Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
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原著
進行がん患者家族の代理意思決定における病棟看護師の支援とその困難経験頻度に関連する要因
伊禮 寿記 木村 安貴
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2023 年 18 巻 1 号 p. 31-41

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Abstract

本研究の目的は,進行がん患者家族の代理意思決定における病棟看護師の支援とその困難経験頻度に関連する要因を明らかにすることである.4施設のがん看護を実践する病棟に勤務する看護師285名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.代理意思決定支援を「常に実施している」~「どちらともいえない」と回答した者は230名(80.7%)であり,話し合いの場に同席するなどの支援が実施されていた.また,よく困難を経験している者は41名(17.8%)であり,困難経験の関連要因についてロジスティック回帰分析で求めた結果「代理意思決定支援の実施頻度」(OR=2.41, P=0.009),「患者と家族等の関係性がわからない」(OR=1.50, P=0.025)などの4要因が抽出された.このことから,進行がん患者家族の代理意思決定支援を促進するためには,事前に患者と家族の関係性について情報を収集することが必要である.

Translated Abstract

This study aimed to describe the types of support that ward nurses provide to families of patients with advanced cancer in surrogate decision-making and the factors associated with the difficulties these nurses experienced . An anonymous self-administered questionnaire survey was conducted among 285 nurses practicing in the cancer wards of four facilities. In total, 230 (80.7%) nurses provided support in surrogate decision-making, such as attending discussions. Additionally, 41 (17.8%) of the respondents often experienced difficulties performing this task. Results of a binary logistic regression analysis showed that the factors associated with the nurses’ recognition of difficulties were frequency of surrogate decision-making support requirements (OR=2.41, P=0.009) and incomprehension of the relationships between patients and their families (OR=2.41, P=0.009). To promote nurses’ support in surrogate decision-making, we suggest routinely collecting information on the relationships between patients and their families.

緒言

終末期に意思決定を求められた患者の70%は意思決定能力が乏しく1,とくにがん患者では全身の状態の悪化に伴う意識の低下などにより意思決定が困難である2.そのため,がん患者家族は,患者の治療方針や療養場所などのさまざまな場面で代理意思決定の役割を担っている3,4.しかし,代理意思決定を担った家族(以下,代理意思決定者)は,後悔・葛藤など否定的感情を少なくとも3分の1が抱えており5,がん患者家族の意思決定負担が大きいほどうつ症状に関連していることが報告されている3.加えてがん患者家族は,患者の病状の悪化により抑うつ症状を引き起こすことが報告されており6,患者の病状が悪化していく中で代理意思決定を担うことにより,がん患者家族の精神的負担を増大させることが考えられる.また2021年の報告では,代理意思決定場面の家族の話し合いに看護師が関与することが話し合いの促進になることが報告されている7.そのため,がん領域の代理意思決定において看護師が代理意思決定支援を行うことは重要であると考える.

代理意思決定に関して,厚生労働省が2007年に作成した終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインでは「患者本人にとって何が最善であるかについて家族等と十分に話し合い,最善の方針を取る」ことが明記され,家族が本人の意向を推定し,医療者と話し合いをしながら代理意思決定を行うことを推奨している8.また,看護師が行う代理意思決定支援は,家族の思いを傾聴することや家族の決断を支持するなどを行っている9,10.しかし,同時に看護師は代理意思決定支援についての明確な方針がないことや家族の思いを引き出すなどのコミュニケーションについて困難を抱えていることが明らかになっている11,12

現在の代理意思決定支援における先行研究において,クリティカルケアや救急領域を中心として,支援内容や看護師の困難などについて明らかにされている913.しかし,がん領域においては代理意思決定を行う家族の負担や困難について明らかにされているものの3,14,看護師の代理意思決定支援の実態や困難については明らかにされていない.そこで本研究は,進行がん患者家族の代理意思決定における病棟看護師の支援とその困難経験頻度に関連する要因を明らかにし,がん領域における看護師の代理意思決定支援を促進するための示唆を得ることを目的とする.

用語の定義

  • 「代理意思決定」:先行研究8,12,13を参考に,意思決定する本人が病状の悪化やせん妄等によって意思決定が困難とされた場合に,その患者の推定意思に基づき,家族等が本人に代わり意思決定を行うこととする.
  • 「家族等」:ガイドライン8を参考に結婚や親族関係を問わず,親しい友人等を含めた患者本人の価値観や人柄を知っており,信頼を寄せている人々とする.
  • 「代理意思決定支援の困難経験」:看護師ががん患者の家族等の代理意思決定支援を行う過程で難しさを感じたり困ったりすること.

方法

研究対象

沖縄県内の総合病院4施設に従事している,進行がん患者・家族等に看護実践をしている病棟に勤務している臨床経験3年以上の看護師を対象とした.

調査期間・方法

データ収集期間は2018年8月から9月の2カ月間とし,無記名自記式質問紙調査を郵送法にて実施した.

質問紙の構成

1. 看護師が実施する進行がん患者家族等への代理意思決定支援の現状

1年以内の看護実践を通して,進行がん患者家族等の代理意思決定支援の実施頻度について1項目作成した.

また,看護師の進行がん患者家族等への代理意思決定支援の実施内容を把握するため下地らの開発した救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援実施尺度13を基盤とし,さらに代理意思決定支援や家族支援などの12文献9,10,1524から代理意思決定支援の内容を抽出した.その結果,4カテゴリー「話し合いの援助」7項目,「心理的サポート」7項目,「家族等の認識の確認と説明」5項目,「多職種連携」3項目からなる計22項目を代理意思決定支援項目として抽出した.なお,代理意思決定支援の実施頻度および代理意思決定支援項目は「常に実施している」~「全く実施していない」の5段階のリッカート尺度を用いて評価した.

2. 進行がん患者家族等の代理意思決定における看護師の困難の現状

1年以内の看護実践を通して,進行がん患者家族等の代理意思決定支援において困難の経験頻度について「よく経験している」~「全く経験していない」の5段階のリッカート尺度で評価した.

また,進行がん患者家族等の代理意思決定支援の困難経験頻度に関連する要因を明らかにするため,代理意思決定支援やがん患者の意思決定支援における困難についての文献レビューを行い,8文献11,12,14,22,2528から代理意思決定支援の困難に関連する項目を抽出した.その結果,3カテゴリー「患者・家族等要因」8項目,「環境システム要因」8項目,「看護師スキル要因」2項目の計18項目を代理意思決定支援の困難項目として抽出した.質問項目は「とてもそう思う」~「全くそう思わない」の7段階リッカート尺度で評価した.

なお,進行がん患者家族等への代理意思決定支援項目および困難項目の抽出過程において,がん看護の実践に卓越したがん看護専門看護師およびがん患者の意思決定支援について研究する研究者と協議を重ね,質問項目を作成した.

3. ターミナルケア態度尺度 FAT-COD-From B-J短縮版29

看護師の終末期の患者や家族への支援の考えや死生観などは,代理意思決定支援における困難に影響することが考えられるため,ターミナルケア態度尺度であるFAT-COD-From B-J短縮版の6項目(範囲:6–30点)を用いた.下位尺度は「死にゆく患者へのケアの前向きさ」および「患者家族を中心とするケアの認識」の6項目で構成されており,点数が高いほどターミナルケアへの意識が高いことを示している.なお,本尺度は中井ら29によって信頼性および妥当性が確認されており,Cronbachのα係数は0.624であった.

4. 看護師のコミュニケーション能力Kiss-1830

Kiss-18は,コミュニケーション能力や社会的スキルを測定する尺度であり30,看護師のコミュニケーション能力を測定する尺度として活用されている15.本尺度は,「他人と話していて,あまり会話が途切れないほうですか」や「他人を助けることを,上手にやれますか」などの18項目を「いつもそうだ」~「いつもそうでない」の5段階のリッカート尺度で評価した(範囲:18–90点).本尺度は得点が高いほど,コミュニケーション能力や対人関係を円滑に運ぶ社会的スキルが高いことを示している.なお,本尺度は菊池30によって信頼性および妥当性が確認されており,本尺度のCronbachのα係数は0.936であった.

5. 対象の個人属性

対象の個人属性として年齢,性別,最終学歴,看護師臨床経験年数,役職,認定看護師や専門看護師の資格,代理意思決定に関する研修の受講経験についての8項目を作成した.

分析方法

代理意思決定支援を実施している者のなかでより多く困難を抱えることの要因や特性を明らかにするために代理意思決定支援頻度において「あまり実施していない」「全く実施していない」と回答した者を除き,対象の個人属性や進行がん患者家族等の代理意思決定支援の実施頻度,支援項目,困難項目についてそれぞれ記述統計を行った.次に困難経験の頻度を「よく経験している」と回答した者を困難多群,「ときどき経験している」,「どちらともいえない」,「あまり経験していない」,「全く経験していない」を困難少群の2群に分け,基本的属性や困難項目などの関連要因とそれぞれ単変量分析(χ2検定,Mann–WhitneyのU検定)を実施した.さらに,看護師の困難経験と有意な関連がみられた項目を独立変数とし,二項ロジスティック回帰分析(変数減少法:Wold法)を行った.多重共線性については独立変数間の相関を用いて確認した.なお有意水準は5%とし,分析にはSPSS ver.29を用いた.

倫理的配慮

対象者に対して,研究の主旨,匿名性の保証,研究の結果の公表,調査参加への自由意思の尊重,調査に参加しないことでの不利益を被らないこと,アンケートは無記名であることを文書で説明し,アンケートの提出をもって研究の同意とした.なお本研究は,名桜大学倫理審査委員会の承認を得て実施した.

結果

対象者概要

総合病院4施設の進行がん患者家族に看護実践をしている病棟に勤務する看護師463名に配布し345名から回答が得られた(回収率74.5%).本研究の対象選定基準を満たさない者や欠損値がある回答等60名を除外した285名のうち代理意思決定支援の実施頻度を「常に実施している」~「どちらともいえない」と回答した230名を分析対象とした(有効回答率66.7%).対象者は,女性が186名(80.9%)であり,平均年齢は34.3±8.4歳であった(表1).

表1 看護師の個人属性 (n=230)

進行がん患者家族等の代理意思決定支援における病棟看護師の実施頻度

代理意思決定支援の実施頻度は,「常に実施している」が7名(2.5%),「ときどき実施している」92名(32.3%),「どちらともいえない」131名(46.0%),「あまり実施していない」32名(11.2%),「まったく実施していない」23名(8.1%)であった.また代理意思決定支援を「常に実施している」「ときどき実施している」と回答した者は35%であり,「どちらともいえない」と回答した者も含めると81%であった.

進行がん患者家族の代理意思決定支援項目の実施頻度

代理意思決定支援の実施頻度において,「あまり実施していない」「全く実施していない」と回答した者を除き,230名を分析対象とした.代理意思決定の支援項目の実施頻度について図1に示す.看護師の代理意思決定支援項目において実施されている支援は,「インフォームドコンセントや意思決定の話し合いの場に同席する」が206名(89.6%)であり,次いで「家族等が決断したことを支持する」が201名(87.4%)であった.また支援内容において,「キーパーソンのみが責任を負わないよう,医療者および家族等で,責任を連帯することを伝える」を実施したと回答した者が125名(54.3%)と最も少なく,ついで「今後の治療の選択・説明において医療者の意向が強制的に働いていないか確認する」が156名(67.8%)であった.

図1 進行がん患者家族等への代理意思決定支援の現状

進行がん患者家族等の代理意思決定支援を行っている病棟看護師の困難

代理意思決定支援を実施している230名の看護師のうち,困難を「よく経験している」者は41名(17.8%),「ときどき経験している」110名(47.8%),「どちらともいえない」55名(23.9%),「あまり経験していない」19名(8.3%),「全く経験していない」5名(2.2%)であり,65%が代理意思決定支援において困難を経験していた.

代理意思決定支援を実施する看護師において,困難の認識の割合が高い項目は「家族等間の意向が異なっている」が159名(69.1%)であり,ついで「意識があるときの患者の意向と家族等の意向が異なっている」が150名(65.2%)であった.困難に関連すると認識している項目の上位は,主に患者・家族等に関する項目であった(図2).

図2 進行がん患者家族等の代理意思決定支援を困難にする要因

進行がん患者家族等の代理意思決定支援における病棟看護師の困難経験頻度と関連要因の検討

看護師の困難経験頻度と各因子の関連は表2に示した.単変量分析の結果,「代理意思決定に関する研修の受講経験」(P=0.015),「代理意思決定支援の実施頻度」(P<0.001),「患者の病状を受け止められない家族等」(P=0.030)などの16項目において,困難多群が困難少群に比べて有意に困難の認識が高かった(表2).多重共線性の認められた1項目を除き,単変量分析で有意差のあった15項目を独立変数とし,看護師の困難経験頻度を従属変数としロジスティック回帰分析を行った.その結果,「代理意思決定支援の実施頻度」(OR=2.41, P=0.009),「患者と家族等の関係性がわからない」(OR=1.50, P=0.025),「代理意思決定に関する研修の受講経験」(OR=2.07, P=0.064),「看護師の代理意思決定支援に関する知識の不足」(OR=1.36, P=0.079)の4要因が抽出された(表3).

表2 進行がん患者家族等の代理意思決定支援における困難経験とその関連要因 (n=230)
表3 進行がん患者家族等の代理意思決定支援における病棟看護師の困難経験頻度と関連要因 (n=230)

考察

進行がん患者家族等の代理意思決定における病棟看護師の支援の現状

本研究において,進行がん患者家族等の代理意思決定支援を「常に実施している」~「どちらともいえない」と回答した者は約8割であり,これまで看護師のがん患者の代理意思決定支援の頻度に関する報告はないが,国外のICUや緩和ケアに従事する看護師の意思決定支援の実施頻度である77~82%31,32との報告や西尾らの看護師が意思決定に「十分にかかわることができている」~「どちらともいえない」と回答した者の割合である75.9%と同程度であった33

また代理意思決定支援の実施状況は,代理意思決定支援項目の全22項目中21項目において「常に実施している」「実施している」と回答した者は6割以上であり,「インフォームドコンセントや意思決定の話し合いの場に同席する」や「患者の予後や治療の限界についての理解度を確認する」など9項目で8割以上の看護師が支援を実施していた.とくに注目すべき点は,救急領域の看護師は説明の場に同席することや多職種とカンファレンスを行う支援の実施が低かったことに対し34,本研究では高頻度に実施されていた.救急領域では,患者の生命危機が迫っているなかで,救命処置に追われ家族支援を行う十分な時間の確保が難しい11,12との報告がある一方で,がん領域では,看護師が患者の意向を重視した意思決定が重要である35との認識から,話し合いの場への同席や患者家族等の価値観や意向などの情報を多職種と共有するなどの支援の実施頻度が高かったと考える.

また,代理意思決定を担う家族は意思決定に伴い,3分の1の代理意思決定者が後悔や罪悪感を伴うことが報告されており5,家族にとって代理意思決定は重責であるといえる.しかし本研究において,「キーパーソンのみが責任を負わないよう医療者および家族で責任を連帯することを伝える」支援は,最も実施頻度の割合が低く,下地らの報告と類似していた13.このことから,代理意思決定を担う家族の重責についての医療者の認識が不足している可能性があると考えるが,代理意思決定者の重責への医療者の認識については明らかになっておらず,今後調査する必要がある.

進行がん患者家族の代理意思決定支援における病棟看護師の困難経験頻度とその関連要因

看護師が代理意思決定支援をするうえで困難を「よく経験している」,「ときどき経験している」と回答したものは,65.7%であった.また,看護師の代理意思決定支援の困難の認識の割合が高い項目は,主に「家族等間の意向が異なっている」や「患者の病状や治療が理解できない家族等」などの患者・家族等の特性に関することであり,一方,看護師のスキルや環境に関する困難は低い傾向であった.この結果は,Piggottら36は,意思決定支援を促進するためのケア目標の話し合いを阻害する要因として患者家族要因が報告されており同様であった.

代理意思決定支援をするうえで困難を「よく経験している」看護師は17.8%であり,困難経験に関連する要因は「代理意思決定支援の実施頻度」,「患者と家族等の関係性がわからない」,「代理意思決定に関する研修の受講経験」,「看護師の代理意思決定支援に関する知識の不足」であった.

まず,「代理意思決定支援の実施頻度」が抽出され,代理意思決定支援を高頻度に実施している者ほど代理意思決定支援の困難経験が多かった.看護師の代理意思決定支援において,ストレスフルな状況で家族員の受容過程の反応が多様に表れることへの関わり方や終末期の倫理的問題を判断できないことなどの困難を抱えている12,26.またUlrichらは,看護師にとって代理意思決定場面は高頻度に発生する倫理課題であることを報告している37.これらのことから,代理意思決定支援を実施している者ほど,代理意思決定支援を行っていくうえでの倫理的課題や苦悩等に直面するため,困難に関連していたと考える.

次に,「患者と家族等の関係性がわからない」が抽出された.救急領域の看護師は,情報がない患者家族への代理意思決定支援は難しいや代理意思決定者の妥当性が判断できない12,24などの困難を抱えており,急変により患者と家族の関係性がわからないなかで代理意思決定支援を行うことへの困難を抱えていた.がん領域においても同様に積極的治療中の病状の悪化や終末期の病状の悪化2,38などによって家族が代理意思決定を担うことが考えられ,同様の困難を抱えていると考える.また家父長制などの文化的な考え方がある日本では,代理意思決定者の約5割を長男が担っており,患者の価値観や生活環境の理解に基づいて代理意思決定者が選択されていない可能性が報告されている7.そのため看護師は,キーパーソンであったとしても代理意思決定者の選択が患者の望んでいた選択なのかどうかなどの困難を抱えていると考える.そのため,今後は事前に患者と家族の続柄や関係性だけでなく,患者本人の意思を知っている家族は誰なのかなどについて情報を収集していく必要がある.

このことから,看護師の代理意思決定支援を今後促進していくために,事前に患者と家族の関係性について情報を収集していくことが必要である.

本研究の限界と今後の課題

本研究では,1地域の4施設のみの調査であるため,看護師の代理意思決定支援の現状を一般に反映しているとは限らない.また代理意思決定支援の困難の経験頻度は,看護師の全体的な印象よる評価であるため,結果の解釈には限界がある.さらに代理意思決定支援項目および困難項目は独自に作成したものであり,代理意思決定支援のすべてを表しているとは限らず,等間隔性については検証していない.また,関連要因の分析において施設背景や院内での支援体制などについての項目が不十分であったと考える.今後は,特定の事例に対する代理意思決定支援の困難の認識を明らかにすることや等間隔性を担保したうえでの検証を行うことや代理意思決定支援において看護師が主に関わる患者のがん種等の項目を加え,検討を行う必要がある.しかし本研究は,日本のがん領域において代理意思決定支援の現状とその困難に関連する要因を評価した初めての調査である.そのため今後がん領域における代理意思決定支援の尺度開発等の基礎資料として活用できると考える.

結論

進行がん患者家族に代理意思決定支援を「常に実施している」~「どちらともいえない」と回答した看護師は約8割であり,意思決定などの話し合いの場に同席するなどが実施されていた.また,代理意思決定支援でよく困難を経験している者は約2割であり,代理意思決定支援の困難経験の関連要因は,「代理意思決定支援の実施頻度」, 「患者と家族の関係性がわからない」などであった.そのため,進行がん患者家族の代理意思決定支援においては,事前に患者と家族の関係性についての情報を収集していくことが必要である.

謝辞

本研究の実施に当たり,ご協力いただきました総合病院4施設の皆様,また関係者の皆さまに心より感謝申し上げます.

利益相反

すべての著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

伊禮は,研究の構想およびデザイン,研究データの収集・分析,研究データの解釈,原稿の起草に貢献した.木村は研究の構想およびデザイン,研究データの収集・分析,原稿の重要な知的内容にかかわる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は,投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2023 日本緩和医療学会
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