2025 年 50 巻 1 号 p. 6-11
13歳時に頭部外傷による急性硬膜外血腫の手術を受けた患者が,術後2年間の経過追跡において聴力低下と外傷性中耳髄液漏が遷延したため,15歳時に耳鼻咽喉科による鼓室形成術に先行して,同日に開頭髄液耳漏修復術を行った.本症例では,①3次元術前画像評価で骨折部位を同定,②脳脊髄液漏出部をフルオレセインで特定,③硬膜側をポリグリコール酸により構成された不織布とフィブリン糊で被覆,④骨折部を有茎側頭筋筋膜弁で被覆,の4点を計画し,各段階を履行して髄液耳漏閉鎖術を行った.術後の経過追跡において,髄液耳漏の減退と聴力の改善が得られた.聴力低下を伴う小児頭部外傷においては,受傷後の長期追跡と耳鼻咽喉科との連携がQOL向上に重要である.