周産期学シンポジウム抄録集
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第3回
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シンポジウム II:胎児,新生児頭蓋内出血の診断
血腫の超音波像
山口 祐佐藤 真澄劉 雪美佐藤 章
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p. 141-146

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抄録

 I 研究目的

 リアルタイム超音波診断装置による新生児頭蓋内出血の検査はPape et al. 1),Johnson et al. 2)により1979年に紹介されて以来急速に普及し,特にNICUにおいては常識化しつつある。新生児には種々の頭蓋内出血が生じるが,その中でも早くからリアルタイム超音波診断の対象となったのは未熟児のsubependymal hemorrhage / intraventricular hemorrhage(SEH/IVH)であり,その驚くべき高頻度の発生を含む数々の新知見がこの方法により明らかとなってきた3), 4)。このことはすなわちリアルタイム超音波検査が総合的な意味で,CTを含む従来の検査法より高い診断能力を備えていたことによる。しかし,こうした診断能力の高さは超音波により発見された異常所見を他の方法により確認できないという状況を生んだ。例えばSEH/IVHはincreased echogenicityを示すと述べられ5), 6),本邦の各施設もほぼこうした記載にのっとって診断を行っているものと思われるが,これらの記載は主として経験的なものであり,血腫の音響特性という面からの裏付けに乏しい。人体の他の部位,例えば脾7),骨盤腔内8)の血腫は一般に内部に種々の程度の不整なechoを含むhypoechoic areaとして描出され,SEH/IVHほど強いechoを発する例はあまり知られていないのである。

 以上のような問題点があることから,われわれは血腫の組織音響特性という面から,超音波による新生児頭蓋内出血検査の有効性と限界について検討してきた9)~11)。ここではバルーン中の血腫および脳内に注入した血液の超音波像に関する研究結果について述べる。

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© 1985 日本周産期・新生児医学会
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