Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
原著
介護支援専門員の抱えるがん緩和ケアについての困難感やニーズに関する調査
羽多野 裕 坂東 直樹大北 佳奈山本 美貴加納 麻子松本 篤上杉 慧太
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電子付録

2026 年 21 巻 3 号 p. 215-221

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Abstract

【目的】介護支援専門員のがん緩和ケアに関する困難感について明らかとすること.【方法】奈良県の居宅介護支援事業所で勤務する介護支援専門員を対象にwebアンケートを実施.「がん緩和ケアに関する医療者の知識・実践・困難感尺度」の項目を含む緩和ケアに関する困難事について量的,質的に回答を得た.【結果】210人より回答を得た.困難感尺度のうち「患者が悪い知らせを受けた後,声のかけ方が難しい」について63%が「非常にそう思う」「そう思う」と回答した.59%が緩和ケアを学ぶ必要性について「非常に思う」と回答し,「都市部で勤務」,「がん患者が増えていると感じる」,「患者・家族とのコミュニケーションで困難感を感じる」が有意に関連した.【結論】多くの介護支援専門員が緩和ケアに関する困難感を抱えていることが示唆された.学習ニーズに応じた支援体制が望まれる.

Translated Abstract

Objective: Clarify care managers’ difficulties with palliative care for cancer patients. Methods: A web-based questionnaire was administered to care managers working in Nara Prefecture. Results: Responses were obtained from 210 participants. Sixty-three percent strongly agreed or agreed with the item, “It is difficult to communicate with patients after they receive bad news.” Fifty-nine percent strongly agreed with the item, “We need to learn more about palliative care.” Working in urban areas (odds ratio [OR] 2.0, 95% confidence interval [CI] 1.1–3.6) perceiving an increase in palliative patients (OR 2.8, 95% CI 1.5–5.1), and experiencing difficulty communicating with patients/families (OR 1.7, 95% CI 1.2–2.3) were significantly associated with the need to learn about palliative care. Conclusion: The results suggest that many care managers have difficulty with palliative care. Support strategies for care managers are required.

緒言

介護支援専門員は,加齢や疾患により生活に支障を抱えている人が自宅で生活しやすいよう必要な介護サービスについてプランをたてる重要な役割を担う専門職である.近年,在宅診療の拡大により,進行がん患者が介護保険を利用する場面も増えており,介護支援専門員の果たす役割は大きい.

しかし,高齢化に伴い複数の慢性疾患を抱える患者も増えていると考えられ,患者の病像も複雑化している背景を考えると,介護支援専門員も医療者と連携するうえで何らかの困難を抱えている可能性が考えられる.介護支援専門員は日本の介護保険制度に特化した専門職であり,諸外国の知見を直接参考にすることは難しいが,これまで本邦でもがんや認知症などの慢性疾患患者のケアに関わる介護支援専門員の困難感についての量的質的研究が行われている.それらによると,多くの介護支援専門員ががんや認知症などの患者のケアマネジメントに困難感を抱いていることが示されている17.緩和ケアに関しての困難感については,在宅療養の終末期がん患者のケアに関わった介護支援専門員を対象とした質的研究の報告があり,多職種連携の難しさや適時のケアプラン変更が難しいなどの困難感が示されている7.これらの知見の理解を深め臨床応用するためには,質的研究に加えて量的調査が必要と考えられる.これまで看護師を対象とした緩和ケアに関する困難感についての量的調査は行われているが,介護支援専門員の抱えるがん緩和ケアに関する困難感やニーズについての量的調査は行われていない8,9

そこで,今回介護支援専門員の抱えるがん緩和ケアに関する困難感やニーズについて明らかとすることを目的とし研究を実施した.

方法

本研究は奈良県全域の居宅介護支援事業所で勤務する介護支援専門員を対象に行ったwebによる質問票を用いた横断調査である.介護支援専門員の勤務形態や勤務場所はさまざまであるが,主に在宅療養を支援する職務に携わると考えられる居宅介護支援事業所で勤務する介護支援専門員を対象とした.

奈良県公式ホームページから奈良県全域の居宅介護支援事業所リストを入手し,研究趣旨,研究への協力依頼,webアンケート用QRコードが記載されたA4用紙1枚を入れた封筒を郵送した10.なお研究参加への同意はwebアンケートへの回答をもって同意したものとみなすこととした.封筒は2025年9月下旬に順次郵送され,回答期間は同年11月3日までとした.研究実施に当たっては吉田病院研究倫理委員会の審査をうけ承認を得た.

質問票

調査項目については,過去の文献を参考に緩和ケアに携わる医師(YH,NB)および健生会吉田病院の居宅介護支援事業所に勤務する介護支援専門員(KO,MY)と協議し作成した17,9.質問票完成までに同法人内の看護師および医師にパイロット試験を実施し最終的に内容を確定した(付録1).

1. 背景情報

性別,年齢,介護支援専門員経験年数,勤務地の自治体,法人内施設の有無,ITツール:Zoom(Zoom Video Communications, San Jose, CA, USA),メディカルケアステーション(MCS;エンブレース,東京),LINE(LINEヤフー,東京),ChatWork(kubell,東京)の使用頻度(「よく使う」「時々使う」「利用していない」「よく分からない」から選択),緩和ケアの情報収集の方法(「参考書や教科書などの資料」「ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)」「YouTube」「個人や企業サイト」「専門家や医療者の講演(対面,オンライン)」「学会や研究会」「同僚や知り合いから」について「よく利用する」「時々利用する」「あまり利用しない」から選択).

2. 緩和ケアに関する医療者の知識・実践・困難感尺度

「緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM)」にて地域介入効果を測定するために看護師を対象に作成された尺度8,9.本来は看護師を対象とした尺度であるが,大規模かつ多施設からのサンプルデータでありリファレンスとして適していると考え,比較可能性を考慮しこの尺度を使用することとした.本研究では介護支援専門員の困難感と関連すると思われる以下の三つの下位尺度:「専門家の支援」「患者・家族とのコミュニケーション」「地域連携」を使用した.下位尺度はそれぞれ三つの質問で構成され「非常によく思う」「よく思う」「時々思う」「たまに思う」「思わない」の5件法で尋ねた.

3. がん患者の主治医とのコミュニケーションが難しいと感じるか

既存の報告にある医師とのコミュニケーションに関する困難感を量的に測定するため,1問で構成される尺度を本研究用に作成した.「非常によく思う」「よく思う」「時々思う」「たまに思う」「思わない」の5件法で尋ねるとともに,理由について自由記載を求めた.

4. 在宅支援につながるのが遅いと感じるか

過去の報告でがん患者の在宅療養をサポートする際の介護支援専門員の困難感として「症状が進むのが早く,介護認定の結果と現実がずれる」「亡くなってから認定が出る」など連携の遅さが報告されており,量的に測定するため独自に1問作成した7.「非常によく思う」「よく思う」「時々思う」「たまに思う」「思わない」の5件法で尋ねた.

5. 緩和ケアをうける患者を担当する機会が増えていると感じるか

介護支援専門員の主観的な感覚について「増えている」「変わらない」「減っている」の3件法で尋ねた.

6. 緩和ケアを学ぶ必要性を感じるか

「非常にそう思う」「やや思う」「どちらでもない」「あまり思わない」「ほとんど思わない」の5件法で尋ねた.緩和ケアの研修を受ける場合に希望する形式について「オンラインで動画を視聴する」「対面で講義を受ける」「eラーニング」「その他」の中から尋ねた(複数回答可).また,緩和ケアの中でとくに学びたい分野について「クスリについて(鎮痛剤や安定剤など)」「がんの病状の進み方について〔余命や日常生活動作(ADL)が落ちていく早さなど〕」「看取り期のケアについて(亡くなる直前の患者さんの特徴や家族のケアについて等)」「精神的ケアについて(不安や抑うつに対する対応など)」「患者・家族とのコミュニケーションについて」より尋ねた(複数回答可).

解析方法

介護支援専門員の背景情報については記述統計により頻度を求めた.緩和ケアに関する困難感尺度の「非常によく思う」「よく思う」と回答した割合を算出し,同じ尺度を用いた既存の看護師対象調査の結果とカイ二乗検定を用いて比較した.また,それぞれの困難感下位尺度について平均点を算出した.緩和ケアを学ぶ必要性を強く認識している介護支援専門員の特徴を明らかとするため,5件法のうち「非常にそう思う」とその他の2群に分け,その2群間で,各因子についてカイ二乗検定およびt検定を行い有意差検定を行った.また,「非常にそう思う」群とそれ以外の群を従属変数とし,潜在的な関連因子を独立変数〔性別(男性),介護支援専門員の経験年数(10年未満),勤務する事業所の自治体(都市部),緩和ケアの患者が増えている,主治医とのコミュニケーションが困難,困難感尺度点数(「専門家の支援」「患者・家族とのコミュニケーション」「地域連携」)〕とするロジスティック回帰分析を行い,オッズ比(OR)を算出した.また主治医とのコミュニケーションの難しさについての自由記載については内容分析を行い分類した.内容分析はYHとNBが以下の手順により行った:1)それぞれの記述内容の要点を抽出.2)似た内容のもの同士を集めて抽象化したカテゴリを作成し分類.3)分析はYHとNBが独立して行い両者の分析結果を照合・協議した.意見の相違が生じた場合は両者の合議により最終的なカテゴリーを決定した11.解析ソフトはIBM SPSS Statistics for Windows(Version 24.0; IBM, Armonk, NY, USA)およびR Software(Version 2.1.0; R Development Core Team, R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria)を使用した.

結果

奈良県内の521カ所の居宅介護支援事業所に質問票を郵送し,2通が宛先不明で返送された.210人より回答を得て,そのうちすべてを解析対象とした(付録図1).回答者の背景は多くが女性(76%)で,30%が60歳以上,68%が介護支援専門員経験10年以上,61%が人口10万人以上の自治体にある事業所での勤務であった.情報共有ツールの使用頻度については,Zoom,MCS,LINE(LINE電話)は「よく使う」「時々使う」を合わせた頻度は67%,44%,59%と高い使用頻度が示されたがChatWorkは7%と比較的低い使用頻度であった.緩和ケアの情報を得る方法については「SNSやYouTubeなど」や「同僚や知り合いから教えてもらう」が多く,「学会や研究会への参加」は少数であった(表1).

表1 回答者の背景情報(N=210)

変数 n %
性別
男性 49 23.3
女性 160 76.2
その他 1 0.5
年齢
60歳以上 62 29.5
50–59歳 87 41.4
40–49歳 52 24.8
39歳以下 9 4.3
介護支援専門員経験年数
20年以上 29 13.8
15–19年 50 23.8
10–14年 64 30.5
5–9年 40 19
0–4年 27 12.9
事業所の勤務地
都市部(人口10万人以上の自治体) 129 61.4
地方(人口10万人未満の自治体) 81 38.6
法人内施設
ない 70 33.3
ある(介護施設) 72 34.3
ある(医療機関) 20 9.5
ある(医療機関と介護施設) 47 22.4
欠損 1 0.5
情報共有ツールの使用頻度
Zoom
よく使う 20 9.5
時々使う 121 57.6
利用していない 42 20
よく分からない 2 1
未回答 25 11.9
メディカルケアステーション(MCS)
よく使う 40 19
時々使う 52 24.8
利用していない 77 36.7
よく分からない 17 8.1
未回答 24 11.4
LINE, LINE電話
よく使う 66 31.4
時々使う 58 27.6
利用していない 61 29
よく分からない 4 1.9
未回答 21 10
ChatWork
よく使う 5 2.4
時々使う 10 4.8
利用していない 128 61
よく分からない 25 11.9
未回答 42 20
緩和ケアの情報収集手段
参考書や教科書などの資料
よく利用する 22 10.5
時々利用する 112 53.3
あまり利用しない 76 36.2
SNS, YouTube, 個人や企業サイト
よく利用する 106 50.5
時々利用する 86 41.0
あまり利用しない 18 8.6
専門家や医療者の講演(対面,オンライン)
よく利用する 24 11.4
時々利用する 108 51.4
あまり利用しない 78 37.1
学会や研究会
よく利用する 10 4.8
時々利用する 36 17.1
あまり利用しない 164 78.1
同僚や知り合いから
よく利用する 97 46.2
時々利用する 96 45.7
あまり利用しない 17 8.1

困難感尺度の下位尺度(「専門家の支援」「患者・家族とのコミュニケーション」「地域連携」)の点数は,同じ尺度を用いた看護師対象の過去の研究結果と同等の点数であったが,とくに「患者が悪い知らせ(告知など)を受けた後,声のかけ方が難しい」については63%が「非常にそう思う」「そう思う」と回答し有意に高い困難感が示された〔図1,文献9において,がん診療拠点病院勤務の看護師(n=1345),がん診療拠点病院以外の病院勤務の看護師(n=856),訪問看護ステーション勤務の看護師(n=177)はそれぞれ46%,54%,49%であった(p<0.01)〕.

図1 緩和ケアに関する困難感(頻度)

緩和ケアを学ぶ必要性については59%の介護支援専門員が「非常に思う」,35%が「やや思う」と回答した.「非常に思う」と回答した介護支援専門員と関連する要因についてロジスティック回帰分析を行ったところ,都市部の事業所で勤務〔OR 2.0,95%信頼区間(95% CI): 1.1–3.6〕,緩和ケアを受ける患者を担当する機会が増えていると感じる(OR 2.8,95% CI: 1.5–5.1),患者・家族とのコミュニケーションで困難感を感じる(OR 1.7,95% CI: 1.2–2.3),が有意に関連した(表2,付録表1).

表2 「緩和ケアを学ぶ必要があると非常にそう思う」群を従属変数とするロジスティック回帰分析

変数 オッズ比 95%信頼区間 p値
患者・家族とのコミュニケーション困難感 1.6 1.1–2.3 <0.01
緩和ケアをうける患者を担当する機会が増えている 3.0 1.6–5.8 <0.01
勤務地の自治体(都市部) 2.0 1.1–3.8 0.02
介護支援専門員経験(10年未満) 1.8 0.9–3.6 0.09
地域連携の困難感 1.4 0.9–2.1 0.11
専門家支援の困難感 0.8 0.6–1.1 0.24
主治医とのコミュニケーションが困難 1.7 0.7–4.3 0.28
性別(男性) 1.1 0.5–2.1 0.86

がん患者の主治医とのコミュニケーションが難しいと感じるかについては25%が「非常によく思う」「よく思う」と回答した.難しさについての自由回答の内容分析では,「時間的な障壁」「物理的な障壁」「心理的な障壁」「介護支援専門員に情報共有されない」「医師と患者・家族の間を取り持つことでの辛さ」「SNSを使用することのメリット,デメリット」が抽出された(表3).

表3 主治医とのコミュニケーションが難しいと感じる理由についての内容分析

カテゴリ 内容
時間的な障壁 受診の付き添い,アポイントメントをとる手間などが困難
訪問診療と時間を合わせることが難しい
心理的な障壁 医学知識(治療や疾患の経過など)が乏しく話しづらい
医師の多忙な業務を妨げるのではないかという遠慮
医師の態度(一方的,高圧的,無理解)がコミュニケーションを消極的にさせる
物理的な障壁 退院前カンファレンスに(治療病院の)主治医が参加していない
医師がMCSなどツールを使っていないと連携しづらい
治療病院の医師に比べ訪問診療医のほうが会いやすい
介護支援専門員に情報共有されない 医療者間や医療者・患者・家族間での情報共有のみで介護支援専門員に情報共有されないことがある
医師と患者・家族の間を取り持つことでの辛さ 医師と患者・家族の意向が異なる時に板挟みとなる
主治医に思いをうまく伝えられない患者の気持ちを代弁して医師に伝えることができず葛藤する
SNSを使用することのメリット,デメリット MCSを介護支援専門員自身が使っていないため連絡がしづらい
MCSなど顔が見えないとコミュニケーションが難しいと感じる
問題を感じない 問題を感じない

在宅支援につながるのが遅いと感じるかについては16%が「非常によく思う」「よく思う」と回答した.

緩和ケアの研修を受ける場合に希望する学習形式については「オンラインで動画を視聴する」(77%)「対面で講義を受ける」(45%)「eラーニング」(23%)の順で多かった.学びたい内容については「精神的ケアについて」(85%)が最も多かったが,他の内容のいずれも70%を超えていた(図2).

図2 緩和ケアの中でとくに学びたい分野(複数回答可)

考察

介護支援専門員が抱えるがん緩和ケアの困難感についての大規模な量的調査は本研究が初めてである.本研究で明らかとなった最も大きな知見の一つが,多くの介護支援専門員が患者・家族とのコミュニケーションのうち,とくに悪い知らせを受けた後の声掛けについて困難感を感じているということである.同じ尺度を用いた過去の看護師を対象とした研究の結果よりも高い困難感が示されている.介護支援専門員のうちおよそ2割程度が看護師として働いた経験を持っているとされるが12,バッドニュース後のコミュニケーションは患者・家族の反応についての知識や,希望を保ちつつ事実を伝える等のスキルが求められ,医療者も緊張を強いられる13,14.介護支援相談員に対して,悪い知らせを受けた後の患者・家族とのコミュニケーションについての学習機会の提供が望まれる.多変量解析からも患者・家族とのコミュニケーションの困難感が高いことが緩和ケアの学習ニーズにつながっていることが示唆され,緩和ケアのなかでとくに学びたい分野の質問でも,精神的ケアについての学習ニーズが最も多いという結果であった(図2).悪い知らせを受けた後のコミュニケーションの学習機会だけでなく,緩和ケアをうける患者・家族への心理的サポートについて包括的な知識・スキルを学習するための機会提供が望まれる.

次に重要と考えられる知見として,介護支援専門員が感じる主治医とのコミュニケーションの困難感について質的な内容が明らかとなったことである.主治医とのコミュニケーションを困難と感じる介護支援専門員は25%(「非常によく思う」「よく思う」の合計)と頻度は高くはなかったが,自由記載からは切実な状況がうかがえた.医療機関との連携や情報共有の困難さは過去の報告でも指摘されていたが,今回の調査にて,障壁の内容が,時間的,心理的,物理的な障壁として可視化された.急性期病院の医師のみならず訪問診療医も移動と診察でスケジュールに余裕はないことが多いと考えられる.また介護支援専門員も事業所と患者宅を行き来する業務で時間的な拘束が多いことが指摘されており,双方が物理的,時間的に都合を合わせることが困難な場合が多いと考えられる15.時間的・物理的障壁の軽減のためITツール使用の拡充を図っていくことが重要と考える.心理的ハードルの高さも問題である.Hirakawaらの質的研究にて,介護支援専門員の医学的知識の不足が医師とのコミュニケーションの障壁となっていることや,医師側の障壁要因として,医師の介護支援専門員の役割に対する認識不足が指摘されており,本研究の結果もこれらの知見を支持する結果であった16.これらのギャップを解消するため,介護支援専門員に対する,がん医療や緩和ケアの知識習得の学習機会の提供が望まれる.また,がん治療や緩和ケアに携わる医療者に対しては,介護支援専門員の役割について認知向上を図ったり,ケアの視点についての教育機会の提供が必要であると考える.

多くの介護支援専門員が緩和ケアを学ぶ必要性を感じているという結果も注目すべき結果である.多変量解析で有意に関連した因子のうち「都市部での勤務」が抽出された要因についての解釈は慎重さを要する.都市部よりも郊外の方が緩和ケアのリソースへのアクセスは難しい場合が多く,郊外の方がニーズは高そうに思われるが,緩和ケアについての認知度は都市部のほうが高いという報告もある17,18.都市部のほうが,緩和ケアに関するリソースに触れる機会が多く認知的接触効果により学習ニーズが高まりやすい可能性や,都市部の患者層が複雑化しており,問題に直面しやすく学習ニーズが高まりやすい可能性などが考えられるが,今後さらなる検証が必要である.

限界

第1に,以下に挙げる要因により本調査結果の一般化には慎重さが求められる:限られた地域の調査であること,回答率が約40%と高くはないこと,一つの事業所から複数の介護支援専門員が回答している可能性,回答者は非回答者に比べ緩和ケアに関心が高いまたは緩和ケアに関連した困難感を抱いている集団の可能性がある.次に,多変量解析で用いた変数以外にも,結果に影響しうる未測定の変数はまだあるものと考えられる.第3に,本試験を行う前のパイロット試験において介護支援専門員の参加がなかったことで,設問や回答方式に偏りが生じた可能性がある.最後に,筆者らはがん患者の緩和ケアを想定し本調査を行ったが,非がん患者を含めた緩和ケアを想定して回答した者も含まれる可能性がある.

結論

多くの介護支援専門員が緩和ケアに関する困難感を抱えていることが示されるとともに,緩和ケアを学びたいというニーズも高いことが示された.介護支援専門員の困難感を軽減し医療・介護連携を強化していくための支援体制が望まれる.

謝辞

この度の調査にご協力下さった居宅介護支援事業所の介護支援専門員の皆様に感謝いたします.英文抄録作成にあたりDeepLを利用しました.

利益相反

すべての著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

羽多野は研究デザイン,質問票作成,データ収集,解析,原稿の起草,原稿の批判的な推敲に貢献;坂東は研究デザイン,質問票作成,原稿の批判的な推敲に貢献;大北,山本は質問票の作成,研究デザイン,原稿の批判的な推敲に貢献;加納,松本,上杉は原稿の批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

文献
 
© 2026 日本緩和医療学会

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