当科で2016年からの6年間に,小児脳腫瘍に伴う急性水頭症に対し5例で内視鏡下第三脳室底開窓術(ETV)を施行した.全例で水頭症症状の改善が得られた.3例でETV後に脳腫瘍を摘出したところ,水頭症が再発した.再発水頭症に対して3例中2例でre-ETV,1例でVPシャントを行った.re-ETVを行った2例中1例は髄膜炎を併発し最終的にVPシャントを行った.ETV後に脳腫瘍摘出術を行うと水頭症の再発を来すことがあるが,再発水頭症症例に対しても適切な患者選択によりre-ETVが第一選択となり得る.
びまん性内在性橋グリオーマ(DIPG)は小児に好発し,極めて予後不良な腫瘍である.従来は画像診断のみに基づく治療が行われてきたが,分子標的治療の発展に伴い,生検の重要性が再認識されている.本研究では,当院でのDIPG症例を後方視的に解析し,生検の意義,新規治療への可能性を検討した.DIPGに対する生検は一定のリスクを伴うが,分子診断に基づく個別化治療,新規治療への可能性を拡げる手段として有用であることが示唆された.
小児もやもや病では,脳血流の不均衡により認知機能におけるドメイン間の偏りが生じやすく,特に言語性ワーキングメモリ(継次処理:単語の系列記憶など)の選択的脆弱性が認められる.全体の知能水準が平均範囲にあっても,認知ドメイン間の偏りが大きいと,学業・学校適応の困難さにつながりうる.本論文では,当科の神経心理学的評価および画像解析に基づいて,小児もやもや病の高次脳機能の特徴と,その脳血行再建術後の変化を概説するとともに,代表的症例をもとに,外科的治療を補完する多面的な支援体制の必要性について考察する.
6例の小児悪性固形腫瘍の頭蓋内転移の症例を対象に検討を行った.原発巣の診断から頭蓋内転移の出現までの期間の中央値は18か月,年齢の中央値は3歳であった.5例で放射線治療,4例で化学療法,2例で腫瘍摘出術を行い,2例で水頭症に対して脳室ドレナージ術を施行した.頭蓋内転移が指摘されてからの生存期間の中央値は5か月で,腫瘍摘出術の施行が生存期間と関連していた.また外科的治療の介入は神経症状の改善にも有効であった.予後の改善には集学的な治療が必要であり,外科的治療もその一つとして重要な役割を担っている.
皮質皮質間誘発電位(CCEP)は,脳の機能的結合を評価する手法であり,言語機能モニタリングの代替として期待されている.一方で小児のてんかん外科治療におけるCCEPの有用性に関する報告は限られている.本症例は,5歳男児の薬剤抵抗性てんかんに対しCCEP併用のもと左頭頂後頭葉離断術を実施した.術中,N1振幅値の20%程度の低下を認めたものの,術後の言語機能に明らかな障害は生じず,発作は消失した.CCEP併用手術が発作予後の改善に寄与し,小児の機能温存手術の一手法として有用である可能性を示唆するものと考える.
22q11.2欠失症候群は心血管奇形や免疫不全をはじめとした多彩な臨床症状を呈する染色体微小構造異常症であり,まれに二分脊椎症を合併する.そのため同症候群に合併した脊髄髄膜瘤の治療においては,合併症の把握,循環動態や脊髄髄膜瘤の状態を考慮した手術スケジュール決定,全身管理などが重要であり,他診療科との密な連携が必要となる.また遺伝子診断の手法選択にも注意を要する.本報告では,仙骨部脊髄髄膜瘤を伴った同症候群の2症例を呈示し,診断および周術期管理上の留意点について考察した.
神経線維腫症1型(NF1)に合併し,T2強調画像で小脳・脳幹部・基底核などに認められる高信号領域はunidentified bright object(UBO)と呼ばれる.今回UBOと診断したT2高信号領域が一時拡大傾向を示した後に完全に消失した症例,UBOと確定診断を下せないで経過観察中の症例,当初UBO単独と診断されるも両側性の視神経膠腫を合併していたことが判明し化学療法を行った症例,計3症例を提示し,UBO診断の注意点を検討したい.
感染性頭血腫は新生児期にまれにみられ,骨髄炎や敗血症を合併することもあるため,迅速かつ的確な対応が求められる.今回,吸引分娩で出生した新生児が頭血腫の自壊を契機に受診し,創部培養から大腸菌(E. coli)が検出され感染性頭血腫と診断した.MRIで皮下膿瘍および骨破壊が示唆された.抗菌薬にデブリードマンを併用し,4週間のアンピシリン投与で治癒を得た.画像診断により病変構造や合併病態を把握し,治療戦略決定にも有効であった.
髄腔内バクロフェン療法は2007年に重度痙縮を伴う小児への保険適応が拡大されて以降,重症心身障害児のQuality of life向上に貢献している.一方,長期暴露や過剰刺激によって生じうる,バクロフェンへの耐性獲得も懸念されている.我々は,原疾患と合併病態の治療の影響によって脊髄くも膜下腔の癒着・狭小化を来し,局所的なバクロフェンの過剰刺激を起こし,短期間で耐性を獲得したと推測された症例を経験した.耐性化の予測因子は確立していないが,原疾患などの患者背景も重要な因子ではないかと考えられた.
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