緒言
周産期医療の進歩により,超早産児における死亡率は減少したが,現在も多くの超早産児は,認知,運動,行動,教育,感情,社会的な問題を含む多彩な神経障害を示している1)。これらの障害の病因を明らかにするには,神経発達に関連する多面的なアプローチが必要である2)。様々な因子が発達に関与するが,特に子宮内外の栄養の違いは正期産児と早産児の脳発達の違いに大きく関与する3)。出生後の栄養状態は,体長,体重,頭囲などの成長指標に反映され,これまでにも体格と神経発達のリスクに関してはいくつかの報告がされている4,5)。
超早産児にとって,今後よりよい神経発達アウトカムを達成するためには,相対的に軽度とされる神経学的障害にも着目していく必要がある。いくつかの研究では,早産児の脳機能と学齢期または思春期の特定の神経発達障害(自閉スペクトラム症,注意欠如・多動症,学習障害)との関連が調査されているが6,7),超早産児はこれらの特定の障害だけではない広範な神経障害に直面している8)。超早産児にとって相対的に軽度な神経障害を評価するための包括的な評価ツールが必要である。
発達指数(DQ)は,幼児の発達評価に広く用いられており9),幼児期の発達スケールと学齢期または思春期の神経発達障害との関連はいくつかの報告があるが10,11),近年では,幼児期に高い発達スケールを維持することの予測精度が高いことが強調されている6)。我々の以前の研究では,3歳時の全領域DQ(全DQ)の閾値を設定し,閾値を超える幼児は学齢期に教育支援を受ける割合が有意に低くなることを示した(図1)。
本研究は,NICUにおける各身体計測値の縦断的な軌跡と3歳時の神経発達との関連を調査し,良好な神経発達をもたらす栄養管理戦略とその指標を明らかにすることを目的としている。
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