在宅輸血療法を受けた患者の遺族を対象にアンケート調査を実施し,在宅輸血を受けた患者の緩和ケアの質や終末期のQOLを評価した.訪問診療および在宅輸血を行い,死亡を転帰とした患者の遺族44名から得た回答を分析した.緩和ケアの質の評価にはCare Evaluation Scale 2を用い,合計平均点は80.1±10.0であった.終末期のQOLにはGood Death Inventoryを用い,合計平均点は54.7±7.5であった.全般的満足度では97.7%が満足と回答した.ケアの質の関連要因は「疾患」で,「血液疾患患者」より「固形疾患患者」の方が有意に高かった(p=0.05).そしてQOLの関連要因は「療養中の遺族の健康状態」で,遺族の健康状態が「悪い」より「よい」方が有意に高かった(p<0.03).今後は対象者数を拡大し,多施設研究による検証が望ましい.
緩和ケア病棟(PCU)での体温測定に非接触型体温計(NCITs)を用いて測定した体温が腋窩温の代用になりうるか検討した.当院PCUに入院した成人がん患者を対象とした.入院24時間経過後に電子体温計を用いて腋窩温を,NCITsを用いて前額部・側頭部・頸部で体温を測定した.腋窩温37.0°C以上を発熱ありとした.対象は60名,NCITsでの発熱のカットオフ値とAUCは前額部(36.8°C, 0.851),側頭部(36.8°C, 0.843),頸部(37.1°C, 0.809)であった.各部位の発熱群ではNCITsでの測定体温と腋窩温との差が大きく,誤差の範囲も広かった.PCUで体温を測定する場合,NCITsで代用可能と考えられたが,発熱時は分散が大きくなることに注意が必要である.
【目的】在宅終末期ケアにおける同行看護師の役割を明らかにすることを目的とした.【方法】半構造化インタビューによる質的研究を行い,記述的テーマ分析を実施した.対象は同行看護師,医師,研究対象診療所とともに看取り支援を行った訪問看護師,ケアマネージャー,訪問薬剤師,自宅看取りを経験した患者家族とした.【結果】同行看護師の役割は「診療補助」「医師との協働」「医師の説明に対する理解の促進」「意思決定支援」「患者・家族への直接的ケア」「診療におけるサポーティブな環境作り」「全人的な視点で情報収集・アセスメント」「多職種とのコーディネーション」「多職種に対する終末期・緩和ケア教育」の9テーマであった.【考察】さまざまな属性へのインタビューから同行看護師の役割が明らかになった.同行看護師は,訪問看護師と比べ,医師の診療とともに同時に展開される独自の役割があり,在宅終末期ケアにおけるコーディネーターを担っていた.
【緒言】本症例は,上咽頭がん患者の死亡届を,認知症を有する母親の法定後見人が母親に代わり提出した一例である.【症例】患者は61歳男性で,中枢神経への浸潤を伴う上咽頭がんを発症していた.病前から定職に就かず,日常生活の多くを家事代行サービスに依存する生活を送っていた.入院当初は意識清明であったが,認知症のある唯一の親族である母親に対する後見人選任の手続きを行わないまま病状が進行し,高次脳機能障害と意識低下をきたした.これを受けて家庭裁判所により母親の法定後見人が選任され,患者死亡時には母親の後見人が母親に代わり死亡届を提出した.【結語】本症例は,独居や認知症を有する高齢者の増加に伴い,後見人制度の重要性が今後さらに高まることを示唆している.