主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:周産期の炎症と感染〜長期予後改善を目指して〜
回次: 33
開催地: 静県岡
開催日: 2015/01/23 - 2015/01/24
p. 45-49
背景
子宮内の炎症が進展し,胎児において全身性にサイトカイン産生が亢進すると,FIRS(Fetal inflammatory response syndrome)に至る。FIRSは,臍帯血中IL-6値高値で診断され,これまでに呼吸障害,脳障害などの早産児の後遺症発症と関連していることはよく知られている(図1)1)。
本研究の目的は,in uteroから炎症の進行を予防的に制御開始することにより,児の後遺症発症を減少させることである。われわれは,抗酸化ストレス・抗炎症作用を有し,近年脳梗塞や糖尿病などで治療効果が報告されている分子状水素2)に着目した。分子状水素は他の抗酸化剤と異なり,フリーラジカルのなかでも細胞障害性の高いヒドロキシラジカル(・OH)やペルオキシナイトライト(ONOO-)のみを選択的に化学反応で除去する作用を有している。また,もともと人体では一部の腸内細菌により産生されており,水素産生菌も同定されていることから3),妊婦への投与も現実的な選択肢となりうる。
われわれは,先行研究で母獣の分子状水素を飽和させた飽和水素水(水素水)投与により,胎仔および胎盤における組織中の有意な水素濃度の増加を確認しており,また胎仔の海馬組織における酸化ストレスおよびアポトーシス(細胞死)の減少効果を報告している4)。本研究では,水素水を炎症動物妊娠モデルの母獣に投与し,胎仔の脳組織および肺組織への効果を検討した。