周産期学シンポジウム抄録集
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第19回
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シンポジウム午前の部
臍帯動脈拡張期血流に途絶・逆流を認めた重症子宮内発育遅延胎児の検討
藤森 敬也遠藤 力佐藤 章石田 友彦三瓶 稔本田 信也大川 敏昭柳田 薫氏家 二郎
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p. 19-24

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抄録

 はじめに

 新生児医療の進歩は周産期管理において大きな変革をもたらしてきていることは事実ではあるが,いまだ生育限界にある胎児が異常所見を示した場合,分娩としなければならないのか,あるいは妊娠を延長すべきであるのか,われわれは悩まなくてはならないことがある。

 産科領域において,超音波による血流計測の臨床応用がCampbellらによって初めて報告されたのは1983年である1)。それ以来,多くの新しい胎児情報が得られるようになってきた。特に,臍帯動脈拡張期血流の低下と周産期予後との問には強い関係があることが示されてきている2)。また,そのなかでも,臍帯動脈拡張期血流途絶・逆流は血流低下の極型と考えられ,高率に胎児仮死や周産期異常を呈するとも報告されている3)

 臍帯動脈血流に拡張期途絶・逆流があるということは,胎盤血管床の血管抵抗が高く,拡張期に流れるはずの血液が進まず,胎盤の絨毛管腔の血液から臍帯静脈内の血液へのoxygen transportが極度に低下したという状態であり,これが長期にわたると子宮内胎児発育遅延や胎児心拍モニタリング異常に陥ることが多い。臍帯動脈血流について現在どのように評価されているかというと,Antepartum fetal surveillanceと題された1994年のAmerican College of Obstetricians and Gynecologist(ACOG)のTechnical Bulletin4)や1999年のACOG Practice Bulletin5)におけるDoppler Flow Assessmentでは,臍帯動脈血流単独のみで胎児評価をするのではなく,母体状態を含めた他の胎児評価方法と組み合わせて分娩時期を決定すベきであるとされている。しかし,途絶・逆流というような極端な臍帯動脈波形の異常があれば,これを胎児のmanagementないし評価に組み入れるのが妥当であるとされている。

 今回提示した症例は,早い妊娠週数のSevereな子宮内発育遅延胎児で,臍帯動脈血流に拡張期途絶あるいは逆流を認め,また,胎児心拍モニタリングではaccelerationもなく,decelerationが認められ,variabilityも消失していた症例である。十分なる胎児成長が認められている症例であれば当然分娩を考慮しなければならないが,あまりにも小さいためにすぐに分娩といかなかった症例である。途絶・逆流といった極端な臍帯動脈血流異常波形がある症例や胎児心拍モニタリングで異常が認められた症例では分娩させるのが妥当であると考えられる場合もあるが,妊娠週数,推定体重より児の胎外生活は困難と判断されたため,その時点で分娩させることが難しいと判断し,分娩の時期をいつにしたらよいのかということにとても悩まされた症例である。胎児推定体重の推移,胎児心拍モニタリング,Biophysical Profileで胎児評価を行いながら慎重に経過を観察した。症例数は13例と少ないが,これらの妊娠継続中に観察されたいくつかのパラメーターについてretrospectiveに分析し,ここにまとめた。

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© 2001 日本周産期・新生児医学会
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