抄録
症例は60歳代, 女性. 胃がん術後のSchnitzler転移と診断され, 人工肛門造設となった. この後, 抗がん剤治療を行ったが, 嘔気および下腹部痛が増悪したため入院となった. がん性腹膜炎の増悪と考え, 酢酸オクトレオチドの持続皮下投与を開始したところ, 著効を示した. 食欲不振STASは最大スコア4から, 1週間後にはスコア1にまで改善した. 患者・家族の意向をふまえ在宅ホスピスケアへ移行した. その後, 酢酸オクトレオチド投与によって在宅においても良好なQOLが保持された. 酢酸オクトレオチドはがん性腹膜炎に伴う嘔気・嘔吐や腹部膨満症状の緩和に有効な薬剤であるが, 入院においての使用には制約が発生する. 在宅ホスピスケアにおいて患者のQOLの保持・向上のために酢酸オクトレオチド投与は症状改善においても, また経営面においても有用であり, 今後の在宅ホスピスケアの重要なツールとなりうると思われる. Palliat Care Res 2009; 4(2): 321-329