Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
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原著
慢性心不全患者とその家族と行うアドバンス・ケア・プランニングの必要性に関する循環器病棟に勤務する看護師の認識
渡邉 梨紗落合 亮太徳永 友里三條 真紀子眞茅 みゆき宮下 光令石川 利之渡部 節子
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電子付録

2020 年 15 巻 4 号 p. 265-276

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Abstract

【目的】慢性心不全患者とその家族と多職種チームが行うアドバンス・ケア・プランニング(ACP)に関する看護師の認識を明らかにする.【方法】質問紙を用いて全国の植え込み型除細動器/心臓再同期療法認定施設の看護師427名に,模擬症例とその家族と行うACP13項目の必要性を尋ねた.【結果】有効回答207名中,「機能予後・生命予後を伝える」を患者と「行うべき」と回答した者は51%で,全13項目中最少だった.患者・家族の比較では予後告知などに関する8項目で家族と行うべきとの回答が有意に多かった.認定看護師は,患者とは「これまでの人生で大切にしてきたものについて尋ねる」,家族とは「これからどんな人生を患者に歩んでほしいのかを家族に尋ねる」などで,その他の看護師より行うべきとの回答が有意に多かった.【結論】看護師はACPのなかでも患者への予後告知に慎重であること,認定看護師は患者や家族のその人らしさを重視する傾向にあることが示された.

緒言

循環器疾患の代表的な病態の一つである慢性心不全は,急性増悪と寛解を繰り返しながら徐々に身体機能が低下し,最期は急激に悪化するため,予後予測が困難である1).心不全患者は,全人的苦痛を抱えており,終末期に至る前の早期の段階から,患者・家族のQuality of life(QOL)の改善のためにも多職種チームによるサポートを必要とする2)

心不全領域の緩和ケアでは,近年,アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning: ACP)が重視されている.ACPとは,「意思決定能力が低下する前に,患者や家族が望む治療と生き方を医療者が共有し,事前に対話しながら計画するプロセス全体」2)と定義される.予後予測が困難な慢性心不全において,早期にACPを行うことで,増悪時に患者・家族が早急な決断を迫られることなく,彼らが望む治療・ケアを選択できるとされる.患者中心に行われたACPの効果に関するランダム化比較試験では,ACPを行った患者・家族は継続的に意思決定ができ,患者が望む治療の選択ができたと報告されている3)

ACPでは患者のみならず家族も対象とすることが求められる.従来から,心不全治療では患者や家族との繊細なコミュニケーションをとることが重要とされている4).がん患者の遺族への調査では,終末期をどこで迎えるかという意思決定が負担であった遺族ほど,抑うつ傾向や予期悲嘆が強いとされている5).また,患者の意思を知らずに意思決定した場合や,医療者と意見を共有していなかった場合の意思決定は遺族の負担感が強かったとされている5).さらに,ACPに関する国内外の文献のレビューでは,海外におけるACPは「個人」中心だが,古くから「集団性」の文化がある日本では,とくに「家族」を含めた関わりの必要性が高いことが指摘されている6).他方,心不全領域では2018年の診療報酬改定により末期心不全患者が緩和ケア診療加算の算定対象に含まれた前後から,ACPが急速に認知されはじめたこともあり,患者自身およびその家族と行うべき具体的内容および実施時の留意事項には曖昧な点が多い.そこで本研究では,循環器病棟に勤務する看護師を対象に,慢性心不全患者とその家族それぞれに対するACP実施の必要性に関する認識を尋ね,今後,患者自身とその家族を包括的に捉えてACPを行う際の示唆を得ることを目的とする.

方法

研究の概要

本研究は自記式質問紙を用いた横断研究である.本研究は,全国の植え込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator: ICD)/心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy: CRT)認定施設に勤務する循環器内科医と看護師を対象とした調査データのうち,患者とその家族と行うACPの必要性に関する看護師の認識を扱うものである.なお,同調査に関して,ACPを導入すべき時期,患者に限定したACP実施の必要性,ACP実施上の障壁に関する医師と看護師の比較は別途報告されている7)

対象

対象施設は,心不全患者の終末期に対する心臓専門医と看護師の認識を検討した先行研究8)を参考に,ACPの対象となる重症慢性心不全患者を多く診療していると考えられる全国のICD/CRT認定施設,全427施設とした.対象者は,対象施設の循環器病棟に所属する看護師のうち,心不全の年間担当症例数が最も多い者,あるいは看護部長の推薦がある者各1名,計427名とした.

データ収集方法

対象施設の看護部長に管理者向け説明文書,対象者向け説明文書,自記式質問紙と返送用封筒の一式を送付した.管理者向け説明文書にて調査協力に同意した看護部長に,本研究の適格基準を満たす看護師を選定し,対象者向け説明文書と自記式質問紙および返送用封筒を渡してもらった.次いで,調査協力に同意する調査対象者に自記式質問紙に回答のうえ,返送用封筒を用いて返送してもらった.調査期間は2018年2~3月であった.

データ収集内容

本研究で用いた自記式質問紙を付録図1に示す.質問紙のうち本研究で扱う箇所は以下である:1.対象者の所属施設の属性,2.対象者の基本属性(以上,質問紙2ページ目),3.模擬症例とその家族に対するACP実施の必要性(同4,5ページ目).以下,具体的項目を示す.

1.対象者の所属施設の属性

全病床数,CCU,(心不全に限らない)緩和ケアチーム,心不全患者のケアについて多職種で検討する機会,慢性心不全看護認定看護師(以下,認定看護師)の有無などを尋ねた.

2.対象者の基本属性

性別,年齢,循環器病棟での経験年数,保有資格などを尋ねた.

3.模擬症例とその家族とのACP実施の必要性

模擬症例を対象者に提示し,患者・家族とのACP実施の必要性に関する対象者の認識を尋ねた.模擬症例は先行研究9)を参考にしつつ,日本の心不全患者像に合わせて独自に以下のように作成した:「68歳の重症慢性心不全患者で,重症度はNYHA分類IV度,左室駆出率20%でCardiac Resynchronization Therapy Defibrillator(CRT-D)を使用しており,日常生活のほとんどに介助が必要である.今回,心不全の急性増悪により入院し,担当患者になったことを想定した.患者の治療目標や延命に関する意思は不明である」.

この模擬症例に対し,医師,看護師,理学療法士,ソーシャルワーカー等を含む多職種チームが患者本人と行うべきACPの具体的内容について尋ねた.ACPの具体的内容は,米国およびわが国のガイドライン3,10)で提言されているACPにおいて実施すべき内容を参考にしつつ,日本の実情を考慮して独自に以下のように作成した:「これまでの病気の経過をどのように捉えているか尋ねる」「機能予後・生命予後を伝える」「最期を迎える場所に対する希望を尋ねる」など(全13項目).各項目について,「全く行うべきでない」「あまり行うべきでない」「どちらともいえない」「概ね行うべきである」「必ず行うべきである」の5段階リッカート尺度で対象者の認識を尋ねた.

また,同様の多職種チームが模擬症例の家族と行うべきACPの具体的内容として,患者本人向けの13項目を家族向けに一部表現を変更し,対象者の認識を尋ねた(変更例:「これからどのような人生を歩みたいか尋ねる(患者向け)」「これからどのような人生を患者に歩んで欲しいのかを家族に尋ねる(家族向け)」,「機能予後・生命予後を伝える(患者向け)」「機能予後・生命予後について,患者に伝えたいかを家族に尋ねる(家族向け)」など).

模擬症例の作成,患者・家族と行うべきACPの内容の検討,および回答選択肢の設定はすべて,研究に協力する認定看護師4名,循環器看護領域の研究者3名,がん緩和ケア領域の研究者2名との意見交換をもとに行い,内容的妥当性の確保を図った.

分析方法

各項目について,記述統計量を算出した.模擬症例に関して「患者と行うべき程度」と「家族と行うべき程度」に比較には,Wilcoxonの符号付順位検定を用いた.また,対象者のうち認定看護師は,5年以上の臨床経験(うち3年以上は専門分野での経験)を有し,安定期,増悪期,人生の最終段階にある慢性心不全患者とその家族に対し,水準の高い看護実践,他の看護職への指導や相談対応ができる者とされ,教育課程にも意思決定支援が含まれている11).心不全患者の意思決定支援に関する知識や経験が比較的豊富と考えられる認定看護師とそれ以外の対象者でACP実施の必要性に関する認識の違いを比較することで,臨床の場で必要とされるACPの具体的内容が明らかになると考えた.そこで,認定看護師とその他の看護師におけるACP実施の必要性の認識をWilcoxonの順位和検定を用いて比較した.「患者と行うべき程度」と「家族と行うべき程度」,および認定看護師とそれ以外の対象者での比較においては,効果量としてCohen’s rを算出した.Cohen’s rはWilcoxonの符号付順位検定/順位和検定で求められるz統計量をサンプル数の平方根で除したものであり,その評価基準は,小さな差0.1,中程度の差0.3,大きな差0.5とされる12).統計解析には,IBM SPSS ver.25 for Windows(日本IBM,東京)を用いた.検定はすべて両側検定とし,有意水準は5%とした.

倫理的配慮

本研究は,横浜市立大学ヒトゲノム・遺伝子研究等倫理委員会の承認を得て実施されている「心不全患者とのアドバンス・ケア・プランニングに関する医師・看護師の認識と実施状況(研究代表者:徳永友里,承認番号A171100002)」の一部として実施した.

結果

対象者427名のうち,207名から有効回答を得た(有効回答率48.5%).

対象者背景(表1

所属施設の属性は,病床数「400床以上」と回答した者が約7割,「緩和ケアチームを有する」と回答した者が約8割,「心不全患者のケアについて多職種で検討する機会がある」と答えた者が約7割であった.

対象者の属性は,年齢は「30歳代以下」が約半数を占めた.認定看護師は78名(37.7%)であった.

表1 対象者背景

患者と家族とのACP実施に対する看護師の認識(表2

模擬症例とその家族と多職種チームが行うACPの必要性の各項目について,「必ず行うべきである」「概ね行うべきである」と回答した対象者の総和を,「行うべき」と回答した対象者数として示す.

患者と行うACPについては,「これまでの病気の経過をどのように捉えているか尋ねる」「今後の治療について何をどこまで知りたいかを尋ねる」など7項目で,9割以上の対象者が「行うべき」と回答した.一方,「機能予後・生命予後を伝える」は「行うべき」と回答した者が約5割と最も少なかった.

家族と行うACPについては,「これまでの病気の経過を家族がどのように捉えているか家族に尋ねる」「今後の治療について,家族が何をどこまで知りたいかを家族に尋ねる」「これからどのような人生を患者に歩んでほしいのかを家族に尋ねる」など11項目で,9割以上の対象者が「行うべき」と回答した.「行うべき」と回答した者が最も少なかった項目は,「今後のCRT-Dの除細動機能停止に対する希望を家族に尋ねる」だったが,約8割が「行うべき」と回答していた.

患者と家族とのACP実施に対する看護師の認識の比較では,全13項目中8項目で有意差を認めた.最も大きな差を認めた項目は,「機能予後・生命予後を伝える(患者向け)」「機能予後・生命予後について,患者に伝えたいかを家族に尋ねる(家族向け)」で,患者と「行うべき」と回答した者は106名(51.2%),家族と「行うべき」と回答した者は194名(93.7%)であった(p<0.001, r=−0.70).中程度の差を認めた項目は,「機能予後・生命予後を知りたいか尋ねる(患者向け)」「機能予後・生命予後について,家族が知りたいかを家族に尋ねる(家族向け)」(患者と「行うべき」167名(81.1%),家族と「行うべき」194名(93.8%); p<0.001, r=−0.43),「今後のCRT-Dの除細動機能停止に対する希望を尋ねる(患者向け)」「今後のCRT-Dの除細動機能停止に対する希望を家族に尋ねる(家族向け)」(患者と「行うべき」150名(72.5%),家族と「行うべき」165名(79.8%); p<0.001, r=−0.33)であった.

表2 患者と家族へのACP実施に対する看護師の認識

認定看護師とその他の看護師の比較

患者と家族と行うACPの必要性に関して,認定看護師とその他の看護師を比較した結果,患者と行うべき程度では,全13項目中7項目で有意差を認め(表3),家族と行うべき程度では10項目で有意差を認めた(表4).

患者と行うべき程度では,「これまでの人生で大切にしてきたものについて尋ねる」「これからどのような人生を歩みたいかを尋ねる」「最期を迎える場所に対する希望を尋ねる」において,認定看護師が「行うべき」と回答する傾向にあり,いずれも中程度の差を認めた(p<0.001, r=−0.36; p<0.001, r=−0.30; p<0.001, r=−0.30)(表3).

家族と行うべき程度では,「これからどんな人生を患者に歩んでほしいのかを家族に尋ねる」「これまでの患者との人生で大切にしてきたものについて家族に尋ねる」において,認定看護師が「行うべき」と回答する傾向にあり,いずれも小さな差を認めた(p<0.001, r=−0.28; p<0.001, r=−0.27)(表4).

表3 患者とのACP実施に対する慢性心不全看護認定看護師とその他の看護師の比較
表4 家族とのACP実施に対する慢性心不全看護認定看護師とその他の看護師の比較

考察

本研究は,われわれの知る限り,わが国の慢性心不全患者とその家族と多職種チームが行うACPの具体的内容に関する看護師の認識を明らかにした初めての研究である.本研究では,1.看護師は多職種チームが予後に関する話し合いを患者と行うことに慎重であること,2.認定看護師は患者や家族が大切にしてきたものや歩みたい人生など,その人らしさや価値観を重視する傾向にあることが示された.

予後に関する話し合い

本研究では,「機能予後・生命予後を伝える」について患者と「行うべき」と回答した者は約5割で,全13項目中最も少なかった.がん領域において看護師が告知で考慮することは「病期・予後」が最も多いと報告される一方13),末期がん患者に関わる看護師を対象とした調査では,「医師の説明の補足としての予後の説明」を行っている看護師は半数以下とされている14).本研究におけるACPの実施者は患者・家族と多職種チームを想定しており,看護師には限定していない.それでも「行うべき」との回答が少なかった理由として,予後告知が本人に与えるショックへの懸念が考えられる.本研究で用いた模擬症例は,NYHA分類IV度,左室駆出率20%でCRT-Dを使用しており,末期心不全に該当する4).がん領域では告知を受けた患者の心理的反応として,無関心や現実逃避などの退行やパニックを示す患者が多いとされており15),本研究の対象者である看護師も,患者の心理的反応を懸念していたと推察される.

本邦のがん患者の遺族を対象とした調査では,75%の遺族,および25%の患者が予後告知を受けており,予後告知を受けた遺族の38%は患者への告知のあり方を,遺族自身で判断していたと報告されている16).また,自分が終末期にある場合,告知を希望する者は6割だが,家族が終末期にある場合,本人に告知を希望する者は4割との報告もある17).患者に対する予後告知については,家族の意向が大きく影響しているのが本邦の実情だろう.本研究の対象者において,患者と「機能予後・生命予後を伝える」「機能予後・生命予後を知りたいか尋ねる」という項目を「行うべき」と回答した者より,家族と「機能予後・生命予後について,患者に伝えたいかを家族に尋ねる」「機能予後・生命予後について,家族が知りたいかを家族に尋ねる」を「行うべき」と回答した者が多かった理由も,まず家族の意向を把握したいという意識の現れと考えられる.

一方で,本研究では「これまでの病気の経過をどのように捉えているか尋ねる」「今後の治療について何をどこまで知りたいかを尋ねる」の項目で,患者と「行うべき」との回答が最も多かった.一般市民対象の調査では,自身の余命が半年である場合,予後について「全く話し合いたくない」と回答した者は1割程にとどまり,「詳しく聞き,話し合いたい」「知りたいかどうか尋ねてほしい」などの意見が多いとされている18).本研究結果と先行研究結果から,予後告知の是非を一律に論じることはできないが,家族の意向と患者自身がどこまで知りたいかを確認しながら,予後に焦点を当てるのではなく,患者らしい生き方を実現する方法に焦点を当ててACPを進めることが必要といえる.

その人らしさや価値観の重視

対象者のうち,認定看護師はその他の対象者に比べて,患者とは「これまでの人生で大切にしてきたものについて尋ねる」,家族とは「これからどんな人生を患者に歩んでほしいのかを家族に尋ねる」などの実施が必要と認識する傾向にあった.先行研究では,看護師が患者・家族とコミュニケーションを重ね,患者が望む生活や,やりたいことを家族とともに実現したことで,患者が望む生活や後悔することなく穏やかな最期を迎えられたとされている19).認定看護師の専門性は,その人らしく生活していけるよう支援していくことや人を知ること,認識を聴くこととされている20).認定看護師は,自らの専門性とACPの目的や実施における看護師の役割を認識し,患者・家族のその人らしさや価値観を重視していたと推察できる.

がん患者の遺族を対象とした調査では,希望を持ちながらも同時に心残りのないように準備ができた遺族ほど,「(医療者は)状態のよいうちから,しておいた方がよいことについて相談にのってくれた」との声が多かったことが報告されている21).さらに,一般市民とがん患者の遺族を対象とした調査では,望ましい死の概念として,「望んだ場所で過ごす」「人として大切にされる」「伝えたいことを伝えておける」などが挙げられている22).患者・家族が望む最期を迎えるためには,資格の有無によらずすべての看護師が患者・家族の思いや価値観を尊重すること,患者の本来の姿を知ることが重要と考えられる.

本研究の限界と課題

本研究にはいくつかの限界と課題がある.

第一に,本研究の対象施設はICD/CRT認定施設に限定されている点である.また,本研究では,各施設1名の看護師にACPに関する自身の認識を尋ねており,本研究への回答が施設を代表するものではない点に留意すべきである.第二に,本研究がNYHA分類IV度でCRT-Dを使用する末期心不全模擬症例に限ってACP実施の必要性を検討している点である.このため,心不全診断時や初回入院時など,早期から行うACPについては検討できていない.第三に,本研究では先行研究で心不全終末期患者に対する看護師の態度に影響するとされる研修受講経験など23)を調査していない点である.本研究は認定看護師とそれ以外の看護師を比較したが,今後より多くの看護師がACPを実践するためには研修が現実的な教育機会となる.研修受講の効果を後方・前方視的に評価する必要がある.最後に,本研究では,患者・家族との直接的なコミュニケーションに関しては調査しているものの,その記録の仕方などについては検討していない点である.本研究が計画・実施段階にあった2017年9月に,欧州緩和ケア学会はACPの定義と推奨に関する国際同意を発表し,当事者の希望を記録に残す必要性を明示している24).また,近年公表されたシステマティック・レビューでは,ACPの実施が患者の希望などの文書化を促進することが示唆されている25).今後は,記録の残し方や患者・家族との共有方法を含めた検討も必要だろう.

結論

全国の植え込み型除細動器/心臓再同期療法認定施設に所属する看護師427名を対象に質問紙調査を実施し,207名から回答を得た.その結果,看護師は多職種チームが予後に関する話し合いを患者と行うことに慎重であること,認定看護師は患者・家族のその人らしさや価値観を重視していることが明らかになった.

謝辞

本研究にご協力いただいた対象施設管理者,および対象者に心より感謝申し上げます.また,質問紙作成にあたり専門的見地からご意見をくださった阿部隼人様,石田洋子様,岡田明子様,林亜希子様,松岡志帆様に深謝いたします.

研究資金

本研究は「横浜市立大学:第1期学術的研究推進事業」(研究代表者: 徳永友里)による研究費を用いて実施した.

利益相反

著者の申請すべき利益相反なし

著者貢献

渡邉はデータ解析,原稿の起草に貢献;落合,徳永,三條,眞茅,宮下,渡部は研究の構想およびデザイン,データの収集,原稿の起草に貢献;石川は研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な遂行に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2020日本緩和医療学会
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