抄録
【目的】フェンタニル貼付剤(TF)はモルヒネよりも副作用が軽度であることから, がん性疼痛患者に頻用されている. しかしTFを増量しても, 鎮痛効果が得られない症例もあり, その対応方法は明らかとなっていない. 本報告の目的は, 1)TFで鎮痛が困難となる症例の背景因子と, 2)そのような症例に対する治療について検討した. 【症例】TFを増量しても鎮痛できず, モルヒネへオピオイドローテーション(OR)を行った6症例について後向きに調査した. OR前のTFの投与量は, 平均204μg/hrで, OR後は全例で良好な鎮痛効果が得られ,5症例はTFと経口モルヒネの併用, 1症例は経口モルヒネのみが投与されていた. 【結論】高用量のTFが投与されている症例で, 鎮痛効果が不十分となる傾向があること, またこのような症例に対しては, ORが鎮痛効果の回復には有用である可能性が示唆された. この臨床的な現象にはオピオイド耐性の関与が推測された.