと確信を得るまでに[直観と知識を擦り合わせたせん妄発症リスクの捉え]に戻ることや,同時に[すでに出現しているせん妄の要因の探索]を行い,検証することでせん妄であると確実性を高めていた.このように,終末期せん妄の発症の予測を立て,出現している症状をせん妄と関連づけることで,看護師主導とした終末期せん妄の早期発見を可能にすると考える.

しかし,先行研究30)と同様に,看護師はせん妄の判断に自信を持てない場合もあり,多職種との情報交換によってせん妄であるとの確証を深めていた.そこで,看護師が独自でせん妄であると確証が持てるよう,教育的介入が必要であることが示唆された.

3 終末期せん妄の様相を捉え,患者のせん妄体験を理解するためのアセスメント

[すでに出現しているせん妄の要因の探索]において,看護師は,せん妄の発症時,増悪時,せん妄症状の出現時という3つの場面で,患者の身体的要因だけでなく,患者との相互作用の中で生じた現象にも目を向けて要因を探索していた.これは患者の一番身近で関わる看護師独自のアセスメントの視点であった.また,看護師は,これらの要因のアセスメントをもとに,[せん妄と判断してから行うせん妄の全体像の把握]を行っていた.とくに,〈全身状態を踏まえてせん妄の治癒の可能性を判断する〉は,患者の推定される予後,看取りの時期の予測を含む,患者の治療や看取りの方向性を決定づける重要なアセスメントであった.

一方,[せん妄の症状体験の意味づけ]は,看護師と患者との関わりの中で醸造され,その後のケアに直接反映されるアセスメントであった.これは,看護師は体験を意味づけることで看護観・ケア行動を再考し,次の体験に変化を及ぼす31)との報告を支持するものであった.また,せん妄のある患者の家族は,患者の主観的な世界を尊重した対応を望んでいる6)と言われている.看護師が,症状体験を意味づけ,患者の生活歴や想いを尊重した関わりを行うことは,せん妄患者の家族ケアにもつながると考えられた.

このアセスメントにより,終末期のがん患者の状態に応じた治療の方向性を見出すとともに,患者の言動や症状に応じた対応により,患者のその人らしさを保持したケアを可能にすると考える.

4 実践への示唆

終末期がん患者のせん妄ケアの質を向上させるため,看護師の直観とせん妄に関する知識を強化すること,終末期の身体的変化に基づいてせん妄発症のリスクを把握し,せん妄を疑いから確信に導く思考過程を強化することが効果的であると考える.また,患者のその人らしさを尊重したケアにつなげるための教育的支援を行う必要があると考える.

本研究は,対象者が限られていたこと,分析の手順を1名で実施したことから結果の一般化には限界がある.今後は,対象者を増やすとともに,参与観察法を用いて看護師が意識化していないアセスメントについても明らかにする必要がある.そのうえで,前述の内容を踏まえた終末期がん患者のせん妄ケアを行う看護師への教育プログラムを開発することが課題である.

結論

看護師は,1.直観と知識を活用したせん妄予防のためのリスクアセスメント,2.予測をもとにせん妄を疑い,検証を繰り返すことでせん妄だと決定づけるアセスメント,3.終末期せん妄の様相を捉え,患者のせん妄体験を理解するためのアセスメントの3段階のアセスメントにより,終末期がん患者のせん妄ケアを実践していると考えられた.本研究より,終末期がん患者のせん妄を発見し適切なケアを実践するために,看護師のアセスメントの段階に沿った教育的介入のあり方が示唆された.

謝辞

本研究の実施にあたり,ご協力いただいた対象者の皆様に深く感謝申し上げます.本研究は,平成25年度大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻の修士論文の一部に加筆・修正を加えたものであり,第29回日本がん看護学会学術集会で本研究の一部を発表したものです.また,平成25年度公益財団法人安田記念医学財団癌看護研究助成(大学院学生)を受けて実施しました.

References
 
© 2017日本緩和医療学会
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