主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:胎児,新生児頭蓋内出血
回次: 3
開催地: 東京都
開催日: 1985/01/19
p. 158
新生児科側より示された頭蓋内出血をめぐる診断清報を見るにつけ,産科からみた胎児側の情報が,現状ではいかに貧困であるかを認識せざるを得ない。産科側からの唯一人のパネリストであった堀口先生が分析結果を示されたように,頭蓋内出血に関係する産科的リスクファクターがほとんど整理されていないため,今後この課題にどのようにアプローチして行くべきか,なお多くの検討が必要かと思われる。現実に全分娩の0.2%以下にしか発生しない(と現状では理解されている),むしろ稀な状態であるために,能率的な勉強ができないところが問題である。
しかし,文献的には胎児における頭蓋内出血の発生を出産前に超音波で診断できたという報告が徐々に蓄積されつつあり,関連演題で山口先生が示されたように,ごく徴量の出血でも描出し得る能力を超音波に期待できるならば,前途は決して暗くないといえよう。これも関連演題として進先生が呈示されたように,新生児にみられる頭蓋内出血の発端は分娩中,あるいは分娩前にまでさかのぼることができる例もあるはずであり,辰村先生の試みのように分娩時についての検討もはじめる必要が明らかとなったといえる。
産科あるいは胎児の側からみると,頭蓋内出血という極めて大きな問題が,映像診断法の発達によって漸く検討可能な状態になってきたところであり,研究は正に端緒についたばかりということができよう。本シンポシウムの成果を踏まえて,今後の発展を期待するや切である。